2012 Fiscal Year Research-status Report
神経幹細胞追跡のためのバイオイメージングシステムの構築
Project/Area Number |
24500498
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
袴田 陽二 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (00218380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 正彦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (10508873)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
移植神経幹細胞の治療効果を評価する上で、宿主内における移植幹細胞の同定は極めて重要である。今年度は、バイオイメージングシステムで高い実績のある細胞マーカータンパクである蛍光タンパクのGFP (Green Fluorescence Protein )およびルミネッセンス発光を誘導するLuciferase (Luc)を同時に発現する幹細胞の樹立を目指した。我々は、これまでにGFPおよびLucを単独で強発現するトランスジェニック(Tg)ラットの作製に成功している。両マーカーを発現する幹細胞を作製するために、両ラットを自然交配させ、生まれた産子における遺伝子の有無を確認し、両遺伝子を持つ個体(GFP/Luc)を選抜した。成熟GFP/LucTgラットの骨髄から定法に従って間葉系幹細胞(MSC)の分離培養を行った。得られたMSCの特性解析をリアルタイムPCRにより行い、GFP/Luc由来のMSCはこれまで報告されている正常ラットのMSCと同じ特性を有することを明らかにした。 本年度、ラットに加えてスナネズミの虚血モデル並びにMSCの樹立を行った。スナネズミは脳の血管走行が他のげっ歯類とは異なり、総頸動脈を閉塞することで容易に前脳虚血が出来る。来年度、Tgラット由来の移植神経幹細胞を脳虚血負荷したスナネズミに移植する実験遂行するうえで、スナネズミのMSCも必ず必要となる。今回の実験で、スナネズミの両側総頸動脈を一過性に繰り返し閉塞することで、再現性良く、大脳皮質に虚血神経細胞死を誘導出来ることを明らかにした。また、遺伝子発現に関してスナネズミ由来MSCはラットMSCと極めて類似していることを明らかにした。スナネズミの一過性脳虚血負荷後にスナネズミMSCを投与すると、MSC投与群は骨髄単核球および生食投与群に比較して虚血神経細胞死の数を減少させることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの目的は、神経再生研究用のモデルとして移植幹細胞を非侵襲的に追跡可能なバイオイメージングシステムの構築である。当初の本年度の計画は、細胞マーカー発現幹細胞の確立である。予定通り、GFPとLuciferase(Luc)Tgラットとの交配から両マーカータンパク遺伝子を同時に発現する間葉系幹細胞(MSC)の樹立に成功した。その過程で、GFP遺伝子をホモ型に持つ個体が出産後早期に死亡することを発見した。GFPは検出が容易であること、発光の特異性が高いこと等の理由から細胞マーカータンパクとして広く利用されているが、今回の発見が、GFPの特性によるものなのか、それ以外の原因があるのかは、本プロジェクトの遂行に極めて重要なため、今後、幹細胞の樹立と平行してGFPの特性解析を進める。 移植幹細胞の神経再生の可否を評価する上で、幹細胞の移植を受ける動物の障害の再現性は極めて重要である。神経障害の中でも脳虚血後の脳梗塞は死亡率が高く、人の死因の常に上位を占めることから、今回の研究では脳虚血後の神経再生をターゲットにした。従来の脳梗塞モデルは手技が煩雑でしかも再現性が低いといわれている。次年度予定していた虚血モデルの開発を前倒しして本年度検討した。その結果、スナネズミを用いた新規の脳虚血モデルの作製に成功した。予備実験ではあるが、作製した虚血モデルを用いた幹細胞の神経再生研究の結果は良好で、今後の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、2種類の動物から神経再生が期待できる幹細胞の樹立に成功した。自家幹細胞を利用した臓器再生は神経に限らず、多くの臓器再生への利用が期待されている。しかし、幹細胞の移植するタイミング、移植する細胞数、さらにはその治療効果のメカニズムは未だに不明な点が多い。今後の研究は幹細胞の特性解析と治療効果を同時並行で進めていく。幹細胞の特性解析として幹細胞に特異的に発現するマーカーの同定と、分化誘導後の多分化能を調べる。今回実験に使用したスナネズミは、その遺伝情報が皆無で、今後はラットの情報をもとに、遺伝子の配列を決定する。治療効果は、GFP/LucTgラット由来の幹細胞を虚血負荷したラットおよびスナネズミに移植し、その定着をGFPおよびLucの発現を経時的に追跡し、移植細胞の運命をバイオイメージングシステムを利用して明らかにする。また、幹細胞移植の治療効果の評価をローターロッド試験、迷路試験、明暗ボックス等の行動解析機器を利用して行いう。以上、神経再生研究用のモデルとして移植幹細胞を非侵襲的に追跡可能なバイオイメージングシステムの構築を目指して、多面的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度はGFP/LucTgラットおよびスナネズミからの幹細胞の樹立をメインに研究を行った。動物の飼育、採取した幹細胞の培養系等に係る整備は予算を有効に利用して整備され、期待された成果が得られた。当初、脳内への幹細胞移植用に脳固定装置の購入を予定していたが、別途、同等の機器を低額で入手することが出来たため、また、来年度は虚血動物の作製ならびに幹細胞の特性解析用としてFACSと免疫染色用にモノクローナル抗体の購入等により多額の支出が見込まれるため、本年度の予算の一部を25年度に繰り越した。さらに、研究成果の公表(印刷代)および研究遂行のための技術習得・情報交換のための旅費についても若干執行する予定である。
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Research Products
(4 results)