2012 Fiscal Year Research-status Report
ビキニ被災情報の国際的伝達と各国の原子力開発への影響
Project/Area Number |
24501242
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 正勝 東京工業大学, その他部局等, 名誉教授 (20106959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビキニ事件 / 西脇安 / ヨーロッパ / ラッセル・アインシュタイン宣言 |
Research Abstract |
1954年3月のビキニ環礁における米国の水爆実験によって第五福竜丸の乗組員が放射線被害をこうむった。その実態は自らも調査に加わった当時大阪市立医科大学(大阪市立大学医学部の前身)助教授だった西脇安(1918年から2011年)によって欧州に伝えられた。本年度は、この年の4か月に及ぶこの活動を再現することに重点を置き、大阪の自宅に残された資料から、欧州各国での講演とその反響の再現を行った。当時の新聞の切り抜き記事は、フランス語、オランダ語、ドイツ語、ノルウェー語、デンマーク語などで書かれているため、それらを翻訳した結果、議会での講演などが行われた英国についで、ドイツでの反響が大きかったことが明らかになった。また、新たな発見として、オランダの科学史研究者から、オランダの医学及び科学者団体の雑誌に西脇の英文論文が掲載されていた事実が知らされた。各国での講演は、当時の新聞記事の記述から、ほぼ同一の英文原稿で行われたことが推定できた。 西脇安と共に渡欧した米国人の元妻のジェーン西脇氏にも、ご子息を通じて渡欧の日程などの詳細を問い合わせ、有用な情報が得られた。 欧州訪問には約200万円の費用が募金で準備されたとされる。関係者へのインタビューによって、その主な寄付元が、森下仁丹などの大阪の地元の大手企業やキリスト教会系の婦人団体であったことが明らかになった。 西脇は1960年代には米国の原子力潜水艦の日本寄港に対して容認する証言を国会で行ったことが知られるが、米国立公文書館の国務省関係資料から、西脇がその当時英国を訪問した際に、英国駐在の米国大使館を訪れて、係官に原子力潜水艦からの放射性物質排出に関する情報の公表を要請していたことなどが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料整理については、大阪の西脇宅にあったものについては、整理をほぼ終えて一部の目録を作成した。 国内関係者への聞き取りは、大阪周辺についてはほぼ完了した。 5月にウィーン大学で行われたワークショップには、海外共同研究者に出席を願い、国際的交流と海外研究者とのつながりの手掛かりを得た。 ケンブリッジ大学のロートブラット文書については、資料の整理が予定より遅れているとのことであったため、次年度に調査を行うことにした。米国国立公文書館での調査を行い、有用な資料を入手することができた。 1954年に欧州各国を西脇安とともに訪問したジェーン元夫人へのインタヴューを、大阪在住のご子息を通じて行った。 以上の研究の成果をまとめ、関係学会で2回の口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
大阪の資料の整理と目録化をさらに推進するとともに、ウィーンの資料の整理と目録化を進める。西脇安のご子息へのインタビューなど、国内の関係者への聞き取りを進める。 これまでの調査結果を踏まえて、関係学会で研究発表を行う。また7月末に英国マンチェスターで開催される科学史国際会議で、口頭発表を行う。これらを踏まえて学術雑誌への投稿論文を用意する。 国際会議後にケンブリッジ大学チャーチル・カレッジのロートブラット文書など英国その他の資料を調査する。また、米国オレゴン州立大学のライナス・ポーリング文書を調査し、西脇のカリフォルニア工科大学滞在中の活動について調べる。 東京工業大学博物館への文書収納を進め、一般への研究結果の公開普及のため、西脇夫妻訪欧60周年に当たる2014年に同館で特別展示を行う準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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Research Products
(2 results)