2013 Fiscal Year Research-status Report
脳梁膨大後皮質におけるエピソード記憶情報の統合プロセス
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24500481
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 暢哉 関西学院大学, 文学部, 准教授 (70465269)
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Keywords | エピソード記憶 / 脳梁膨大後皮質 / 脳損傷 / ニューロン活動 / ラット |
Research Abstract |
「いつ」,「どこで」,「なに」が起こったかという出来事の記憶をエピソード記憶という.本研究は,エピソード記憶を構成する要素情報が統合される脳領域として脳梁膨大後皮質に着目し,その統合の脳内メカニズムを神経細胞レベルで明らかにすることを目的としている. 今年度は,脳梁膨大後皮質とエピソード記憶の関連性について,ラットを対象としたいくつかの行動課題を用いて検証した.一つは昨年度から継続している,過去に行った行動について予期せぬ形でテストする偶発位置記憶テストである.合計8匹のラットを対象にそのテストを実施した結果,ラットが過去に自身が行った行動の位置を遡って思い出すことを示唆する結果を得た.また,一部のラットについて脳梁膨大後皮質の損傷の高価を検討した結果,過去の行動を思い出すことに関連する行動が減弱する傾向が観察された.このことは,脳梁膨大後皮質がエピソード記憶の一特性である心的時間操作に関与することを示唆している.今後は,損傷効果に関するデータをさらに追加して,まとめていく予定である. また,新たに放射状迷路を使用した偶発位置記憶テストを考案し,そのテストを8匹のラットに対して実施した.その結果,予測していた行動とは異なっていたが,覚えておくことを予期させない状況であったにも関わらず,手がかりについての記憶をもとにした行動が観察された.このことは,他の課題と同様に,ラットがエピソード記憶を有していることを示唆している. 加えて,別の8匹のラットを対象に,放射状迷路を使用した「いつ」「どこ」「なに」というエピソード情報を記憶させる課題を学習させ,一部のラットに単一ニューロン活動の記録デバイスの装着手術を実施した.今後,ニューロン活動のデータを収集する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では,ラットに放射状迷路を用いた条件付き場所見本合わせ課題を学習させ,脳梁膨大後皮質のニューロン活動を記録・解析する予定であった.昨年度は,実験手続き上の不手際により,予定していたパフォーマンスのレベルまでに課題を学習させることができなかったが,新たに8匹のラットを対象に条件付き場所見本合わせ課題の訓練を行い,一部のラットについては,ニューロン活動のデータを収集するための記録デバイス装着の手術を実施するまでに至った.しかし,いまだ継続的にデータを収集できる段階までには至っておらず,今後は可及的速やかに,その段階まで研究を進展させる必要があると考えている. 一方で,当初の研究計画では将来的な課題として挙げていた,エピソード記憶の別側面である心的時間操作について検討する点においては進展がみられている.昨年度に引き続き,心的時間操作の側面に関与すると考えられる偶発位置記憶テストにおける脳梁膨大後皮質の損傷の効果を示唆するデータを得ることができた.このことは,ラットが過去の自身の行動を遡って思い出すことに脳梁膨大後皮質が関与することを示唆している.今後,十分なデータを得ることができ次第,論文として発表していく予定である.さらに,迷路事態を利用した新たな偶発記憶テストを考案し,それによってエピソード記憶の一側面を捉えることができたことも,計画以上の進展である.こちらについても,今後テスト課題を洗練し,エピソード記憶過程について様々な側面から検討していきたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,条件付き場所見本合わせ課題遂行時の脳梁膨大後皮質のニューロン活動データを収集していく予定である.この点については当初の研究計画よりも進行が遅れているため,当該年度において中心課題として研究を推進させる. 並行して,これまでに得られた成果を学会や論文などの形で発表していく.そのために必要な追加データを収集する.特に,心的時間操作に与える脳梁膨大後皮質の損傷効果に関するデータについては,論文として発表するためには,追加データが必要であると考えられるので,その点を進展させる. また,平成24年度に実施したナビゲーション課題と脳梁膨大後皮質の機能との関連についての実験についても,データを追加して発表していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に関わる書籍を購入予定だったが,研究の進展状況から,次年度に必要となると判断したため. 次年度に書籍代として使用予定である.
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Research Products
(15 results)