2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500777
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
下園 博信 九州共立大学, スポーツ科学部, 准教授 (30279294)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 状況判断 |
Research Abstract |
24年度の研究については、状況判断の正確性と速さについて、心理的要因の関係を調査することが中心となった。そのための、予備調査、聞き取り調査などから心理的要因に関わる内容の選別を行った。実験計画では、ラグビーに関する知識、戦術の知識を評価することにしていた。その評価内容について、高校生の指導者、選手から直接、調査することができ、分析・評価を行う予定である。 さらに、事前に収集していたデータをまとめ、その中で新たに発見された課題をまとめることとなった。その結果と課題は以下のようであった。 状況判断テストの結果をスキル水準別に比較したところ、非レギュラーグループにおいて、時間型テストの得点が有意に低くなった。特に時間型テストで、防御状況を見落としていることが明らかであり、時間的な猶予がなくなったときに正確な情報を察知できなくなっていた。 状況判断に対する自己効力感と、状況判断したプレーの遂行に対する自己効力感について比較した結果、準レギュラーグループと非レギュラーグループについて、状況判断したプレーの遂行に対する自己効力感が有意に低くなった。2つのグループは、判断には自信を持っているが、そのプレーを遂行できる自信はないという結果であった。 状況判断の評価とトレーニングに関して、スキル水準の低いプレーヤーなどに焦点をあて、不安や焦り、自己効力感などの心理的な要因を考慮した評価やトレーニングを検討することが望ましいと思われる。また、状況判断に関わる時間を速くしていくためには、ゲーム場面に多く存在する情報の中から、重要な情報を素早く察知させることや、状況を冷静に分析できることなど、思考的作業の効果的なトレーニングを使用したコーチングが重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではボールゲームにおける状況判断能力を向上させる手掛かりを見出せることに焦点を当てている。まずは、先行研究でも行っていたようにラグビーフットボールを対象に、研究をすすめているが、事前の調査・実験のデータをまとめることに時間がかかりすぎ、新たな調査・実験にいたるまでの時間が遅くなっている。 どの種目でも高い競技力を身につけるには、身体的な特徴を持っていたり、優れた運動能力があったり、精神的な強靭さを持ち合わせていることなどがあげられる。その一方で、知的な要因を含めた認知的な能力をどのように育むのかといった問題も多く問われている。この研究において状況判断能力に関わる要因が解明されれば、身体活動を伴わないトレーニング(具体的なメンタルプラクティス、メンタルリハーサル)の開発に貢献することや、日本人の特性を生かしたボールゲームの戦術などへの開発の手掛かりになるのではないかと思われる。特に「正しく速い判断」をすることが、プレーヤーのパフォーマンス発揮に影響を及ぼしていることが明確になれば、「速さ」を必要とした状況判断能力の研究につながっていくと考えられる。 このことを再認識し、状況判断の特徴を明らかにし、研究が滞らないようにペースアップしていこうと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究あるボールゲームに関わる状況判断能力の理論的な背景を考慮しつつ、新たな視点で状況判断能力に関わる要因の発見に努めたい。特に状況判断の正確性と速さの関係については、状況判断能力を向上させる認知的トレーニングを実施すると、「正確な判断」はできるようになるが、実際の競技場面で行っている判断の時間との差を指摘されることが多い。さらにいくつかの認知的トレーニングの研究において、熟練者と非熟練者のスキル的な差が明らかであるが、判断の正確性を測るようなテスト結果では差が見られないことがある。したがって同じ判断でも「判断する時間の差」があり、「同じような判断はできるがフィールドでは何かが違っている」という問題を解決するためにも、いつ判断したのか、どのタイミングでプレーを遂行するのかなどの時間的な差を明確にしていかなければならない。 判断時間と正確な判断の関係を明確にするためには、ゲーム場面で行われている一瞬の判断を何らかの方法で測定し、「正確で速い判断」によってスキルレベルにも明確な差があることを明らかにしたい。また、状況判断時にどこを見ているのかという注視行動についても着目する。状況判断の過程において、外的ゲーム状況に関する選択的注意、ゲーム状況の認知については注視行動を明らかにすることで、状況判断との関係を見ていくことができると思われる。さらに、状況判断に関わる内的要因(知的要因、経験値、心理的競技能力など)を調査し、総合的に状況判断能力に関わる要因を明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引き続き、研究機材を購入する。ただし、昨年度はデータ処理、映像処理用のパソコンを購入できていないので、今年度は購入する。学会発表、論文作成などに関わる費用も昨年度と同様に必要である。人件費については、データ量の増加、被験者への謝金等も多くなる見積もりである。 いずれにせよ、効果的な予算の使用を心がける。
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