2013 Fiscal Year Research-status Report
変異型WWP1ユビキチンリガーゼによる筋線維変性の分子機構解析
Project/Area Number |
24500472
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
今村 道博 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所遺伝子疾患治療研究部, 室長 (80221787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 伸一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
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Keywords | 筋ジストロフィー / WWP1 / HECT型E3ユビキチンリガーゼ / ジストログリカン / サルコグリカン / 骨格筋 |
Research Abstract |
平成24年度には、筋ジストロフィーニワトリに認められるWWP1 E3 ユビキチンリガーゼ遺伝子のミスセンス変異がアミノ酸置換(R441Q)を生じ、WWP1タンパク質分子の分解を誘導して、small WWP1(sWWP1)を形成することを示した。そこで本年度(平成25年度)は、(1) sWWP1の構造についての解析し、これと並行して (2) WWP1の有力な基質分子と考えられるジストログリカンに焦点を当て分子間の相互作用について検討を行った。 (1) WWP1はカルボキシル基端側に位置するHECTドメインに触媒システイン残基を有しており、これによってE2酵素から基質タンパク質へユビキチンを移行させる。WWP1の異なる領域を認識する数種類の抗体を作成して構造を解析したところ、骨格筋における変異型WWP1の分解ではこのシステイン残基を欠失し、WWドメインを残す形でsWWP1を形成することが示された。 (2) 骨格筋におけるWWP1に対する基質探索は、WWP1が筋形質膜に局在すること、そして筋ジストロフィーニワトリではジストログリカンと呼ばれるラミニン結合性膜タンパク質に異常が認められるという報告があることから、この膜タンパク質に焦点を当て解析を行った。抗WWP1抗体による免疫沈降ではジストログリカンを検出することは出来なかったが、この分子と共にジストロフィン結合タンパク質複合体を形成するα-サルコグリカンを検出することができた。一方でα-サルコグリカンを含む精製複合体の中にはWWP1が検出されなかったため、これはWWP1が完成後のジストロフィン結合タンパク質複合体にではなく、その形成過程或いは分解過程に関与している可能性を示唆していた。 今回得られたこれらの知見は、酵素機能を失ったsWWP1が筋細胞膜に局在することで筋線維の健全性維持に影響を及ぼす可能性を示唆していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究結果を基に立てた平成25年度の研究計画は、WWP1の基質(ターゲット)分子の探索を本格化させると共に、変異型WWP1の消化により形成されるsWWP1の構造解析をより詳細に行うことであった。 WWP1の基質探索については基質特異性に関わると考えられるWWドメイン領域とグルタチオン-s-トランスフェラーゼ(GST)やマルトース結合タンパク質(MBP)との融合タンパク質を作製しプルダウンアッセイを行う計画であったが、作製した融合タンパク質の分解が著しいため、抗WWP1特異抗体による免疫沈降法を用いて解析することとした。このような状況下ではあったが、WWP1とジストログリカンは結合しないこと、そしてα-サルコグリカンとは微弱ながらも分子間の相互作用があることを示唆する重要な情報を得ることができた。更にsWWP1の構造解析においては触媒システイン残基の存在を判別することが可能な抗体作製に成功し、sWWP1が基質への結合ドメインを保存しながらE3ユビキチンリガーゼとしての機能を欠失していることを明らかにした。 以上のことから、本研究は現在のところ当初の研究計画に沿って「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではWWP1の1アミノ酸変異が自身の分解を誘導した結果、標的分子への結合機能を残しながらもE3ユビキチンリガーゼの機能を失ったsWWP1を形成し、これがドミナントネガティブな効果を及ぼすことで正常なWWP1の機能を抑制するのではないかという作業仮説をたてている。実際に、我々が作製した変異型WWP1を発現するトランスジェニックマウスの解析からはsWWP1が基質結合に重要なWWドメインを有しながらも触媒機能を持たないことが示された。ただし、このマウスモデルは筋ジストロフィーニワトリに比べて筋症状が軽いという問題を生じている。そこで今後は前年に研究計画に挙げたように、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウスや局部的に筋変性を生じさせることができる蛇毒(カルジオトキシン)などを使って、筋変性後の再生環境下で変異型WWP1の筋形成に対する関与を解析する。
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[Journal Article] Prednisolone improves walking in Japanese Duchenne muscular dystrophy patients2013
Author(s)
Takeuchi F, Yonemoto N, Nakamura H, Shimizu R, Komaki H, Mori-Yoshimura M, Hayashi YK, Nishino I, Kawai M, Kimura E, Takeda S
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Journal Title
J Neurol
Volume: 260
Pages: 3023-3029
DOI
Peer Reviewed
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