2013 Fiscal Year Research-status Report
コーヒーによるステロイド代謝調節と生活習慣病予防との相関
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24500996
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田村 悦臣 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (50201629)
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Keywords | コーヒー / エストロゲン / 生活習慣病 / 大腸がん / 肥満 / 脂肪細胞 / miRNA / ras遺伝子 |
Research Abstract |
疫学的研究から、習慣的なコーヒー摂取により認知症発症のリスクが低減することが示されている。神経ステロイドは神経系細胞で合成されるステロイド類の総称であるが、神経ステロイドの合成量と認知症発症との逆相関性が指摘されている。そこで、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて、神経ステロイド生合成系酵素遺伝子の発現に対するコーヒーの影響を検討した。その結果、最も活性の高い神経ステロイドであるallo-pregnanolone生成に関与する酵素AKR1C1, AKR1C3の遺伝子発現が2.5%コーヒー添加で約3倍に上昇することが明らかとなった。また、この誘導成分はコーヒーの焙煎成分であった。今回見出したAKR1C1/3遺伝子発現に対する効果が、認知症予防効果の一因となっている可能性が示唆された。さらに、ヒトグリア細胞種由来GI-1細胞において、ストレスホルモン活性を持つデキサメタゾンにより、神経ステロイド合成系酵素遺伝子(StAR, CYP11A1, HSD3B1)の発現抑制が起こることを見出した。その結果、産生される神経ステロイド(pregnenolone)の減少が確認された。このことは、生活習慣による慢性的なストレスが鬱や認知症のリスク因子であることと関係する可能性がある。 また、昨年度より検討しているコーヒーの肥満予防効果の研究では、脂肪細胞への分化マーカーPPARγ発現量に対する抑制効果が、分化開始後0~2日目にコーヒーを添加した場合のみ見られたことから、コーヒーは分化の早い段階に作用していることが示唆された。さらに、この早い段階での効果は、分化誘導に伴う細胞周期のS期への移行を抑制するものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コーヒーの生活習慣病予防効果のうち、25年度は、認知症および肥満(糖尿病のリスク因子)予防に関し、その分子メカニズムについて、部分的にではあるが解明できた。当初の目的であった、エストロゲンやグルココルチコイド代謝に対する効果に関しては、現在、大腸がん、前立腺がん、乳がんのモデル細胞を用いて検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られたコーヒーの効果は、カフェインやクロロゲン酸などの、いわゆるコーヒー主成分にはなく、220℃、10分以上の焙煎により生成する成分であった。作用機序を明らかにしていく上で、その成分の同定は不可欠である。そこで、コーヒー中の活性成分の同定を目的として、成分の分離・解析を進める。具体的には、生豆および焙煎したコーヒー豆の抽出液を試料とし、分取HPLCにより分画後、焙煎で現われる成分に着目して、それぞれの活性を指標として精製を進める。精製法の1例を挙げると、脂肪細胞分化抑制効果については、転写因子PPARγのプロモーター・ルシフェラーゼアッセイ系を用いて、転写抑制を指標として分離を進める。単離できた成分については構造決定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
器具および試薬の使用量が予定していたものよりも少なかったため。 新たに、活性成分の分離・同定の実験を開始する予定であるので、そのための、機器、試薬等の購入に充てる。
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Research Products
(13 results)