2012 Fiscal Year Research-status Report
MRI適合Au-Pt-8Nb合金の微細組織制御による特性改善
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24500528
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
浜田 賢一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00301317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | MRI / アーチファクト / 磁化率 / 金合金 |
Research Abstract |
MRIアーチファクトフリーとなるAu-5Pt-8Nb合金を実用に供するには、この合金から線材や板材といった素材を作製する必要がある。しかし、本合金のボタン状インゴットを圧延すると端部に割れが入りやすいことから、その加工性は低いと推測され、素材への加工には加工性の改良が必要と考えられた。その手法はいくつか考えられるが、その中には現有の設備では困難なものもあるため、当初計画では他の手法を提案していた。 ところが、本年度の研究実施において田中貴金属工業株式会社(以下、田中KK)の協力を得ることができ、田中KKの設備によって上記の断念していた手法を採用することができた。すなわち、高温でのスウェージング加工(回転鍛造加工)である。この手法を特定の温度下で用いると、圧延では容易に割れが発生していた合金を線材に加工することができた。現在では線径60ミクロンの細線の製造も可能になっている。したがって、本研究の最初の目的である、加工性を向上させて素材を作製することには成功したといえる。 一方、田中KKで作製した線材の磁化率を測定すると、合金時よりも若干上昇することがわかった。これは、加工時に治具と摩擦する際に治具の成分、特に強磁性元素が線材を汚染し、磁化率を増加させているものと推定された。その対策としては加工後の線材の酸洗も考えられるが、細線の場合は洗浄が困難である。そこで合金の組成を微調整して磁化率を制御することとした。この合金の磁化率はNb濃度で制御できるため、Nbを減少させたAu-5Pt-7Nbとすることで、アーチファクトフリーの目安である体積磁化率-9ppm(SI単位系)をほぼ達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画における加工性の向上の目的が、合金からの素材の作製を可能にすることであったことを考えると、計画とは異なる手法ではあるがAu-Pt-Nb合金の線材作製に成功した点から、加工性を向上させる目的は達成したと評価できる。一方で、この線材の機械的特性(強度および伸び)の最適化に関しては、熱処理条件を変化させて評価中であり、今年度以降も続行する必要がある。ただし、これまでに得られた強度と伸びのデータから、この線材は生体用金属材料の規格であるISO5832の中の純チタンの規定値を満足できることは確認しており、用途を選べば十分に実用化の可能性があると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
MRIアーチファクトフリーのAu-Pt-Nb合金線材の作製が可能となったことから、この線材を用いて機械的特性の最適化を進める。研究期間内の到達目標の1つめ、室温で加工が可能な合金の作製については、スウェージング加工後の線材が室温で線引できていることから、既に達成できたと判断している、2つめの目標である高強度チタン合金と同等の強さを示す高強度合金に関しては、ISO5832の中のTi-6Al-4Vの規定値である引張強さ853MPa以上、降伏強さ770MPa以上、伸び10%以上を目標に、線材への時効処理条件の最適化で到達可能かを調べる。3つめの目標であるステンレス鋼と同等の弾性を示す合金に関しては、ISO5832の中のSUS316Lの一般的な弾性率である200GPaが目標であるが、これまでの中間評価では時効熱処理で弾性率を大きく増加させるのは困難と思われ、また、組成の変更で弾性率が低下する傾向が見られることから、異なる合金系の採用を含む大幅な材料設計の変更を必要とする可能性が高い。そこで3つめの目標に代わる4つ目の目標として、伸びの大きい合金を目指す。想定用途は血管内で大きく拡張して用いるタイプのステントであり、目標物性値はISO5832の中のSUS316Lの規定値である伸び40%以上とする。ここまでの中間評価で伸び25%以上は可能であることから、線材加工時の組織制御と時効熱処理の双方を最適化することで、目標値の達成を狙う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は田中KKの協力により線材の試作と供給が可能となったため、合金原料費が不要であった。また、細線の引張試験を想定して小容量のロードセルの購入を予定していたが、作製している線材が線径0.5mmと太かったため購入を見送ったことから予算の繰越額が大きくなった。繰り越した予算は今後、線材の購入に必要となる他、前述の高弾性率合金の新規開発に向けて異なる合金原料を購入する予定である。また、細線を用いて動脈瘤塞栓用コイルを開発する計画が進み始めれば、細線の安定した供給が可能となるため、小容量ロードセルを購入することもありうる。
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Research Products
(7 results)