2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500665
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
海本 浩一 大阪電気通信大学, 医療福祉工学部, 教授 (90340637)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 在宅ケア / 電解水 / 殺菌消毒 |
Research Abstract |
本年度は、電解水の殺菌主要因となる有効塩素(AC)濃度を簡易的に計測する装置に温度補償回路を装備し計測することと、その殺菌力を遺伝子レベルで観察することを目的とし研究を行った。AC濃度の簡易測定は電気伝導度との相関関係を再度、施行したところ、両者に有意な相関関係を認め、AC濃度は電気伝導度にて簡易的に知ることができることを再確認し、本装置の有用性を確認した。しかし、温度補償回路が複雑でその組み込みが思うようにできなかったため、作成した電解水の温度調整を行い(10℃と20℃)伝導度を計測した。その結果、大きな差はみられなかったため、今年度は温度補償回路を取り付けず使用することとした。また、今回の研究で明らかにできたことは、電解水生成中および生成直後のAC濃度は概ね電気伝導度から推測できるが、生成後の保存した電解水ではAC濃度が低下し殺菌力も低下するが、その電気伝導度とAC濃度には相関関係はみられないという点である。 一方、電解水の殺菌効果を遺伝子レベルで評価する際にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いた。すでに強酸性電解水はPCR法にてその殺菌力を評価しているので、今回は中性電解水の殺菌力を芽胞を形成するセレウス菌を用いて確認した。その結果、強酸性電解水と同様に中性電解水の殺菌効果もセレウス菌の核DNAまで及んでいることが確認できた。なお、このPCR法は今までと同様、核DNA抽出までは本研究室内で行ったが、その後の工程は他施設で設備を借りて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、すでに試作した電解水の電気伝導度計測装置の有用性を再確認した。しかし、電気伝導度は溶液温により影響を受けることから、本試作装置に温度補償回路を組み込みこの問題を解決することを試みたが、電気回路が複雑になり、また安定した計測結果がでなかったため、本年度の研究計画全体の進行を考慮し、これ以上の温度補償回路作成に関する探求は中止した。ただし、実際の液温における影響を調べる必要があったので、10℃~20℃の範囲で検討したが、ほとんど温度による影響がないという結果が得られので、温度補償回路のない従来の試作装置で研究を継続した。 また、PCR法を用いた殺菌効果の検証では、予測どおり、強酸性電解水と同様に中性電解水においても細菌の核DNAにまで影響を及ぼすことが証明できた。ただ、本年度はPCR器材を購入し、測定資料準備から計測結果までを研究室内で行う予定であったが、PCR法の手技的な引き継ぎ、取り扱う細菌のPCR標準キット(プライマー)の問題などから、当初の研究計画どおりには進まなかった。 一方、昨年度より、在宅用電解水装置の作製という内容で国際特許申請に向け取り組み、本年、ようやく出願することができた。そのため、少なからず研究計画を変更せざるおえなく、AC濃度計測用電気伝導度装置の温度補償回路の組み込みに代わり、10℃~20℃での電解水温度における実測と、中性電解水のPCR法による殺菌効果の検証できたことを考慮すると 本年度は当初の研究計画の概ね80%は達成できた思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、再度、研究協力者である本学非常勤講師・永田俊司先生のご指導のもとで電解水の電気伝導度計測装置に温度補償回路の組み込みの再検討を行う。同時に、前回は10℃~20℃での温度範囲で電気伝導度への影響を検討したが、もう少し広い範囲で電解水温度を設定し電気伝導度を測定する。在宅での電解水利用を考えれば、AC濃度の正確な数値は必要ではなく、殺菌消毒に有効な数値であるかを知る目安になればよいので、温度変化が電気伝導度とAC濃度との関係におよぼす影響を詳細に検討する。 本年度は自作電解水作成装置に電気伝導度計測計を組み込んだ一体型装置のデザインの試作を主なる研究目標とするが、その際、温度補償回路の組み込みが可能となれば、それを使用し、できなければデジタル温度計を用いて電解水温を計り、温度補正表にて電気伝導度からAC濃度を確認できるようにする。このデジタル温度計も電解槽に取り付けるデザインを設計する。このように作製した電解水作成装置一式を在宅用殺菌消毒液作成装置として使用するにあたり、アンケート調査を行う。まず、研究室内、学内で実際に本装置を使用しアンケートを行い、その結果をもとに装置のデザイン等を再考する。 さらに、殺菌効果については芽胞を形成するグラム陰性桿菌のセレウス菌を中心に観察してきたが、当初予定していたように高齢者施設などで集団感染の原因となるレジオネラ菌に対する殺菌効果について検討する。なお、本学ではレジオネラ菌培養の施設、設備がないため、研究協力者の神戸常盤大学・微生物研究室の柳田潤一郎講師のご指導のもと、神戸常盤大学で行う。ただし、レジオネラの培養は特殊な技術を要するとのことで、研究遂行ができなかった場合、他の細菌に切り替えて同様に電解水の殺菌効果を観察する。その際、どのような細菌を対象とするかは柳田潤一郎先生と相談し決めることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用計画については、1.物品費、2.旅費、3.人件費・謝金、4.その他について記す。なお、昨年度は細菌培養における培地ならびに細菌処理に必要な高圧蒸気滅菌装置(オートクレーブ)が故障し使用できなくなったため、オートクレーブ1台を新規購入し、PCR関連の設備備品の購入を見送り予算を持ち越した。 1.物品費:電解水の殺菌力を遺伝子レベルで観察するためにPCR法を用いるが、現在、細菌核DNA抽出までの作業が研究室内で可能であり、それ以降の作業は他施設で行っている。今年度は設備備品として高速冷却遠心機を購入し、電気泳動法までの工程が行えるようにする。また、すでに在宅用電解水作成装置を試作しているが、頻回の使用により電極の劣化が著しい。消耗品としてチタン板に白金メッキを施した電極を購入する。他の消耗品として、電子部品、試薬、細菌培養品、PCRキットなどがある。 2.旅費:国内学会1件、海外学会1件で発表を予定している。また、神戸常盤大学、他施設への交通費も計上する。 3.人件費・謝金:研究協力者の永田俊司先生には、引き続き電解伝導度の温度補償回路部作成の指導をお願いし、謝金を計上する。神戸常盤大学・柳田純一郎先生には細菌培養を学生にご指導して頂き、謝金を計上する。研究結果や資料の整理で秘書を、またアンケートの集配等で学生をアルバイト雇用する。 4.その他:学会参加費、アンケート作成費、会議費、コピー印刷費等を計上する。
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Research Products
(5 results)