2013 Fiscal Year Research-status Report
サーフレスキューにおける救助力向上のためのボードパドリングに関する研究
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24500752
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
深山 元良 城西国際大学, 経営情報学部, 准教授 (60406759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 雅信 大阪体育大学, 体育学部, 教授 (50159498)
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Keywords | ライフセービング / サーフレスキュー / ボードパドリング / ニーリングパドル / ストロークパドル / ボード速度 / ストローク頻度 / ストローク長 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ボードパドリングの動作分析を行い、今後の救助活動や技術指導のための知見を得ることである。前年度(平成24年度)までに、熟練者と未熟練者の男女を対象としてパドリング実験を行った。実験は、被験者に室内50mプールにおいて約40mの直線コースにおけるニーリングパドル(K-Pad)とストロークパドル(S-Pad)の全力パドリングを行わせた。この実験結果をもとに、平成24年度は熟練者におけるパドリング動作のストローク特性を明らかにし、その成果を学会等で発表した。平成25年度は、この内容を学術雑誌に投稿し、成果を学術雑誌に公表した(海洋人間学雑誌、第2巻第1号)。さらに、平成25年度は、熟練者と未熟練者のパドリング比較、および救助用ボードと競技用ボードのパドリング比較を行い、以下のような知見を学会等で発表した。 <熟練者と未熟練者のパドリング比較> K-PadとS-Padともに、熟練者群のボード速度は未熟練者群に比べて有意に速く、スタート後、熟練者群はより短い距離でより速い最大ボード速度に到達していた。また、K-Padにおいて熟練者群のボード速度がより速い要因は、ストローク長がより長いことが一因であると示唆された。また、両パドリングの最大ボード速度は、熟練者群ではストローク頻度よりストローク長との相関が高く、未熟練者群ではストローク長よりストローク頻度との相関が高かった。 <救助用ボードと競技用ボードのパドリング比較> K-PadとS-Padともに競技用ボード群のボード速度は、救助用ボード群よりも約10%速く、競技用ボード群のストローク長がより高値であった。これらの差は、競技用ボードに比べて救助用ボードの形状や重量がより大きいため、より大きな抵抗が生じたことによると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、前年度(平成24年度)に行った実験結果をもとに、以下の分析を行うことを計画していた。 1.男女のボードパドリング動作を比較・分析すること 2.熟練者と未熟練者のボードパドリング動作を比較・分析すること 3.救助用と競技用の異なるタイプのボードにおけるパドリング動作を比較・分析すること 4.成果を国内外の関連学会で発表すること これらの計画に対して、おおむね計画どおりに進展している。男女のボードパドリング動作の比較研究の成果は、熟練者男女のボード速度、ストローク頻度、ストローク長を比較し、その成果を海洋人間学雑誌(第2巻第1号)に原著論文として公表した(平成25年8月)。熟練者と未熟練者のボードパドリング動作の比較研究の成果は、日本体育学会(平成25年8月)で発表を行った。救助用と競技用ボードの異なるタイプのボートにおけるパドリング動作の比較研究の成果は、日本海洋人間学会(平成25年9月)で発表を行った。さらに、平成25年度は、研究計画にあるとおり、国際ライフセービング連盟が主催する「2013 World Conference on Drowning Prevention:世界溺水防止学会(平成25年10月、ドイツ)」で熟練者と未熟練者のパドリング動作の比較研究における成果を発表した。この学会はライフセービングを専門とする唯一の国際的、かつ学術的な学会であるが、ボードパドリングに関する研究報告は極めて少ない。そのため、本研究の成果をこの国際学会で発表することができたことは意義のある情報発信となった。さらに、これまでは、ボードパドリングの速度、ストローク頻度、ストローク長を分析することが主なテーマであったが、今後はボードパドリング動作に関わる種々の関節における関節角度・角速度などの分析を進め、成果を関連学会等で公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、当初の計画どおり、おおむね順調に進展しているため、次年度(平成26年度)はこれまで分析した結果の成果をまとめ、積極的に論文投稿および研究発表をすることに注力していく。科研費の全研究期間を通して、以下の比較研究を行うことを計画している。 1.熟練者におけるストロークパドルとニーリングパドルの比較研究 2.熟練者と未熟練者のボードパドリング比較研究 3.男女のボードパドリング比較研究 4.救助用と競技用のボードにおけるボードパドリング比較研究 これらの内、平成24年度までに行った実験結果をもとに、それぞれのテーマについて、ボードパドリング動作のボード速度、ストローク頻度、ストローク長についての研究は、ほぼ終了している。これらのパラメータの分析に加えて、今後は、2次元、および3次元分析によるボードパドリング動作の関節角度・角速度の分析を進めていきたいと考えている。研究を遂行する上での課題として、パドリング動作中、腕が水中に入水する局面の分析ができていない。この課題を克服するために、パドリング用エルゴメーター(陸上でパドリングを行う機器)を用いて分析する方法等を検討していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた主な理由は、当初の計画額より実際に支出した「物品費」「旅費」および「謝金等」の額が少なかったことである。物品費は、主としてプール使用料にあてる計画であったが、交渉によりプールの使用料を支払う必要がなくなったため支出額が計画よりも少ない額であった。旅費は、主としてドイツで行われた国際学会で成果を発表するための交通費、宿泊費として使用する予定であった。これらの経費節減の努力により支出額が計画よりも少ない額であったことによる。また、被験者への謝金等も、実験実施上、目的を達成することに支障をきたすことなく計画よりも少ない支出額であった。 次年度使用額の使用計画は、主として新たな実験を行う謝金等として使用することを考えている。平成25年度において次年度使用額が生じたが、科研費における全体の実験計画としてはおおむね順調に進展している。したがって、これまでの研究により見つかった課題に対処するために、新たな実験を計画したい。そのための謝礼等に使用する計画である。
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