2012 Fiscal Year Research-status Report
小学生を対象とした科学的な論証スキルを育成するカリキュラム開発
Project/Area Number |
24501106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山本 智一 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (70584572)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 科学教育 / 論証スキル |
Research Abstract |
平成24年度は,科学的な論証スキルを育成するカリキュラムを開発する条件整備の段階であった。ここでは3つのフェーズによって研究を行った。 第1フェーズは理論的検討と実態調査であった。国内外のアーギュメント研究に関する最新の研究から,論証スキル育成の問題点を明らかにするとともに,研究協力者が勤務する附属小学校と公立小学校における調査を行った。小学生による科学的な論証の生成事例について,先行研究と実態調査をもとに理論的検討を行った。さらにAustralian Science Education Research Association 2012に参加・発表を行った。 第2フェーズはカリキュラム試案の開発であった。理科の教師教育のために開発したカリキュラムを発展させ,小学校における実践研究の知見を加えながら,論証スキルのカリキュラム試案を作成し,附属小学校の理科授業3クラスに導入した。また,授業で議論を行う論題設定のために,小学校の授業参観,公開研究会や日本理科教育学会全国大会(鹿児島)等から,当該単元で活用する知識・情報リソースを調査・収集した。 続いて第3フェーズでカリキュラム試案を導入した実践授業を行った。児童の学習前後において,論証スキルに有意な変容が見られるかどうかを質問紙によって調査した。授業は研究協力者が実施した。授業をビデオカメラ等で記録し,画像・映像記録・学習履歴資料等を蓄積するとともに,学習中に利用したワークシートとビデオを分析した。 研究の成果については,日本科学教育学会年会(東京)において,先行研究から得たカリキュラムの指針を公表するとともに、日本理科教育学会『理科教育学研究』に学術論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学生を対象とした科学的な論証スキルを育成するカリキュラム開発について,次の3点からおおむね順調であると判断した。 第1に,情報収集の面からは,小学校現場の授業を参観したり,教育研究発表会に参加したりして,論証スキルを向上させるための授業の要件を調査するとともに,それらを授業に投入するにあたって,デザイン研究という手法について,学習科学の知見からの情報を得ることができた。 第2に,小学生に論証スキルを育成するカリキュラムについて,小学校5年生の「ふりこの運動」の単元で,カリキュラムの試行を行うことができ,次年度への向けてのカリキュラム改善の課題を見出すことができた。 第3に,小学生による科学的な論証の生成事例について,実践研究から得られた知見を国際学会,国内学会で各1件ずつ,発表するとともに,日本理科教育学会『理科教育学研究』に学術論文として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,科学的な論証スキルを育成するカリキュラムを開発する実践段階として,前年度に実施した3つのフェーズに加え,さらに次の第4から第6の3つのフェーズによって研究を行う予定である。 第4フェーズとして,前年度のカリキュラム試案の評価・改善を行うとともに,A,B領域の新たな単元での教材開発を行う。前年度に集積したビデオ記録,学習履歴等の収集データを多角的に分析する。また,カリキュラム試案の評価結果から,問題点を抽出する。さらにこれと並行して,国内外の新たな研究動向を調査するとともに,各地の小・中・高等学校の公開研究会,自然史博物館,科学博物館や理科・科学教育の学会において,研究協力者と連携しながら,当該単元で活用する知識・情報リソースを調査・収集し,教材の修正を行う。また,小学校の教員志望の学生を対象とした大学授業において,小学校児童への科学的な論証指導を視野に入れた教材開発や評価方法開発を試行的に行う。 第5フェーズでは,改善版カリキュラムの予備的調査として附属小学校の理科授業に短期的に導入し,カリキュラムの改善部分についての評価を行う。ここでは附属小学校の理科授業に数回程度,改善版カリキュラムを取り入れる。授業は研究協力者が行うこととし,授業場面の記録ビデオ等を分析し,改善に向けての補足的な知識・情報リソースを収集する。 第6フェーズでは改善版カリキュラムを本格的に導入した実践授業を実施する。実践授業は研究協力者が実施するとともに,画像・映像記録のほか,学習履歴データ等を蓄積する。 これらの取り組みの成果として,カリキュラム開発に関しては「科学教育研究」に学術論文を投稿する。科学的な論証スキルの評価に関しては,International Conference on Computers in Education(バリ)において,公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品としては,小学校での教材開発を行うために,当該単元の実験器具類,科学教育研究・教師教育研究の関係図書,実践授業記録用のデジタルカメラ,メディア,ファイル類,発表用のプロジェクタやタブレット端末が必要である。昨年度からの繰越額14,597円を含め,計414,597円を予定している。国内旅費関連では,資料収集において,神戸大学附属小学校での授業実践調査に年間4回,国立科学博物館や申請者が勤務する九州及び研究協力者が授業実践を行う近畿の自然史・科学博物館に年間3回程度,日本理科教育学会九州支部大会(長崎),同学会全国大会(札幌:実践授業を行う研究協力者と共に)での情報収集を予定している。さらに研究打ち合わせとして,神戸大学に年間3回を計画している(各40~150千円× 13=計950千円)。また,国外旅費関連では,ICCE(バリ)における成果発表旅費として300千円×1回を予定している。これらを含め,1,250,000円を計上する。謝金については,授業記録の書き起こしやアンケート調査等のデータ分析,映像の編集として,50,000円を予定している。その他としては,翻訳,学会参加登録費及び成果物の印刷費などとして100,000円の使用を予定している。
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