2013 Fiscal Year Research-status Report
重度障害者のための口腔・舌運動による総合型操作支援装置:ITOASの開発
Project/Area Number |
24500660
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Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺島 正二郎 新潟工科大学, 工学部, 教授 (20278071)
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Keywords | 福祉工学 / 支援工学 / 重度障がい者 / 頸椎損傷 / ALS |
Research Abstract |
上下肢共に不自由な重度障がい者は,電動車椅子を始めとした福祉機器の運転や操作にまで不自由さを伴うが,この様な重度障がい者が容易に操作できる機器は殆どない. そこで,重度障がい者においても随意的な機能として温存されやすい「舌運動」を利用し,口腔内に設置した口腔内リモコンや口唇ジョイスティックを用いて,電動車椅子を始め,PCのマウスカーソル,各種環境機器の操作を行うための「口腔・舌運動による総合型操作装置“ItoAS”」の開発を目指している. 本研究では口唇で軽く加え,舌先で小型のスティック部分を操作する「口唇ジョイスティック」の開発を行っており,2012年度までに開発した「口唇ジョイスティック」を用いて電動車椅子の運転操作を行い,その有効性を示した.他方,口腔内に設置し,舌で操作する「口腔内リモコン」の開発も併せて行っている.ここで,従来の「口腔内リモコン」は操作に対応したスイッチを舌先で押下することで対象物の操作を行うが,「口唇ジョイスティック」の様に操作部に小型のジョイスティックを利用することで,操作性の向上が図れると考え,口腔内リモコンの改良を行った. 改良したスティック式口腔内リモコン(5号機)の操作性について検討を行うため,市販の電動車椅子を用い,大学内に規定した簡易的なコースを走行し,所要時間を測定した.被験者は健常者8名,各5回ずつ走行し,走行に要した平均所要時間とSDを算出した. 平均所要時間は52.4±10.7 (mean±1S.D.)[s]であった.また参考として,同リモコンを指で操作した場合の平均時間は42.0±5.5(mean±1S.D.)[s]であり,両者を比較すると,舌による所要時間は指と比べ,約10[s](25%)の増加に留った.ここで,指の感覚が鋭いことを考慮すると,両者に大きな差が無いことから,開発した口腔内リモコンは操作性が高いと推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「口腔・舌運動による総合型操作装置“ItoAS”」の開発を目指している.このシステムの操作対象は電動車椅子を始め,PC上での文字入力,各種環境機器の操作を目指しており,現状では電動車椅子の運転とPC上での文字入力に成功している.また,当該システムの操作入力装置として「口唇ジョイスティック」と「口腔内リモコン」の2系統を有していた. ここで,成果概要にも記した様に,2012年度までに開発した「口唇ジョイスティック」の操作手法を「口腔内リモコン」にも採用することで,「口腔内リモコン」の操作性の向上が図れると考えた.そこで,本年度は従来のプッシュ式の口腔内リモコンをスティック型に改良することとした. また,改良した口腔内リモコンの有効性を実験的に調べたところ,操作性は良好であった他,非常に機敏で細かい動きができる手指でのリモコン操作と比較しても,走行に要した所要時間は約10[s](25%)の増加に留ったことから,開発した口腔内リモコンは操作性が高いと推察された. 尚,今回の改良により,本システムの操作入力装置としては「口唇ジョイスティック」と「口腔内リモコン」の2系統を持ち,「口腔内リモコン」の操作方法としては“プッシュスイッチ”を用いた「押下式」と“超小型のジョイスティック”を用いた「スティック式」の2種類となった.また,細かい操作方法の差異として「モーメンタリーモード」と「ラッチモード」を設定しており,より多くの障がい者への適応を可能とすべく,現在も研究を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の助成金申請時における今年度の研究計画としては,下記の3点を挙げていた. ①口唇ジョイスティックの改良(試作3号機の作成),②制御プログラムの改良,③再評価とまとめ. ここで,成果の概要や進捗状況にも示した様に,昨年度は「口唇ジョイスティック」以外の入力装置としての「口腔内リモコン」の改良に注力をし,その有効性を示した.これにより,本システムは,より多くの障がい者に適応可能となる様に操作入力装置の選択肢を広げることに成功したが,実際の利用に向けては,更なる操作性の向上や疲労感の低減が必要不可欠である. そこで本年度は,「口唇ジョイスティック」,「口腔内リモコン」共に,更なる操作性の向上や疲労感の低減に向けて,操作部分の機構改良を行い,市販の電動車椅子およびPC上での文字入力実験を行うことで,その有効性を明らかにすると共に,本研究の統括的なまとめを行う.尚,制御プログラムについては,現状で大きな不具合がないことと,本年度は「口唇ジョイスティック」,「口腔内リモコン」の改良に注力するため,制御プログラムの大幅な見直しは行わず,必要最小限の変更にとどめる予定である. さらに,本研究のリミテーションと今後の展望としては,本研究で提案している操作支援装置は「舌運動」を利用した「口唇ジョイスティック」もしくは「口腔内リモコン」を提案している.これまでは,これら入力装置の操作性などに注目してきたが,防水処理に対する対応が不十分である.そこで本年度以降は,本システムの防水処理に対する対応を検討する共に,防水対策後の操作装置の有効性について実験的に検討を行う予定である.さらに,健常者での操作で安全性が確認された後には,障がい者の方々の協力を得た上で,実験的返答を行う必要がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において,操作入力装置として開発している対象としては「口唇ジョイスティック」,「口腔内リモコン」が挙げられる.ここで,「口唇ジョイスティック」および「口腔内リモコン」の小型化を図るためには,電子基板の小型化が必要不可欠であり,専門業者へ外注する必要がある.ここで,昨年度中にも新たな基板の作成・発注を依頼したいところであったが,予算不足のため発注できなかった. 上記の様に,昨年度の未使用金は基板作成のための費用であった.そこで,2014年度の直接経費と併せて,新たな基板の作成費として使用したいと考えている.
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Research Products
(5 results)