2012 Fiscal Year Research-status Report
心血管内皮を標的とした食物由来成分による心房内血栓形成予防法の開発
Project/Area Number |
24500857
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
馬渡 一諭 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (40352372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下畑 隆明 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90609687)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心房血栓 / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
本研究では、申請者らがWistar系ラットの近交法により確立した「心房内血栓自然発症モデルラット」への食物由来成分の投与が、心房血栓形成の予防に有用であるかを検討する。平成24年度はモデル動物の病態を観察し、心房血栓形成予防の評価法を確立することを目的とした。 本モデル動物の心組織の病理標本を作製し観察すると、20週齢より左心房に小さな血栓が観察され、40、60週と加齢とともに血栓が肥大していくことを確認した。心房血栓は心臓の拍動リズム調節の不良(心房細動)による「凝固性の増加」と「血液のうっ滞」の両要素が亢進することが主な要因と考えられている。しかし、本モデル動物の心電図をテレメトリシステムによりモニターすると、不整脈を確認できなかったことから、本モデル動物の心房血栓形成は心房細動によるものではない可能性が考えれらた。 そこで、内皮細胞より産生される一酸化窒素(NO)に着目した。血管張力測定により大動脈の内皮機能を測定すると、モデル動物は内皮依存性の弛緩反応が有意に減弱していることが確認された。さらに、モデル動物の生体内NO量が顕著に低値を示したことから、血管内皮のNO産生能が低下している可能性が示唆された。さらに、内皮依存性NO合成酵素(eNOS)の発現量を確認すると、心房および大動脈での有意に低下していた。 以上の結果より、本モデル動物では血管や心房内皮のNO産生能低下により心房内での血栓形成が助長されている可能性が考えられた。心血管の内皮細胞は血管の張力調節作用のほかに、抗凝固作用を有するNOを産生し、心血管の恒常性維持に働いている。心血管内皮の一酸化窒素産生能をコントロールすることが心房内血栓形成予防に重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いる「心房内血栓自然発症モデルラット」の病態を確認し、心血管の内皮機能が低下していることが明らかとなった。心房血栓の観察および心血管の内皮機能、生体内一酸化窒素量の測定方法を確立し、本モデルの評価系を確立したことは一部の目標を達成したと評価できる。 また、本研究課題の申請段階で用いる予定の2種類の食物由来成分に加えて、新たに他の食物由来成分について血管内皮細胞に作用することを確認し、British journal of nutritionに報告したことは評価できると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの結果より、心血管内皮の一酸化窒素(NO)産生能をコントロールすることが心房内血栓形成予防に重要であると考えられた。そこで平成25年度以降は、心血管の内皮細胞に作用し、NO産生を亢進させる食物または食物由来の成分を用いて、心房内血栓形成を予防できるかを検討する。食物由来の機能成分として、玉葱などに多く含まれるケルセチン及びその配糖体とウコギ科ニンジンのサポニン類などを用いて検討を行う。また、本年度に新たに他の機能成分を見出すことができたので、追加で検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
心房血栓モデルへの食物由来成分投与条件(投与経路、投与量、投与期間など)の検討を行う。実験動物の購入または飼育にかかる経費に使用する。また、食物由来機能成分の血中濃度や組織分布の測定や生体内一酸化窒素濃度の測定など、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)や生体内一酸化窒素量の測定(NO2/NO3 assay kit)の試薬等の購入に使用する。また、測定機器については、本校の共同施設を用いるため、施設使用料に一部使用する。
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Research Products
(1 results)