2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の農山漁村における持続可能な生活経営と女性農業者の情報アクセスに関する研究
Project/Area Number |
24500906
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
粕谷 美砂子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80369446)
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Keywords | 女性農業者 / 生活経営 / ジェンダー / 情報アクセス |
Research Abstract |
2013年度は、第1に、2013年10月と2014年2月の2回、タイ北部チェンライの山岳少数民族アカ族の女性の経済的自立を目的としている食品加工技術支援プロジェクトに参加した。本プロジェクトでは、日本の生活改良普及員が、現地の農産物を活かした食品加工技術及び食品衛生について、継続的に指導を行っている。将来的にはそれを販売し、収入を得ることを目的としている。本研究は、日本の農山漁村の女性農業者を主な対象としているが、本プロジェクトの支援プロセスは、日本の戦後の生活改善普及事業の展開とその方法を活用しているものであること、また、日本の農業の6次産業化との類似点・相違点を把握することが可能であるとの視点から、本研究を遂行するうえで重要である。山岳少数民族の持続可能な生活経営及び情報へのアクセスの困難性とアクセス方法・手段について、現地聞き取り調査を実施中である。 第2に、2014年1月に、京都府生活研究グループの女性農業者に聞き取り調査を実施した。戦後の生活改善普及事業において、グループを組織して生活改善普及活動の拠点とし、生活を改善してきた経緯がある。時代とともに、生活改善(実行)グループ・生活研究グループが取り組む生活課題の内容は変化してきた。この生活研究グループが農業・農村に果たしてきた役割を再確認・再評価する目的で、聞き取り調査を行った。これは、本研究の日本の農山漁村における持続可能な生活経営に関する部分に該当する。役割を整理し、課題を抽出した。 第3に、農業ジェンダー統計に関する研究として、「2010年世界農林業センサス」を用い、ジェンダー統計視点からみる日本の農家の現状を分析した。その結果、調査票の性区分の有無だけでなく、統計結果表においてもジェンダーに敏感な表記の仕方が重要であること、2005年以降農業センサス統計のジェンダー統計としての一定程度の改善を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、日本の農山漁村における持続可能な生活経営と、そのために必要な情報アクセスについて、ジェンダー視点から調査・分析を行う。2013年度は、タイ:チェンライの山岳少数民族アカ族への現地聞き取り調査、京都府生活研究グループ女性農業者への聞き取り調査の実施、「2010年世界農林業センサス」のジェンダー統計視点からの分析を行った。本研究に関連した農業ジェンダー統計の一部を、所属学会において口頭報告(国内、単独)し、書籍(共同)に執筆した。 2012年度時点では、国際的な女性農業者の生活経営の動向及び持続可能性を把握するために、2013年度にロシア:ウラジオストクでの現地調査を予定していたが、先方との日程調整が困難であったため、計画を上記タイでの調査へ変更した。これら研究計画は変更を余儀なくされたが、修正し、概ね順調に進めることができた。 しかしながら、研究の達成度としてやや遅れている点が2つある。一つは、2012年度実施のアンケート調査の集計とまとめの作業がやや遅れている点である。二つには、農業ジェンダー統計研究に関して、「農業センサス」以外の関連政府統計の利用・分析は未着手である点である。これらは2014年度に残された。
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Strategy for Future Research Activity |
女性農業者の生活経営に必要な情報とは何か、情報収集の手段、プロセス等、女性農業者の情報アクセスの現状把握は、男女共同参画社会における女性農業者の地位向上を考えるうえで重要である。また、情報へのアクセスの違いは、女性農業者の主体性の確立や女性農業者の社会参画、地域貢献、家族や地域におけるジェンダー課題と関わっている。この問題意識について検討し、農山漁村における持続可能な生活経営と女性農業者の情報アクセス(情報入手と発信)について考察し、最終年度として本研究課題をまとめる。 具体的には、第1に、2014年度も継続して、タイ及び被災地への聞き取り調査として宮城県南三陸町の生活研究グループへの調査を実施し、分析する。第2に、本研究において実施したアンケート調査及び現地聞き取り調査を分析し、学会報告をし、投稿論文を執筆する。第3に、進捗にやや遅れのあった農業ジェンダー統計に関して、研究を進展・深化させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた、本研究遂行上、調査分析、学会報告準備、投稿論文執筆のための物品費として、パーソナルコンピューターの購入を予定していたが、Windows XPサポート終了や検討機種の品切れなどがあり、機種選定を考慮しており、2014年度に使用を見送った。この他、調査方法の変更により、調査協力者への謝金の支出が予算より少なくなった。 2014年度早期に、パーソナルコンピューターを購入予定である。調査方法を変更したことにより、当初の計画より謝金の支出が少ない。調査旅費に使用する予定である。
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