2012 Fiscal Year Research-status Report
放射性物質に汚染された飼料を摂取した牛の体内での放射性物質の挙動
Project/Area Number |
24510006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高瀬 つぎ子 福島大学, 共生システム理工学類, 特任准教授 (10466641)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 動態モデル / 体内被ばく |
Research Abstract |
A.汚染状況の異なる地域(高濃度汚染地域,低濃度汚染地域)に放牧された牛の体内組織中での放射性物質の挙動の研究 福島県畜産研究所から提供を受けた黒毛和種の検体(血液,筋肉を含む体内組織,尿など)と環境試料(ウシが摂取した牧草,土壌試料)を高精度のゲルマニウム検出器を用いて分析し(検出限界:3Bq/kg以下),飼料から体内組織への放射性物質の移行(注目元素:Cs-134, Cs-137,Te-129m,Ag-110m,K-40)および体内組織中での放射性物質の代謝について,コンパートメントモデルを用いて解析を行った. その結果,①飼料の汚染状況(低濃度汚染地域・高濃度汚染地域)に係わらず,ウシの血液と内臓組織に含まれる放射性セシウム濃度との間には,線形相関が存在すること.②放射性セシウムは筋肉に蓄積し易く,他の体内組織には蓄積しにくいこと.が明らかになった.これらの結果は,『飼料の汚染状況にかかわらず,飼料から消化管を介して血液中に取り込まれた放射性セシウムは,筋肉に蓄積した後,腎臓を介して尿としてゆっくりと体外に排出される』という代謝モデルを支持している. B.汚染飼料を摂取した牛の体内組織中の放射性セシウムの動的挙動の研究 汚染された飼料を摂取した牛の体内での放射性物質の動的挙動を調査する場合,モニタリング牛の負担を軽減し,体内組織中の放射線量を非侵襲に計測するシステムが必要になってくる.携帯型NaIスペクトルメーター用いて,『牛の筋肉中の放射線量を体表部分から計測するための簡易型のシステム』を作製し,放射性セシウム入りファントムおよび汚染飼料を摂取したウシ用いて,体表で計測された放射線量と体内組織中に含まれる放射性セシウム量との間の相関を検討した.その結果,体表で計測された放射線量から,体内の放射性セシウム量を推計することが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,福島第一原子力発電所に近い地域で飼育され,放射性物質に汚染された飼料を摂取した牛の体内組織での放射性物質の分布を測定し,放射性物質の体内での代謝過程を明らかにすることにより,哺乳類の体内での放射性物質の動態モデル(体内被ばくモデル)の精度を向上させることにある. 平成24年度は,汚染された飼料を摂取したウシの体内での放射性セシウムの濃度を測定し,コンパートメントモデルを適用することにより,ウシの体内での放射性セシウムのた代謝過程(平衡状態近似)を明らかにすることができた.また,放射性セシウムの動的挙動の研究の第1段階として,『牛の筋肉中の放射線量の簡易計測システム』を作製し,システムの性能評価を行うことができた. これらの成果に関して,論文(査読つき)および学会等で発表を行っており,本研究は,おおむね順調に進展していると考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の調査研究によって明かになった『牛の体内組織での放射性セシウムの代謝モデル』に従って,放射性セシウムの動的挙動の詳細を測定および解析(シミュレーション)の両面から明らかにし,実際の生態系にそくした動態モデル(体内被ばくモデル)を構築する. 具体的には,①平成24年度に作製した『牛の筋肉中の放射線量の簡易計測システム』などを用いて,ウシの体内での(筋肉,血液,尿など)放射性セシウム濃度の動的(時間的)変化を継続的に測定.②動的コンパートメントモデルを用いて,牛の体内での放射性セシウムの代謝過程の解析(シミュレーション).を行う.観測結果をシミュレーションにフィードバックすることにより,実際の生態系を反映した動態モデル(体内被ばくモデル)を構築する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に作製した『牛の筋肉中の放射線量の簡易計測システム』などを用いて,ウシの体内での(筋肉,血液,尿など)放射性セシウム濃度の動的(時間的)変化を継続的に測定する.汚染飼料を持続的に摂取したウシを用いて,汚染飼料の給与を停止した後のウシの体内(筋肉)および血液,尿中の放射性セシウムの濃度の時間的変化を持続的に測定する. また,放射性セシウムの体内での動的変化にコンパートメントモデル(ルンゲクッタ法により連立微分方程式の数値解を求める:シミュレーションのPCおよびソフトの購入)を適用シミュレーションを行う.実測値をシミュレーション結果にフィードバックすることにより,より精度の高い動態モデル(体内被ばくモデル)を構築する
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Research Products
(11 results)