2012 Fiscal Year Research-status Report
大学授業の改善‐学生による授業コンサルティングの導入と訓練プログラムの開発‐
Project/Area Number |
24501210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
井上 史子 帝京大学, 高等教育開発センター, 准教授 (80589945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土持ゲーリー 法一 帝京大学, 高等教育開発センター, 教授 (00422064)
沖 裕貴 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (50290226)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(アメリカ、カナダ) / 国際情報交換(アメリカ、カナダ、オランダ) |
Research Abstract |
今年度は、試行的な訓練プログラムの開発と実施を行った。研究代表者(井上)及び研究分担者(土持)が所属する帝京大学では、平成23年度より学生による授業コンサルティング(Students Consulting on Teaching:SCOT)を本格導入し、半年に渡る訓練プログラムを開発するとともに、プログラムの一環として学内インターンシップを実施した。訓練の成果は研修への参加状況とポートフォリオによって評価し、最終的には平成23年度は15名の訓練生の中から6名、平成24年度は23名の訓練生の中から3名を正式採用とした(名称:SCOTシニア)。平成24年度は、全国の教員が参加した大学セミナーハウスでのシラバス作成研修においてコンサルティングを担当したり、全国のファカルティ・ディベロッパー組織である日本高等教育開発協会総会において、コンサルティングのワークショップを行った。学内では、平成23年度は5名、平成24年度は12名の教員に対して授業コンサルティングを実施した。各教員からは、満足度や学生の対応について、概ね高評価を得ることができた。 なお、訓練プログラムの開発にあたっては、アメリカのブリガムヤング大学とユタ・バレー大学を平成24年10月に訪問し、それぞれのSCOTプログラム担当者および代表学生(コーディネータ)に聞き取り調査を行った。ブリガムヤング大学においては1年生からSCOTプログラムに参加可能であるが、毎年多くの希望者があるため学力等により選抜を行っているとのことであった。ユタ・バレー大学とは、今後の訓練プログラムの共同実施など、連携に向けた話し合いも行うことができた。 研究分担者(沖)は、所属大学(立命館大学)において、引き続きSCOTプログラム導入の可能性を探るとともに、既存の学生参画型FDにおいて実施されている参加学生に対する研修のさらなる改善を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、組織的FD活動の実質化を目指し、①「学生による授業コンサルティング(Students Consulting on Teaching:SCOT)」の導入、②授業コンサルティングを担当する学生の訓練プログラムの開発、③その効果検証手法についての実証的な研究を行うことにある。 ①については、研究代表者が所属する帝京大学八王子キャンパスにおいて平成23年度より正式導入されている。また、他キャンパスにおいても導入が検討されており、大学全体として本プログラムへの理解が広まりつつある。さらに、複数の大学よりSCOTプログラムについて問い合わせがあり、学生が実質的にFDに参加する活動として徐々に注目が集まってきている。 ②については、アメリカの事例をもとに平成23年度より試行開発した訓練プログラムを実施しているが、受講した学生の満足度は概ね高い。しかし全7回の研修では実際に授業コンサルティングを行うには十分でないとの学生側の意見もあり、平成24年度は正式にSCOTとして採用された学生(SCOTシニア)を中心に、隔週での自主研修を企画・実施させている。 ③SCOT学生側、コンサルティングを受けた教員側に関する効果検証のため、インタビューやアンケートによる調査(満足度、能力の習得、習得した能力の活用)を行った。また、学生には、「研修ポートフォリオ(SCOTポートフォリオ)」を作成させることにより、自己省察をもとにした効果検証も行っている。教員側については、授業にどのようにコンサルティングが反映されたかについて「ティーチング・ポートフォリオ」の中に記述するという形での効果検証を行っている。さらに、今年度より八王子キャンパスにおける授業アンケートの改訂を開始しており、学生の学習の質向上に関する質問項目へと改訂することにより、本プログラムの効果についても検証可能とする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究代表者、研究分担者それぞれの大学において、「学生募集ー参加学生の訓練ー学生による授業コンサルティングの実施ー効果検証」といった一連の活動を引き続き行う。プログラムの効果については、引き続き、①訓練プログラムの妥当性、②学生が教育改善に参画することによる学生側への教育効果、③コンサルティングを受けた教員の授業改善の状況等について検証を行う予定である。年度末には海外研究者等を招聘しての中間報告会を実施するとともに、研究の進捗にあわせ、適宜、学協会等で報告・発表を行う。具体的な取り組みは以下の通りである。 帝京大学では、プログラム導入が始まって3年目となり、一連の活動のより一層の定着を図ることを目指す。研究分担者(沖)が所属する立命館大学においては、プログラム導入に向けた取り組みを引き続き行っていく予定である。 参加した学生に対するプログラムの効果検証については、SCOTを経験した学生の就職状況や卒業後の様子についての追跡調査も検討する予定である。また、教員側に対しては、引き続き「ティーチング・ポートフォリオ」を通じての自己省察による授業改善への効果を検証する。さらに、授業アンケートの改訂も進めていく予定である。 中間報告会は、アメリカのユタバレー大学、ブリガムヤング大学のSCOT担当者および学生を招聘し、帝京大学においてシンポジウムなどの形で実施することを企画している。また、学協会等においても積極的に本プログラムについて発表を行っていく。 研究の進捗状況については、帝京大学高等教育開発センターのホームページにおいて、積極的に情報発信を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・研究代表者、研究分担者による学協会への参加および打ち合わせ会議に関する経費等 ・本研究に関して海外の連携する大学の研究者等の招聘に関わる経費 ・プログラムの実施および運営に関わる消耗品や事務的経費等 ・成果発表のための学会誌等への投稿に関わる経費
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