2012 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害者用移動支援システム間の連続性に関する基礎研究
Project/Area Number |
24500646
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
藤澤 正一郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (50321500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 克也 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (10403651)
伊藤 伸一 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (90547655)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バリアフリー / 視覚障害者誘導用ブロック / 音響式信号機 |
Research Abstract |
視覚障害者にとって交差点を横断することは、もっとも危険を伴う行動の一つである。視覚に障害を持つ歩行者は、点字ブロックで横断歩道まで誘導された後、音響信号機によって交差点を渡り切ることが重要であるが、点字ブロックと音響信号機の相互の接続性や連続性の観点から検証することはこれまで行われてこなかった。そこで本研究では、点字ブロックと音響信号機の移動支援システム間の接続性や連続性を検証することを目的とする。 我々は歩行実験が可能な室内実験室を保有しており、交差点周辺を模擬した室内空間を構築するために点字ブロック,音響式信号機のスピーカー,騒音用スピーカーを設置して実環境を再現することができる。実際の交差点周辺の実騒音を再現することによって、安全で再現性のある実験ができる。音響式信号機のスピーカーの位置は、横断歩道口の点字ブロックの中央と中央から3m離れた地点(騒音側と反対側)に、横断歩道口と対岸に合計4つの音響信号機のスピーカーを配置した。4つの組み合わせが考えられるが、初年度はその内3パターンの被験者実験を実施した。ただし、騒音側の設置も考えられるので、この場合は6つ音響信号機のスピーカーを配置が考えられる。組み合わせは9パターンとなるが、昨年度は初年度でもあり、今年度の本格的な本実験のための実験手法の確立を目指す予備実験として実施した。 この予備実験を実施することによって実験手法の確立と合わせて、限られた組み合わせの中でも、歩行者の歩行特性を見出すことができた。実験結果では、歩行者は音響式信号機のスピーカーの音によって誘導されることが分かったが、音響信号機のスピーカーの配置パターンによっては、横断歩道から外れて危険な誘導になることが示された。また、交差点の騒音も誘導に影響を与えることが分かった。この成果は国内の学術講演会で発表を行っている。また、本年度は国際学会に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、平成25年度の本実験に向けた実験手法の確立のための予備実験計画の策定し、その実験準備を行うことが目的であった。予備実験では、交差点周辺の音の再現システムにより、実際の交差点周辺の音環境を再現する。この環境の中で、点字ブロックによる交差点横断歩道口までの誘導と音響信号機による横断歩道の横断実験を行った。本実験に向けて実験に要する時間や実験条件などのデータを得ることができた。交差点周辺の騒音再現のために評価実験も行い、室内実験が有効であることも検証することができた。音響式信号機のスピーカーの設置場所が異なる3パターンの実験環境において実験を行った.被験者は全盲20名(延べ25名)で実施した。 音響式信号機のスピーカーの設置場所は,中央―中央と右端―右端,中央―右端の3パターンとした.実験結果から、中央のパターンの誘導の連続性は他のパターンに比較して確保されていることが示された.視覚障害者は音響式信号機の音によって,対岸の横断歩道の中央に誘導されていることが分かった.右端―右端のパターンの場合、偏軌距離にピークが中央以外にも別に一か所あることが分かった。右端-右端のパターンは中央-中央のパターンと同様に対岸の中央に横断歩道を渡ることができているが、音響式信号機のスピーカーの音に誘導されて右側に逸れることもあった.中央―右端のパターンは3つのパターンの中では一番右側にそれている.視覚障害者は、中央-中央のパターンと同様に,音響式信号機のスピーカーに向かって誘導されているので、中央-右端のパターンが最も横断歩道から外れている.点字ブロックの敷設と音響信号機の設置はお互いの連続性を確保できるように設計する必要性が示された。この成果は初年度の予備実験であるにも関わらず、連続性に関する知見が得られた。学術講演会への公表も行い、当初の計画以上に成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備実験で得られた結果を整理し、本実験で使用する組み合わせや実験に要する時間を決定する。また、実験手順についても再度検討を行い、本実験の手順を決定する。研究分担者には実験方法や実験結果の分析を研究代表者と検討を行う。予備実験では全盲者であったが、本実験は、障害者等級1・2級を中心に、障害種別に約70名の被験者も実験を実施する。本実験も予備実験同様、最大3時間以内の実験を実施する。ロービジョン者では照度を5ルクスと10ルクスとし、20分程度の暗順応を行う。研究協力者として本研究室の院生2名と研究補助員の3名で実験を行う。本実験で得られた結果を症状別や等級別などで分析し、その結果を国内外の学会で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の実験結果の国内外の公表と合わせて、必要であれば追実験も行うことを想定している。最終的な研究成果を報告書にまとめることと合わせて、学術論文への投稿を準備する。この研究成果は、社会基盤整備に向けたガイドラインの科学的基礎データとして活用が期待される。
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Research Products
(1 results)