2013 Fiscal Year Research-status Report
ビキニ被災情報の国際的伝達と各国の原子力開発への影響
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24501242
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 正勝 東京工業大学, その他部局等, 名誉教授 (20106959)
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Keywords | ビキニ / 水爆実験 / 日本 / ヨーロッパ / 西脇安 |
Research Abstract |
1954年3月のビキニ環礁における米国の水爆実験によって第五福竜丸の乗組員が放射線被害をこうむった。その実態は自らも調査に加わった当時大阪市立医科大学(大阪市立大学医学部の前身)助教授だった西脇安(1918年から2011年)によって欧州に伝えられた。本年度は、昨年度に大阪の資料から再構成された4か月間の欧州訪問の過程を、海外の資料で確認した。 西脇の履歴書では、1954年10月に英国議会で講演し、BBC放送でラジオ放送されたとされていた。議会の記録には講演当日の記載はなかったものの、翌年の1955年3月11日の労働党のディビス議員の議会発言に、西脇報告に関する言及があることが判明した。また、当時、議会の発言が放送される慣習はまだなく、BBC文書館に問い合わせた結果、"At Home and Abroad"という番組の中で、10月22日に西脇が登場し、"Japanese Victims of Atomic Radiation" というテーマで報告をしたことが分かった。講演内容は「リスナー」誌に掲載され、読者からの反応もあったことが明らかになった。 オランダのドルトレヒトでも9月6日に講演が行われていたことが、Medisch Contact誌の講演記事から明らかになった。これはユトレヒト大学の大学院生からの情報で判明した。また、西ベルリンのノイケルンの講演が掲載された「エス・オー・エス」紙は、西ドイツ共産党の機関紙であることが、海外研究協力者の調査で明らかになった。また、ウィーンでの講演が掲載されたVOLKSSTIMME(人民の声)紙は、オーストリア共産党の日刊紙であったことも判明した。 西脇とロートブラットのリエージュの放射線生物学国際会議での出会いについて、ロートブラット自身が語っていることを大英博物館のテープ記録で確認できたが、日にちが会議の実際の期間と一致していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は7月末にイギリスのマンチェスターで国際科学史会議が開催され、口頭発表を行うとともに、ロンドン、ケンブリッジなどで資料収集を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1959年に西脇安は米国カリフォルニア工科大学のライナス・ポーリングに招請を受けて、家族とともに渡米した。この経緯について、オレゴン州立大学のポーリング文書を調査する予定である。また、西脇の渡欧60周年を記念して、東京工業大学の大学博物館で特別展を予定しているので、それを機会に関係者のインタビューを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年度初頭に予定していた東京工業大学の大学博物館での西脇安関連の特別展が、2014年後半に延期されたため、展示の準備のために用意していた諸費用を次年度送りにしたため。 2014年後半に予定されている上記特別展のための準備費用として使用する。
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Research Products
(2 results)