2012 Fiscal Year Research-status Report
都市街区における路地空間の利用と空間的効果に関する研究
Project/Area Number |
24500929
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
金子 友美 昭和女子大学, 生活科学部, 准教授 (80204569)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 路地空間 / 都市 / 建築計画 / 生活環境 |
Research Abstract |
平成24年度は8月23日から9月6日の15日間フランス・イタリアにおいて現地調査を実施した。【パリのパサージュおよびギャルリー(7事例)】観光地となっているものから地元住民の利用を中心としたもの、同業種が集積したものなど機能の差異が見られた。街路状のものが多いが、複雑な平面構成のものも見られた。【リヨンのトラブール(22事例)】基本的には集合住宅の1階に形成された抜け道空間である。商業施設に転用されている例もあった。中庭空間を伴う。【トリノのガレリア(3事例)】街路が複合的に構成されているもの、中庭状の単一空間のもの、そしてそれらの中間ともとれる2本の通りから構成されるものが見られた。【ミラノのガレリアおよびパッサジッオ(17事例)】有名なヴィットリオ・エマヌエレ2世のガレリアに代表されるように、商業空間となっているものが多い。中心部の事例はほぼ網羅することができた。【ヴェネツィアのソト・ポルテーゴ(12事例)】ソト・ポルテーゴとは門の下という意味と考えられる。その名のとおり、空間はアーチまたは門型の入口をもつ。表通りをつないでいるものや、水路に通じているもの、行き止まりで裏庭的な使われ方をしているもの等が見られた。 調査の計画・準備段階では、南欧(スペイン、南仏、イタリア)を調査候補地として設定していたが、文献等による 事前調査によって対象空間を絞り、また効率よく調査を実施するため上記の5都市において調査を実施した。 調査準備・実施ともに順調に遂行することができた。またパリとリヨンにおいては通訳を伴い関係機関を訪問し、担当者に直接ヒアリングすることができた。特にリヨンのトラブールについては、リヨン市の担当者よりその歴史や現状・市の姿勢についての情報を得られた。現在は調査結果から作図・構成要素の抽出・記述を作成し、分析の基礎資料となるデータベース作成作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、都市のオープンスペースが果たす役割と効果について、現状空間の評価を通して明らかにすることである。対象とするオープンスペースは、街区内に形成された路地空間としている。H24年度の調査は比較的短期間で複数の都市の異なる事例を効率よく調査することができた。ミラノやトリノにおいては、都市中心部の事例はほぼ網羅することができた。ただしその一部の範囲の事例しか調査できなかった都市もある(ヴェネツィア)。ヴェネツィアで調査対象としたソト・ポルテーゴは島全域に分布しており、対象事例全てを網羅するということではなく、ある程度まとまった範囲で緻密に調査を実施することで空間の特徴を把握したいと考えたためである。しかし対象空間は予想以上に数多く、また形状も複雑なものが多いことから、ごく一部の範囲でしか調査を遂行することができなかった。この事例については今後補完調査ができるよう計画したいと考えている。 上記のようにH24年度の研究計画は概ね予定通り進行させることができた。また調査後のまとめについては、作図を中心としたデータベースを作成するための作業を進行中である。これは次の調査計画と並行して進めて行きたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度はオーストリア、チェコ、ドイツを中心とした主に中欧諸国において現地調査を実施したいと考えている。主な調査都市と対象空間は、ウィーンのドゥルヒガング、ザルツブルクのゲトライデガッセ周辺の抜け道、プラハのパサージュ、ベルリンのへーフェ(ホフ)、ミュンヘン・ライプツィヒのパサージュなどである。H24年度同様、大学の夏季休暇を利用して効率よく調査実施できるよう計画したい。また、H24年度の補完調査についても可能であれば実施したいと考えており、夏季休暇に加えて春季にも調査実施を検討していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述H24年度比較的短期間しか現地調査が組めなかったことを考慮し、H25年度は補完調査を含めて複数回の調査を実施したいと考えている。それに伴う旅費・その他(通訳代等)の費用支出が必要である。当初予定していたH25年度研究費と合わせて、H24年度の残額を調査費用に使用していきたい。 またH25年度はデータベース構築用のパソコン環境および分析用ソフトの整備も行いたいと考えている。これは現在進めているH24年度調査の結果が準備でき次第、データベースを構築し、分析方法の検討に入るためである。当初は研究初年度であるH24年度に導入を予定していたが、データベースの構築および分析についてはある程度データが蓄積した状況が必要であることから次年度へ持ち越すことにしたものである。
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