2012 Fiscal Year Research-status Report
重度障害者のための口腔・舌運動による総合型操作支援装置:ITOASの開発
Project/Area Number |
24500660
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺島 正二郎 新潟工科大学, 工学部, 教授 (20278071)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 福祉工学 / 支援工学 / 重度障害者 / 頸椎損傷 / ALS |
Research Abstract |
頸椎損傷や筋ジストロフィーなどの重度障害者は上下肢共に自由が利かず,電動車椅子の運転や福祉機器の操作にまで不自由さを伴う.他方,重度障害者用の支援機器や操作装置は数多く開発されているが,上記の様な重度障害者が容易に操作できる機器は殆どない. そこで,重度障害者においても随意的な動作が可能な「舌運動」を利用し,口腔内に設置したリモコンや口腔内ジョイスティックを用いて,電動車椅子を始め,PC用マウスの操作,各種環境機器の操作を行うための「口腔・舌運動による総合型操作装置ItoAS」の開発を目指している. 本年度は口唇や前歯部分で軽く咥え,舌先で小型のスティック部分を操作する「口唇ジョイスティック」の開発を行い,その操作性について検討を行った.具体的には,大学内に簡易コースを設定し,このコースの走行に要する所要時間の計測を行った.被験者は健常者10名(20代:9名,40代:1名)とし,コース上の通過ポイントを指定した上で,できるだけ早く走行するよう指示を与えた. 簡易コース走行時の所要時間は全被験者の平均で38.0±6.1(mean±1S.D.)[s]であった.また,参考のために,同じコースを通常のジョイスティックを用いて走行した際の所要時間は27.2±1.3[s]であった.ここで,本研究で開発した「口唇ジョイスティック」を用いて走行した時との平均値の差異は10.8[s]であり,39.7%の増加に留まったことが分かった.この結果から,開発した「口唇ジョイスティック」は実利用可能な範囲にあると推察された. 続いて,「口唇ジョイスティック」の他に,口腔内に設置し,舌で超小型のジョイスティックを操作する「スティック式口腔内リモコン」の試作を行った.「スティック式口腔内リモコン」を用いて電動車椅子の操作を行った場合においても,良好な成果が認められたので,今後,詳細な実験的検討を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画としては,下記の2点を予定していた. 1)口腔内に設置可能なジョイスティックの開発: 口唇や前歯部分で軽く咥え,舌先で小型のスティック部分を操作する「口唇ジョイスティック」を開発する. 2)コントロールソフトの開発: 「口唇ジョイスティック」からの操作指令に基づいて,電動車椅子の運転操作を行うための,制御ソフトの開発を行う.また,意思伝達装置やPCなどの操作用機器としての利用を考え,PC上のマウスカーソルを上下左右へ移動させ,クリック・ダブルクリックを行うためのプログラム開発を行う. 上記の課題は年度内に完了しており,開発した「口唇ジョイスティック」の操作性について,実験的検討を行った.その結果,電動車椅子の操作および,PC上のマウスカーソルの操作においても良好な操作感が得られ,開発した「口唇ジョイスティック」は実利用可能な範囲にあると推察された. これらの状況から,本研究は当初の予定通り,順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の助成金申請時における今年度の研究計画としては,下記の3点を挙げていた. 1)口腔内に設置可能なジョイスティックの改良(試作2号機の作成): 平成24年度に試作した「口唇ジョイスティック」の試用評価結果を基に,より使い易いジョイスティックにするための改良・改造を行う. 2)コントロールソフトの改良: 1)と同様に,操作性を向上させるためコントローラーとコントロールソフトの改良を行う. 3)再評価: 改良を行った試作システムについて,再度試用・評価を行う ここで,「研究実績の概要」でも示した様に,試作した「口唇ジョイスティック」の操作性が非常に良好であった.一方で,当該「口唇ジョイスティック」は口唇で咥え舌によって操作されるため,唾液などによる水分に対する対策が重要視された.また,「口唇ジョイスティック」の他に,口腔内に設置し,舌で超小型のジョイスティックを操作する「スティック式口腔内リモコン」の試作を行っているが,十分な操作性の検討はなされていない他,「口唇ジョイスティック」と同様に防水処理に対する対応が不十分である.そこで本年度は,本システムの防水処理に対する対応を検討すると共に,防水対策後の操作装置の有効性について実験的に検討を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の様に,これまでに開発した「口唇ジョイスティック」および「スティック式口腔内リモコン」の防水に関する対策を講ずる予定である.現状では,乳児用の「ほ乳瓶の飲み口部分(人口乳首)」に使用されているシリコン系の樹脂を利用して防水を試みる予定である.この材料を選択した理由としては,防水性があることの他に,ヒトの口腔内に入れても十分安全であること(有毒でないこと)が挙げられる. 但し,「スティック式口腔内リモコン」に用いている電子基板との接着性の強弱が防水効果と大きく関係する他,操作装置の故障寿命にも大きな影響を与えるため,今後詳細な検討が必要となる. そこで,本年度の研究費の主な使途としては,上記の防水に関する研究費,操作装置の有効性を検討するための実験費用に用いる.また,これまでに得られた結果や,今後得られる結果について,学会などで公開する予定であり,これにかかる旅費にも使用する予定である.
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Research Products
(9 results)