2014 Fiscal Year Research-status Report
原発震災で問われた「発表ジャーナリズムの限界」の検証・克服をめざす基礎研究
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24501245
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 衛 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (60432118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 美帆 北海道大学, その他部局等, その他 (80422020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 福島原発震災 / 近代民主社会 / 世論形成 / 市民社会メディアリテラシー / 石巻市立大川小学校 / STAP細胞事件 / 第三者検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学ジャーナリズムの限界(いいかえれば到達点)を現代的課題に即して検証する作業を進めた。 東日本大震災時の大津波によって大きな被害を受けた石巻市立大川小学校事故検証委員会を傍聴し,その報道の分析を続けた。福島県民健康調査をめぐる専門家委員会とその報道のウォッチングに参加するとともに,これら問題に取り組むジャーナリストとの情報交換を重ね,その成果は,地球惑星科学連合大会(2014年4月),日本科学史学会年会(同5月),日本災害復興学会・日本災害情報学会合同大会(同10月),科学技術社会論学会(同11月),そのほかで発表,批判を受ける機会を得た。年度末の3月22日にはNPO法人市民科学研究室,現代科学技術論研究会と共同でシンポジウムを開催した。 2014年1月のSTAP細胞論文発表,その後の研究不正の発覚,その検証過程とその報道のウォッチングも続けた。 一連の研究作業によって確認されたのは,科学ジャーナリストとしての記者の専門性もさることながら,誰のため何のための科学なのか,事故検証なのか,科学や事故検証をウォッチングするジャーナリズムなのかという目的意識が大きいという現実であった。 近年,科学技術社会論研究者のなかで「科学の不確実性(不確定性)」や「トランスサイエンス論」が強調され,科学ジャーナリストたちにも影響を与えている。しかし,結論があいまいになったり,一つに定まらなかったりする原因として大きいのは,誰のため何のためであるのかという目的意識あるいは正義の基準のちがいだというのが本研究を通して得られた考察である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査を通した量的把握に代えて,上に示した具体的事例のウォッチングを続けることとなったが,重要なケーススタディが集まった。それによって,発表ジャーナリズムの「限界」(到達点)を浮かび上がらせるのには成功しつつあるが,その克服のためには人権擁護が重要だとわかったものの,その実現は簡単ではなさそうだと考えられた。
事例の出版,教材化を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
科学ジャーナリズムのために必要な専門知識と目的意識とはなにか,具体的に考えを深められる事例,分析のための視点の整理と提示を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究は進展しているが,東日本大震災から4年すぎたのを受けた3月にも調査を続け,また,3月22日にシンポジウムを開催した。これら成果をまとめるための研究会に,4月以降に参加するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,共同研究者との討議,資料整理などのための旅費あるいは謝金として使用する。
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Remarks |
関連する研究として共同で進めてきた「緊急時科学技術コミュニケーションの課題検証とソーシャルメディアの活用検討」課題番号24501110と発表内容が重なるため,本研究成果報告した学会発表の内容にも相互に関連・重複するものがあります。
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Research Products
(11 results)