2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500506
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山本 悦治 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80501791)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 拡散強調画像 / 拡散テンソル画像 / 高速画像シミュレータ |
Research Abstract |
平成24年度は次の4つのテーマに関して検討を進めた。(1)磁化の離散化間隔・拡散係数と計算誤差との関係、(2)高速計算法の確立、(3)拡散係数の異方性の組み込み、(4)生体磁化率の不均一性に基づく磁場不均一の計算法、である。(1)に関しては、拡散強調画像を撮像する際に印加するMPGのb-valueが決まると、拡散係数をパラメータとして、離散化間隔と計算誤差とを求めることが可能になった。これより、必要とする精度に応じて磁化の配置間隔を決定できる。(2)に関しては、拡散によるMR信号の減衰は、MPGの印加方向の拡散だけを考慮すれば良いことを見出した。言い換えると、MPGの印加方向に磁化を密に配置し、それ以外の方向には粗に配置する磁化密度変調法を提案し、その効果を確認した。また、組織の境界近傍だけを厳密に計算し、中間領域はMPGの位相と緩和時間だけを考慮して計算する簡易計算法を提案し、効果を確認した。これらと並列計算法とを全て適用した場合、従来法に比べ17万倍の高速化が可能であることを、試作シミュレータにより確認した。この効果は極めて大きく、今回用いたファントムでは52分で計算を終えることができたが、従来法では14.5年を要し不可能に近い。(3)の拡散係数の異方性に関しては、高速法の適用を前提として検討した。すなわち、拡散係数の異方性を表す拡散テンソルを求めるためには、複数方向にMPGを印加する必要がある。しかし、高速法を適用するためにはMPGの印加方向は、常に数値ファントムの高密度磁化の並びに一致させなければならない。そこで、数値ファントムを常にMPGの方向に回転させる方法を提案した。その結果、この方法は汎用性に優れており、誤差も1%以下になることが確認できた。(4)の生体磁化率の影響に関しては、磁化率の不均一が誘起する磁場不均一を計算するコードを作成した段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、これまで例のないヒト頭部サイズに適用可能な拡散強調画像シミュレータを開発することであるが、平成24年度の研究実施計画として挙げた項目は、ほぼ達成できた段階にある。特に、高速性に関しては、脳正常灰白質、梗塞灰白質、正常白質と同等の物理定数からなる、単純な構造の数値ファントムの場合には、17万倍高速化可能であることが確認できた。また、高速法を適用しない場合との誤差は、3%以下に抑えることができた。これは、本研究の最も基礎となる高速化が、十分な計算精度を維持しながら達成できたことを意味する。この高速性を生かしてこれまで全く手が付けられていない分野、すなわち拡散テンソルを考慮したシミュレータへと進めることができた。さらに、剪刀や鉗子などの手術器具の有する磁化率や、生体構成物質の磁化率が誘起する磁場不均一の効果を、シミュレータに組み込む準備ができた。以上より、順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は磁化率の分布が誘起する磁場不均一を高精度に計算する方法を確立すると共に、不均一磁場が拡散強調画像の形状歪みや濃度歪みに与える影響を定量的に評価することを可能にする。一般に、磁場不均一がある場合には磁化数を増やす必要があるが、この点でもこれまでに達成した高速化が大きな意味を持ってくる。また、磁場の不均一による計算時間の増大を抑えるために、アダプティブな磁化密度変調法を考えており、具体的に検討する。一方で、数値ファントムとしては、これまでの単純な構造ではなく、より生体に近い構造を有する数値ファントムを用いる予定であり、その準備を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの成果を国際学会あるいは論文誌に発表するための費用として用いると共に、シミュレータで得られた結果を実際のMRI装置で検証するための実験に必要な費用として用いる予定である。
|
Research Products
(6 results)