2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500960
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
松井 徳光 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (20211807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 麻里子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助教 (90435321)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 担子菌 / 発酵食品 / 機能性食品 / 黒大豆 / 大豆 |
Research Abstract |
本研究課題の主要な実験内容は、大豆(黒大豆)を発酵する担子菌のスクリーニングを行い、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症を予防する担子菌由来および発酵作用によって生じる抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性および免疫力を高めガンを予防するβ-D-グルカンなどを有する機能性大豆を製造することである。平成24年度の研究成果を下記に示す。 発酵黒大豆の製造は、1日水に浸漬した黒大豆を滅菌したものに227株の担子菌をそれぞれ植菌後、4週間発酵を行った。発酵した黒大豆について抗酸化活性、線溶活性、抗トロンビン活性を測定した結果、スエヒロタケ(NRBC4928)が線溶活性で高い活性を示し、ヤマブシタケ(Ym-2)は抗酸化活性で高い活性を示した。また、マスタケ(W8)は抗トロンビン活性で高値を示し、シイタケ(Sh-5)は抗酸化活性と線溶活性の両方でやや高値を示した。 選択された4株の担子菌について最適な発酵条件を検討するために丸大豆、および丸大豆を大、中、小に挽き割りをしたものを用いて発酵を行った。4週間発酵を行ったものを用いてSDS-PAGE、抗酸化活性(化学発光法、ORAC法)、線溶活性、抗トロンビン活性の測定を行った結果、SDS-PAGEによるタンパク染色バンドの観察から、4株の担子菌それぞれで発酵させた大豆全てにおいて、大豆タンパク質が十分に分解されていることが確認でき、プロテアーゼ活性が高値であることが推察された。また、シイタケ(Sh-5)に関しては顕著な結果が得られなかったものの、スエヒロタケ(NBRC4928)は丸大豆、ヤマブシタケ(Ym-2)は中に挽き割りをしたもの、マスタケ(W8)は小に挽き割りをしたものがそれぞれ高い活性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本応募研究課題は、現在、深刻な問題となっている血栓症およびガンなどの疾病に対して予防効果を示す担子菌を利用した発酵大豆への応用を考え、新規な機能性大豆を開発するものである。現在までに担子菌を用いた大豆の発酵に関する報告はなく新規性があり、種々の薬用効果も期待され、担子菌の発酵能により抗トロンビン活性などの生理活性を有する発酵大豆となり、生活習慣病をはじめ血栓症やガンなどの疾病予防に効果を示す可能性があると考えられた。 そこで、本応募研究課題の主目的である機能性大豆の開発および製品化を行うにあたり、最も適した担子菌を見い出すために、平成24年度は、まず、豆類の代表として黒大豆を選び、227株の担子菌を用いて、スモールスケールで黒大豆における担子菌の生育を試み、大豆で生育した担子菌についてはその根拠となるプロテアーゼ活性を測定し、さらに発酵実験を続け、得られた発酵大豆の生理活性(抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性およびβ-D-グルカン含量)を測定し、有用な担子菌を選択することを計画していた。 しかし、計画したそれぞれの実験に少しずつ予定よりも多くの時間を費やすことになり、詳細なプロテアーゼ活性の測定は行わず、SDS-PAGEとタンパク染色によるタンパク質分解状態の観察からプロテアーゼの活性を判断した。また、β-D-グルカンの測定には至らなかった。 しかしながら、担子菌の発酵によって、抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性を新たに付加させた発酵大豆を得ることができ、本研究に適した担子菌を選択し、平成25年度へつなぐことができたことから、達成度は、おおむね順調に進展しており、良好であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は227株から本応募研究課題に適した担子菌を見出すことを目的として、抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性などの生理活性を新たに付加させた発酵黒大豆をつくり出した4株の担子菌(スエヒロタケ、ヤマブシタケ、マスタケ、シイタケ)を選択することができた。しかしながら、当初に計画していたプロテアーゼ活性の詳細な測定およびβ-D-グルカンの測定が時間の関係で実施できなかった。 そこで、平成25年度は、当初の実験計画に加え、プロテアーゼ活性の測定とβ-D-グルカンの測定後、続けて、下記の実験を行う。 ①平成24年度の実験結果に基づいて、脳血栓や心筋梗塞などの血栓症やガンに対して予防効果を示す種々の生理活性物質(抗トロンビン活性物質、線溶活性物質、抗酸化活性物質、β-D-グルカンなど)を豊富に含む可能性が示唆された発酵大豆について、主な食品成分(有機酸、アミノ酸、糖質、核酸、ビタミン、食物繊維など)を調べ、さらに、これら成分の生産のための最適条件(培養温度、培養期間など)の検討を行う。 ②上記①の結果、優れていると判断された担子菌についてスケールアップした条件下で大豆を発酵させ、平成24年度で検討した生理活性(抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性およびβ-D-グルカン含量)を測定する。なお、抗トロンビン活性はコアグロメーターによるフィブリン凝固時間(TT時間)の測定法、線溶活性はフィブリン平板法、抗酸化活性は化学発光法、β-D-グルカンはβ-1,3-D-グルカナーゼ処理によるHPLC法を用いる。 以上の実験から、本応募研究課題で提案した医食同源・予防医学の観点に立ち、毎日の食生活から心筋梗塞や脳血栓などの血栓症やガンを予防することが期待できる大豆発酵食品を安定に製造することが可能になると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本応募研究課題遂行の主要な実験項目は、大豆(黒大豆を含む)を発酵する担子菌のスクリーニング、担子菌および発酵大豆におけるプロテアーゼなどの酵素活性の測定、発酵大豆における抗トロンビン活性や線溶活性、抗酸化活性などの生理活性の測定、β-D-グルカンの検出、発酵大豆の有機酸、アミノ酸、糖質、核酸、ビタミン、食物繊維などの食品成分の分析等であり、これらの実験を通じて、血栓症およびガン予防に効果を示す機能性大豆の開発を行うことを計画している。 平成24年度において、発酵大豆中の遊離アミノ酸をはじめ種々の有効成分の分離・精製・検出に必要な高速液体クロマトグラフィーシステム(HPLC)のポンプを設備備品費として購入した。その他の設備備品は所属研究機関に設置され利用に供されている。 したがって、平成25年度において必要な研究費は、担子菌の培養に必要な試薬(培地)、抗トロンビン活性物質、線溶活性物質、抗酸化活性物質などの生理活性測定用試薬、β-D-グルカンの検出用試薬、プロテアーゼなどの酵素活性の測定用試薬、有機酸、アミノ酸、糖質、核酸、ビタミン、食物繊維などの成分分析用試薬、大豆(黒大豆を含む)などの食品素材およびガラス器具などの器材の購入に必要な消耗品費に充てられる。 本応募研究課題は、スモールスケールの実験とラージスケールでの実験を行うが、それぞれの実験においても発酵過程中に発酵大豆を定期的にサンプリングし、上記に述べた生理活性等を測定するため、年度ごとに試薬やガラス器具が必要となり、これまでの研究の中で消耗品として使用してきた研究費から考えて、平成25年度で申請する研究経費には、十分な妥当性・必要性・積算根拠があると判断する。
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Research Products
(11 results)