2012 Fiscal Year Research-status Report
スピードスケートにおける滑走動作の発達に関する横断的研究
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24500760
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
湯田 淳 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (80415835)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピードスケート / 3次元動作分析 / 発育発達 / 滑走技術 / 体力 |
Research Abstract |
本研究の目的は,発育発達期における男女スピードスケート選手のストレートおよびカーブ滑走動作を3次元動作分析法によってキネマティクス的に分析し,陸上でのスピードスケート模倣動作で測定された下肢パワー発揮能力の発達の様相と関連づけて検討することによって,発育発達の観点からスピードスケートにおける滑走動作の技術的特徴を横断的に明らかにすることであった. この目的を達成するため,平成24年度では,小学校から社会人までの男女スピードスケート選手を対象として,スピードスケート滑走動作の計測およびスピードスケート模倣動作での下肢パワー発揮能力の測定を行った.前者では,国内競技会でのレース滑走および実験的滑走におけるストレート滑走動作を5台のハイスピードカメラを用いて撮影し,パンニングDLT法によって3次元座標を得るための映像データを収集した.また,後者では,リンクサイドに設置した可搬型フォースプレートを使用し,片脚および両脚でのスケートジャンプ(最大努力での1回の上方への跳躍)における地面反力を計測した.いずれも160名を超える被験者のデータが収集され,年代別の滑走技術(3次元画像解析)と専門的体力(下肢のパワー発揮能力)との関係を検討するために十分なデータが蓄積できたと考えられる. スピードスケート選手における氷上滑走動作や体力的特性に関する先行研究は多いが,そのほとんどは高校生を中心としたジュニア選手やシニア選手を対象としたものである.小学生や中学生などの低年齢層のデータはほとんどなく,発育発達を考慮した滑走技術の指導に関する知見は十分に得られていない.本研究によって,これまで科学的観点から検討されてこなかった小・中学校の年代におけるスピードスケート指導に対して有益な知見が提供できると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,国内外において未だ報告されていない,小学生からの各年代におけるスピードスケート滑走動作の技術的特徴を体力的要因と関連づけて横断的に明らかにするものである.被験者は10~18歳(小学4年生~高校3年生)のスピードスケート選手とし,各年代につき男女それぞれ15名程度(合計300名程度)のデータを収集することが計画されていた.これらのデータは400m室内リンクの占有利用によって収集することとなるため,関係機関や被験者(スピードスケート選手)の所属先等との調整の結果,実験は長野市オリンピック記念アリーナ(エムウェーブ)において実施することとなった.なお,様々な年代の選手のデータを確実に収集するため,中学生以上のデータはエムウェーブにおいて開催された競技会(ジャパンカップ第5戦およびエムウェーブ競技会)を対象とし,シニア(大学生・社会人)のトップ選手までのデータを収集することができた.また,小学生のデータは同会場近隣の選手に依頼することによって収集した. 本研究に参加した被験者は,小学4年生から大学・社会人までの男女スピードスケート選手165名であり,小学4年生から高校3年生までの各年代につき男女それぞれ15名程度という当初の計画通りにデータを収集することができなかった.しかし,現時点でのデータ数によって小学校中学年,小学校高学年,中学校,高校,大学・社会人といったカテゴリーごとに男女それぞれでデータ分析を進めることが可能であり,発育発達の観点から検討を進めるに十分なデータ収集が行えたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
滑走動作を分析するため,平成24年度ではストレート滑走動作を5台のハイスピードカメラを用いて撮影した.今後はこれらの映像からパンニングDLT法を用いて3次元座標を算出するため,映像の変換・整理の作業を経て,デジタイズ(分析点の画像上の座標をマウスでコンピューターに取り込む作業)を進める予定である.デジタイズは,全身の分析点25点を滑走動作1ストロークに渡って手動で進められるため,本研究の被験者数を考慮すると極めて多くの時間を要する作業となる.また,下肢のパワー発揮能力をみるための片脚および両脚でのスケートジャンプにおける地面反力データの整理も同時に進める予定である. なお,スピードスケートはスケート靴とスケートブレードといった用具を使って行われる競技である.特に,スケートブレードのロック(滑走面の曲率)がパフォーマンスに強く影響を及ぼすため,滑走動作を捉える際にはこの影響を理解しておくことが重要となる.また,スケートブレードのメーカーの相違によって滑走感覚が異なることも知られており,このような観点も持ちながら発育発達期にある選手たちの滑走動作の解釈を進めることも必要となる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
複数のハイスピードカメラで収集された高解像度の映像を編集し,動作分析を進めるためには高いスペックのコンピューターが必要となる.また,多くの時間が費やされるデジタイズ作業を効率よく進めるためにも,本研究での分析に十分に耐え得るコンピューターが必要であり,新規購入する予定である.なお,本研究は,小学生や中学生などの低年齢層における滑走動作の検討を進めるものであるが,これらの年代の滑走技術に関する科学的データはほとんどない.このため,データの解釈を進めるにあたっては氷上滑走特性(特にスケート靴やスケートブレードといった用具関連)を確認するためのデータ収集が必要となることが予想され,このための予算執行を見込む必要がある. 得られたデータの分析を進め,国内学会において研究成果の発表を行う予定であり,このための旅費等として研究費の使用も計画している.
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