2014 Fiscal Year Research-status Report
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24500960
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
松井 徳光 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (20211807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 麻里子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助教 (90435321) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 担子菌 / 発酵食品 / 機能性食品 / 黒大豆 / 大豆 / 味噌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本応募研究課題の主要な実験内容は、大豆(黒大豆)を発酵する担子菌のスクリーニングを行い、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症を予防する担子菌由来および発酵作用によって生じる抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性などを有する機能性発酵黒大豆を製造することである。 平成24年度および25年度において、発酵黒大豆の製造に適した担子菌のスクリーニングを行うと共に、発酵材料としての黒大豆の形状(小、中、大、丸大豆)について調べた結果、マスタケ(W8)は小、ヤマブシタケ(Ym-2)は中、シイタケ(Sh-1)は大に挽き割りをしたもの、スエヒロタケ(NBRC4928)は丸大豆で、抗酸化活性(化学発光法、ORAC法)、線溶活性(フィブリン平板法)、抗トロンビン活性(トロンビン時間法)の全てにおいて最も高い活性を示した。一方、適度な発酵状態が望まれると予測されたイソフラボン濃度の測定では、ヤマブシタケは中、スエヒロタケは丸大豆で最も高値を示した。核酸濃度の測定ではマスタケは大、ヤマブシタケは小、シイタケは丸大豆、スエヒロタケは小で、キノコのうま味を示す核酸のグアニル酸(GMP)の濃度が最も高い値を示した。よって、ヤマブシタケは小さめの粒度、シイタケは大きめの粒度で、生理活性やイソフラボン濃度、核酸濃度が高くなることが判明した。また、マウスを用い、発酵黒大豆の安全性試験の結果から、担子菌による発酵黒大豆の製造条件を確立すると共に、発酵することで新たな機能性が付加され、さらに発酵黒大豆が安全であることを明らかにした。 平成26年度においては、食品の応用として、上記の担子菌と黒大豆を用いた味噌の製造を行った結果、スエヒロタケにおいて抗酸化活性が著しく高値を示す味噌を作成することができた。さらに、アレルゲンタンパク質の低下も観察され、機能性を有する黒大豆味噌の試作に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本応募研究課題は、現在、深刻な問題となっている血栓症およびガンなどの疾病に対して予防効果を示す担子菌を利用した発酵黒大豆への応用を考え、新規な機能性黒大豆を開発するものである。現在までに担子菌を用いた黒大豆の発酵に関する報告はなく新規性があり、種々の薬用効果も期待され、担子菌の発酵能により抗トロンビン活性などの生理活性を有する発酵黒大豆となり、生活習慣病をはじめ血栓症やガンなどの疾病予防に効果を示す可能性があると考えられた。 そこで、本応募研究課題の主目的である機能性大豆の開発および製品化を行うにあたり、最も適した担子菌を見出すために、平成24年度は、まず、豆類の代表として黒大豆を選び、227株の担子菌を用いて、スモールスケールで黒大豆における担子菌の生育を試み、黒大豆で生育した担子菌についてはその根拠となるプロテアーゼ活性を測定し、さらに発酵実験を続け、得られた発酵黒大豆の生理活性(抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性など)を測定し、有用な担子菌を選択した。プロテアーゼ活性はSDS-PAGEとタンパク質染色によるタンパク質分解状態の観察から判断した。 平成25年度は、平成24年度に選択された担子菌を用いて、ラージスケールで発酵条件の確立を行うことを中心に研究を実施し、平成24年度に得られた結果の再現性を実証する結果となった。さらに、担子菌で発酵させた発酵黒大豆について、マウスを用いた安全性試験を行ったところ、安全性に問題がないことも明らかとなった。 実用化を念頭に計画の一部を変更し、平成27年度に予定していた安全性試験を行ったが、本研究で調製した発酵黒大豆の安全性が確認でき、本研究を不安なく推進していくことが可能となり、平成26年度では、本研究の応用としての味噌の製造へつなぐことができたことから、達成度はおおむね順調に進展しており、良好であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は227株から本応募研究課題に適した担子菌を見出すことを目的として、抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性などの生理活性を新たに付加させた発酵黒大豆をつくり出した4株の担子菌(スエヒロタケ、ヤマブシタケ、マスタケ、シイタケ)を選択することができた。また、発酵による黒大豆タンパク質の分解に関与するプロテアーゼについての知見も得られ、平成25年度は、平成24年度の実験結果に基づいて、脳血栓や心筋梗塞などの血栓症やガンに対して予防効果を示す種々の生理活性(線溶活性、抗酸化活性など)を豊富に含む可能性が示唆された発酵黒大豆について、主な食品成分(アミノ酸、核酸など)を調べ、さらに、マウスを用いた安全性試験を行い、本研究で得られた発酵黒大豆の安全性が確認できた。平成26年度は応用として、通常の味噌製造に用いられるコウジカビの代わりに平成25年度の研究で選択された担子菌を用い、また大豆の代わりに黒大豆を用い、味噌製造を試みた。その結果、独特のうま味を呈し、抗酸化活性が著しく高値を示し、さらにアレルゲンタンパク質が低減化された味噌を製造することが可能であった。 そこで、平成27年度は、平成26年度に調製した黒大豆味噌についての成分分析を行うと共に、機能性についても明らかにする。 ①担子菌の発酵能によって製造した黒大豆味噌の成分(遊離アミノ酸、核酸、有機酸など)の分析を行う。 ②担子菌の発酵能によって製造した黒大豆味噌の抗酸化活性のみならず、機能性(線溶活性、抗トロンビン活性)について測定する。 以上の実験から、本応募研究課題で提案した医食同源・予防医学の観点に立ち、毎日の食生活から心筋梗塞や脳血栓などの血栓症やガンを予防することが期待できる黒大豆発酵食品を安定に製造することが可能であると考えている。
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Research Products
(14 results)