2013 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の脳機能低下を予防する:運動およびクレアチン摂取効果
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24500803
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
祐伯 敦史 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20399067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 俊之 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (10454076)
浜岡 隆文 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70266518)
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Keywords | 高齢者の認知機能改善 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高齢者の脳機能低下を予防する一環として、クレアチン摂取および運動が高齢者の脳機能を改善するか否か、その有効性を検証することである。 本年度は、前年度の若年者および高齢者の予備的測定結果をもとに、高齢者に対する2週間の継続的クレアチン経口摂取が高齢者の脳エネルギー代謝および認知機能に及ぼす基礎的検討を行うことにあった。合計10名の高齢男性および女性(うち女性3名、66.4±3.3歳)を2群に分け、1日20グラムのクレアチンもしくはプラセボ(マルトデキストリン)を連続2週間投与し、投与前および投与2週間後に脳エネルギー代謝測定および3種類の認知機能検査を行い、クレアチン(Cr)の投与が脳機能に及ぼす効果を検証した。 結果として、左脳前頭葉白質優位部位における、コリン(Cho)に対するクレアチンの比の変化量%は、コントロール群=+7.5±12.5%に比べ、クレアチン摂取群では+32.8±1.5%と、クレアチン群において増加傾向を認めた。さらに、海馬領域におけるCr/Cho比は、コントロール群=-3.0±7.1%に比べ、クレアチン摂取群では+6.6±13.1%であった。一方、今回実施した認知機能検査(ワーキングメモリー、短期記憶、長期記憶)では、コントロール群、クレアチン摂取群において、投与前後に有意な変化は認められなかった。 高齢男性および女性を対象に、クレアチン経口投与を2週間連続して実施した結果、脳におけるクレアチン濃度は増加する傾向を認めた。またクレアチン投与による高齢者脳内クレアチン量の増加レベルには、部位による相違がある可能性も示された。クレアチンが脳高次機能発揮に重要な役割を果たしていることは、脳クレアチン欠損患者の精神遅滞症状をみても明白な事実であり、本研究の実施は、高齢者の認知機能低下を予防する一方策を検討する一助になる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクト3ヶ年の目的は、高齢者の脳機能低下を予防する方策を探す一環として、クレアチン摂取および運動が高齢者の脳機能を改善するか否か、その有効性を検証することである。平成25年度は、特に、高齢者にクレアチン経口投与を実施し、脳内エネルギー代謝物質レベルおよび認知機能に及ぼす効果を検討した。結果として、「研究実績の概要」でも述べたとおり、高齢者においても、若年者と同等もしくはそれ以上に、クレアチン経口投与が脳クレアチンレベルを増加させる可能性を示し、さらに、脳内部位による変化の差異が存在する可能性も示唆した。残念ながら、今回行った3種類の認知機能検査には、投与による有意な効果は認められなかったが、今後、対象とする被験者数を増加させ、さらに詳細な検討を行うことにより、より有益な情報が得られると考えている。 本研究の成果は、発表するための準備が進められている。 当初の目的に対し、本年度の進捗状況はほぼ合致しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 研究1年目(平成24年度)の若年者および高齢者を対象とした基礎的なデータ採取、および2年目(平成25年度)に得られた高齢者脳機能に及ぼすクレアチン投与効果データをもとに、最終年度である平成26年度は、高齢者のクレアチン摂取と運動の同時負荷が、脳エネルギー代謝および脳高次機能に及ぼす効果を検証したいと考えている。 具体的には、2週間のクレアチン経口投与と、これまで認知機能改善に有効という報告がみられている有酸素運動を組み合わせ、2週間の介入前後における脳内エネルギー代謝の測定、認知機能検査、運動機能検査を行い、高齢者の脳機能改善に及ぼす「クレアチン摂取」と「運動」の相乗効果について検討する。 本研究実施に関する審査は、立命館大学ヒト生命倫理委員会でも既に承認済である。コントロールされた条件下における、精度の高いデータ採取を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究発表旅費が予定より出費が嵩んだため、若干の未使用額が生じた 次年度は研究発表のために旅費を執行する
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Combination of α-Glycerophosphocholine (α-GPC) intake and aerobic exercise improves cognitive functions in healthy older women.
Author(s)
Yuhaku, A., Sato, K., Fujita, S., Hamaoka, T., and Iemitsu, M
Organizer
18th annual Congress of the European College of Sports Science
Place of Presentation
Barcelona, Spain
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