2013 Fiscal Year Research-status Report
大学授業の改善‐学生による授業コンサルティングの導入と訓練プログラムの開発‐
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24501210
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
井上 史子 帝京大学, 高等教育開発センター, 教授 (80589945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土持 ゲーリー・法一 帝京大学, 高等教育開発センター, 教授 (00422064)
沖 裕貴 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (50290226)
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Keywords | ファカルティ・ディベロップメント / Student Engagement / 正課外活動 / 学習する組織 / 汎用的技能 |
Research Abstract |
平成25年度は、1)研究代表者、研究分担者それぞれの大学において「学生募集‐参加学生の訓練‐学生による授業コンサルティングの試行実施‐効果検証」といった一連の活動を行うこと、2)成果については、①訓練プログラムの妥当性、②学生が教育改善に参画するよる学生側への教育効果について検証を行うこと、③年度末には中間報告会を実施するとともに学協会等で報告・発表を行うことの3点を目標とした。 1)の成果:研究代表者が所属する大学ではこの活動を行った。募集に関しては、プログラムの性質より、広く公募するよりも意欲のある学生の中から適正を見極めて採用することの有効性が確認された。訓練についても、より実践的なものが必要なことが明らかになってきており、次年度以降はプログラムに参加する学生の意見も取り入れながら開発を行いたい。 2)の成果:①訓練に参加した学生に事後アンケートを実施したところ、概ね妥当であるとの評価を得ることができた。②プログラムに参加した学生に汎用的技能の習得に関する質問紙調査を行ったところ、「責任感」「傾聴力」「緻密さ」といった点で成果があったとの回答があった。また、今年度卒業する参加学生の修了ポートフォリオを作成させたところ、その記述内容からも上記に関する能力の習得が就職活動やその他の学業においても役立ったとの成果を読み取ることができた。 3)の成果:①平成25年度末に中間報告会を兼ねた国際FDシンポジウム(平成26年3月11日)を開催した。これは、交流協定を締結したユタバレー大学FDセンターの教員とSCOT学生、SCOTプログラムを導入しているブリガムヤング大学のSCOT学生を招聘して開催し、80名を超える参加者があった。 ②平成25年度高等教育学会(東北大学)および大学教育研究フォーラム(京都大学)において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①SCOTプログラムが大学の組織的FD活動の一環として機能し始めていること。試行的に導入した帝京大学においては、授業改善などに資する活動としての理解が学内に定着してきており、教員による利用形態も日本の大学に即した形に多様化してきている。 ②日本の私立大学に適した形でのプログラムの導入が進んでいること。アメリカで開発されたプログラムではあるが、クラス規模の大きさや授業コマ数の多い学生の履修状況などを踏まえた形でプログラムの修正を行った。たとえば、アメリカのプログラムではSCOTと呼ばれる学生は一段階のみであるが、帝京大学では「シニア」と「トレーニー」と呼ばれる二段階システムを導入し、技能の修得状況に応じてコンサルティングを担当できる学生を決定している。これにより、教員からのプログラムに対する信頼も増しており、導入がスムーズに進んだ大きな要因となっている。また、このシステムはアメリカの大学からも評価されており、採用したいとの意見も出ている。 ③国内でSCOTプログラム導入への期待が高まっていること。学生によるFD活動など、日本の大学においてもFD活動に学生を参加させる動きが活発であるが、多くの大学ではどのように組織的に学生を関与させるかに苦慮している現状がある。帝京大学では高等教育開発センターのFD活動としてプログラムが位置づけられており、コミュニケーションや教授・学習に関するトレーニングについても学生の汎用的技能を高めることに繋がっており、本方式の導入を希望する大学が増えてきている。 ④学生による訓練プログラムの開発が進んでいること。高等教育開発センターが準備したトレーニングプログラムのみならず、実際にコンサルティングなどを経験した学生達自身が、自主研修といった形でより実践的なトレーニング開発を行っている。たとえば、授業観察レポートの書き方や面談のためのロールプレイなどである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、研究代表者の大学を中心に、「学生募集‐参加学生の訓練‐学生による授業コンサルティングの実施‐効果検証」といった一連の活動のモデル化を図るとともに、研究成果について検証を行う。最終報告書を作成するとともに、研究の進捗にあわせ、学協会等で報告・発表を行う。 1)授業コンサルティングを受けた教員及びその授業を受講している学生に対し、学生による授業コンサルティングの効果について調査を行う。この調査には、当初は北米で開発された学生調査を改訂して用いる予定であったが、2年間の研究より、本プログラムについてはインタビューやポートフォリオといった質的調査も必要であることが判明していることから、二つを組み合わせて実施する予定である。 2)本研究全体の第三者評価は、平成25年度よりSCOTプログラムを介して協定を結んだユタバレー大学(アメリカ)のFDセンターに所属する所員等にも協力を依頼する。また、国内のみならず海外のFDに関わる会議等(ICED、HETL-SoTE)においても成果を発表し、国際的な視野に立って評価を得る予定である。 3)研究終了時には最終報告書をまとめ、研究成果について広く周知を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・予定されていた国際FDシンポジウムおよび勉強会を当該年度の3月に実施したため、経費の支出が年度内に間に合わなかった。 ・本研究に関わる学会報告を当該年度の3月に開催された学会(2014年3月18日、19日)で行ったため、経費の支出が年度内に間に合わなかった。 ①2014年3月11日、ユタバレーFCTE・帝京大学CTL交流協定締結記念国際FDシンポジウム、②2014年3月12~13日、ユタバレー大学・ブリガムヤング大学・帝京大学SCOT学生による共同勉強会、③2014年3月18~19日、第20回大学教育研究フォーラム(於 京都大学吉田キャンパス)、題目:「学びあう集団・組織の構築~学生の能動的関与が促す組織的FD~」、発表者:井上史子、③最終成果物としての報告書を作成、④国際学会にてユタバレー大学・ブリガムヤング大学との共同発表を予定
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