2012 Fiscal Year Research-status Report
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24500762
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松岡 宏高 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10367914)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | spectator / professional sport / hometown / benefit / motivation |
Research Abstract |
見るスポーツの社会的価値を明らかにする研究の1年目の本年度は、プロバスケットボールチームの観戦者および地元住民を対象に質問紙調査を実施し、特に「個人の欲求(獲得されるベネフィット)」と「地域帰属意識」に関してデータを収集し、分析を行った。 研究成果の1つは、非観戦者が見るスポーツおよび提供するプロチームに対してどのような意識を持っているのかを明らかにし、実際に観戦した対象者の意識と比較したことであった。結果からは、スポーツのパフォーマンスに直接関わる観戦特有のベネフィットについては、非観戦者のほうが低い値を示し、社交や日常からの逃避については両者に差がない、あるいは非観戦者のほうが高いことが明らかになった。地域愛着は両者間に統計的有意差はなかったが、チームの地域貢献に対しては観戦者のほうが高く評価していることが分かった。また、非観戦者を今後の観戦意図によって二群に分けて比較分析した結果、観戦意図を持っている群のほうが、スポーツ観戦から得られるベネフィットを理解していることが推察された。一方で、チームの地域貢献に対する評価と地域愛着においては、両者間に有意差はなく、本研究の対象となったプロチームの地元住民の間では、観戦意図の有無に関わらず、地域でのチームの貢献が高く評価されている可能性が示唆された。 もう一つの研究成果は、観戦者を対象にしたデータを用いて、観戦前の期待ベネフィットと観戦後に獲得したと認識したベネフィットをそれぞれ確認し、それらの関係を検討することであった。観戦前の調査用紙に回答し、さらに観戦後の調査用紙に回答し返信した対象者は235名(回収率38.1%)であった。5つすべての動機因子において、観戦後の獲得ベネフィットが期待ベネフィットを上回ったが、重回帰分析の結果から、試合の価値に対しては「達成感」が最も高い説明力を持つ要因であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「見るスポーツ」が地域社会に与える影響として考えられる「個人の欲求」「地域帰属意識」「ソーシャル・キャピタル」の測定に焦点をあて、見るスポーツの受け手(消費者)である観戦者、およびその地域の住民の心理的側面(信念や態度)の変化を測定することにより、見るスポーツの社会的価値を明らかにすることを目的としている本研究では、1年目に研究のフレームワークが作成でき、さらにデータ収集を行った。特定の1つのプロスポーツチームのホームタウンでのデータ収集であったが、観戦者および非観戦者である一般住民からもデータを収集することができた。さらに、それらの分析結果から、プロスポーツがそれぞれの対象に与える影響を把握し、それらの比較分析も実施した。このように、おおむね順調に研究計画が進んでいると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
「見るスポーツ」が地域社会に与える影響として考えられる要因のうち個人に対する影響は1年目に研究がある程度進められたが、地域社会に対する影響としての地域愛着やソーシャル・キャピタルを変数にした研究の検討が平成25年度以降の課題となる。特にソーシャル・キャピタルの測定が困難であるため、先行研究の十分なレビューと緻密な計画による測定尺度の開発が必要である。また、調査が比較的行いやすい「見るスポーツ」の実際の消費者つまり観戦者に比べて、プロスポーツチームのホームタウンの住民を調査対象とすることが困難である。見るスポーツの影響の測定に適した都市の選定および適切な調査方法の検討も引き続き必要である。 今年度も昨年度と同様に実際の観戦者と非観戦者である一般住民の両者を対象に、(1)スポーツ観戦者の欲求、(2)ホームタウンのソーシャル・キャピタル、および(3)ホームタウン在住者の地域に対する帰属意識についてデータ収集および分析を行う。平成24年度に収集したデータとの比較分析も行い、経年変化を確認することで、「見るスポーツ」の社会的価値の確認を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)は222円であり、これは文具等の消耗品の支出の残額である。これについては、物品費の一部として印刷用紙の購入を補うために使用する。
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Research Products
(2 results)