2013 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系抑制性シナプス伝達の制御による運動学習増強に関する実験動物学的研究
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24500619
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
前島 洋 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (60314746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (20379895)
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Keywords | 運動学習 / GABA / シナプス / リハビリテーション |
Research Abstract |
平成25年度は、GABAA受容体のアンタゴニストであるpicrotoxin(PTX)投与による軽度のGABAA受容体活性低下における運動負荷が大脳皮質運動関連領野における神経活動とその受容体の発現に与える影響について実験動物学的に精査することを目的とした。 実験動物として15週齢の成体雄性ICRマウス匹を対照群とPTX群の2群(各群9匹)に群分けした。10日間の実験介入期間を設定した。対照群においては毎日1時間の15m/minのトレッドミル運動のみを10日間課した。一方、GABAA受容体活性低下を目的とするPTX群においては1mg/kgのPTXを腹腔内投与に加えて同様のトレッドミル運動を行った。行動評価の後、大脳皮質運動関連領野を採取して遺伝子発現の定量を行った。ターゲット遺伝子として、神経活動の指標となるc-fos、主要な興奮性シナプス受容体であるNMDA受容体各サブユニット(NR1, NR2A, NR2B)、神経栄養因子BDNF、NT-4、両神経栄養因子の共通の受容体であるTrkBおよびp75の発現をβ-actinを内部標準遺伝子とする比較Ct法により定量した。統計解析として対応のあるt検定(p<0.05)を用いて、PTX投与の影響について検証した。 10日間の介入により、BDNF、NT-4の発現は対照群と比較してPTX群において有意に少なかった(p<0.01)。また、c-fos発現量もPTX群において対照群よりも少ない傾向が認められた。NMDA受容体各サブユニット、受容体TrkBおよびp75の発現における両群間の有意な差は認められなかった。正常マウスにおける当該量のpicrotoxin投与下における運動は、質運動関連領野における活動とそれに伴う神経栄養因子発現に対して抑制的影響が生じていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の予定として、成体マウスをGABA受容体アンタゴニストであるpicrotoxin投与の有無・運動介入の有無の2要因により4群に分類し、pictotoxin投与と運動介入の相互効果について検討することであった。行動評価としてrotor rod test、beam walking test、incline test等の運動機能検査を行うとともに、生化学的評価として大脳皮質運動関連領野を対象に神経受容体、神経栄養因子のmRNA発現、蛋白定量等を行う予定とした。このうち、行動評価については完了したが、生化学的分析については、研究成果に記したように、運動を課したマウスについては進められたが、非運動マウスについては脳サンプル採取までに留まった。このため、生化学的評価において、当初予定していたpicrotoxin投与と運動の相互作用について検討するまでには至ることなく運動群におけるpicrotoxin投与の有無お影響に関する議論に限局した。以上の点において、本年度の成果は当初の予定よりもやや遅れているため、早々に採取サンプルに分析が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度実施予定の生化学的分析は、運動を課したマウスに限られ、非運動マウスについては脳サンプル採取までに留まった。平成26年度は、前年度に残留した非運動マウスの採取脳サンプルにおける前年度同様の遺伝子発現に関する実験をはじめに着手し、併せて前年度採取脳サンプルを対象に蛋白定量実験を行う。これにより、picrotoxin投与と運動の相互作用について生化学的所見をもとに検討を行う。 更に、GABA受容体アンタゴニストとしてpicrotoxinに替わりbicucullineを用いて、平成25年度計画と相同する実験デザインを実施し、GABAA受容体アンタゴニストの投与による緩徐な興奮性と刺激感受性の制御が運動学習と大脳皮質運動関連量野へのシナプス修飾へ与える影響について、再現性或いは投与薬剤による相違について検証する。即ち、成体マウスをGABA受容体アンタゴニスト投与の有無・運動介入の有無の2要因により4群に分類する。10日間のbicucullineを投与後、引き続きbicuculline投与下にて運動介入を10日間行う。運動介入としてトレッドミルを用いた汎用的な実験動物の運動に変更採用し、運動介入前後において、rotor rod test、beam walking test、incline test等の運動機能検査を行う。所定の行動分析終了後、全脳を採取し、組織科学的実験および生化学的実験のサンプルとする。組織科学的分析として、皮質運動関連野を対象にΔFosB、c-Fos抗体を用いた神経活動性の定量を行う。生化学的分析として、western blottingによるグルタミン酸受容体(NMDA受容体、AMPA受容体)のリン酸化とそれに伴うpost-synapseへの集積、シナプス数への影響等の可塑的変化を定量する。更にリアルタイムPCR法に基づく各種神経栄養因子とその受容体、グルタミン酸およびグルタミン酸受容体発現の定量を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究期間後半において、申請者の所属の異動ともなう研究室の移動準備にため、研究の中断が生じた。このため、本年度当初計画していた生化学的実験ついて、一部の実験の実施が延期され、当該実験に使用予定であった使用期限を有す実験試薬、抗体等の購入が行われなかった。このため本年度の研究費の残額が生じた。 平成25年度に実施予定であった一部の生化学的実験を平成26年度のはじめに行う。このために平成25年度に生じた次年度使用額を使用する。即ち、前年度採取サンプルを用いたシナプス受容体、神経栄養因子とその受容体におけるmRNA発現、蛋白、リン酸化シグナルの定量に関わる検査試薬、抗体等に重鎮する。
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