2012 Fiscal Year Research-status Report
コーヒーによるステロイド代謝調節と生活習慣病予防との相関
Project/Area Number |
24500996
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田村 悦臣 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (50201629)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コーヒー / エストロゲン / 生活習慣病 / 大腸がん / 肥満 / 脂肪細胞 / 硫酸転移酵素 / SULT1E1 |
Research Abstract |
エストロゲンの硫酸抱合による不活性化反応は、細胞内活性型エストロゲン濃度を調節する重要な生体反応である。この反応に関わる酵素タンパク質として、硫酸転移酵素(SULT1E1),ステロイドスルファターゼ(STS)及びABCトランスポーターであるBCRPが知られている。ヒト大腸がんCaco-2細胞において、これら酵素タンパク質の発現に対してコーヒーが影響を与えることを見出している。コーヒーの大腸がん予防効果との相関を明らかにするため、24年度は、コーヒーによる遺伝子発現調節機構の解析を行った。その結果、コーヒーによるSULT1E1遺伝子発現の抑制は転写因子Sp1阻害剤ミトラマイシン(Mit)により解除されたことから、コーヒーはSp1を活性化にSULT1E1遺伝子発現を抑制している可能性が示唆された。さらに、Mit単独ではSULT1E1遺伝子発現は増加したことから、通常でも、Sp1により発現抑制が起きていることが示唆された。また、SULT1E1遺伝子発現のコーヒーによる調節メカニズムを詳細に明らかにするため、SULT1E1遺伝子の発現調節領域3.6kbをルシフェラーゼ遺伝子上流に導入した発現ベクターを構築し、コーヒーの発現調節にどの領域が関わっているかについて解析をすすめている。また、BCRP遺伝子のコーヒー成分による活性化が転写因子NF-kBによるものであることを、コーヒー依存に核内へ蓄積することを、免疫学的に明らかにした。 さらに、コーヒーの糖尿病予防効果の分子基盤を明らかにするため、マウス脂肪前駆細胞3T3 L1細胞を用いて、脂肪細胞への分化誘導に伴う分化マーカーの発現誘導に対し、コーヒー添加の効果を見たところ、分化のマスター遺伝子である転写因子PPARγの発現が抑制され、細胞への脂肪の蓄積も抑制されることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経系細胞や前立腺がんでのステロイド代謝に対するコーヒー成分の効果に関しても進んでいる。さらに、グルココルチコイド代謝に関わる酵素HSD11B1/2に対するコーヒーの効果にては、神経系、脂肪細胞で解析を進めた。また、コーヒーの脂肪細胞分化への効果に関しては、今回新たに研究対象に加えたテーマであるが、近年、コーヒーの2型糖尿病予防効果が一般にも知られるようになり、特定保健用食品なども販売される現状から、安全性評価という観点もふまえ、その分子基盤の解明は重要であると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度においては、細胞培養の実験において、原因は不明だが、うまく増殖しない場合が複数回あり、予定通りの実験ができなかった。その結果、血清の購入などの所期の研究費の執行ができなかった。次年度は、エストロゲン代謝におけるコーヒーの効果につて、発現ベクターを用いた作用メカニズムの解析、コーヒーからの活性成分の単離・精製、などを目指す。また、グルココルチコイド代謝に関しては、各種細胞におけるHSD11B1/2遺伝子発現に対するコーヒーの効果を、DNAのメチルによるepigeneticな制御の観点から解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養に用いる血清の購入に充てる。
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Research Products
(8 results)