2012 Fiscal Year Research-status Report

放射性テルルの農作物への移行に関する研究

Research Project

Project/Area Number	24510031
Research Category	Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
Research Institution	Kyoto University
Principal Investigator	高橋知之京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (80314293)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	福谷哲京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00332734)
Project Period (FY)	2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords	農作物移行係数 / 放射性テルル / 福島第一原子力発電所事故 / 内部被ばく / 経口摂取 / 食品
Research Abstract	東日本大震災に起因する東京電力福島第一原子力発電所の事故では、大量の放射性核種が環境中に放出された。このうち、大気中に放出された放射性核種の種類は極めて多種にわたるため、この事故に起因する住民の被ばく線量を評価するためには、これらの核種のうち、被ばく線量に寄与する核種の環境中における移行挙動を精度良く評価する必要がある。このような放射性核種のうち、被ばく線量評価において重要と考えられるストロンチウムやセシウムについては、多くのデータが蓄積されているが、これまで重要と考えられていなかった核種については、データ整備が進んでいない。今回の事故においては放射性テルルが他の核種と同様に環境中に放出され、Te-132やTe-129mが大気や土壌、淡水産物等から検出されている。これらの核種は比較的短半減期であるが、原子力安全・保安院による大気への放出量の推定では、Te-127mがTe-129mの約三分の一程度放出されたと推定されている。Te-127mの半減期は約109日であり、短期間ではあるが、事故後数年間は内部被ばく線量に一定の寄与がある可能性がある。本研究では、食品規制値の考え方において可食部における放射性セシウムと放射性テルルの濃度比が重要であることに着目し、放射性テルルと放射性セシウムを同時に添加した土壌において植物を栽培し、放射性テルルと放射性セシウムの移行係数を求める。本年度は、植物栽培試験を行うためのインキュベータを購入し、試験を行うための事前の準備として、テルルの測定方法を確立するため、テルルを添加した土壌の放射化分析を行って測定精度を検討するとともに、添加したテルルの土壌中における均質性を確認した。また京大炉KURによる中性子照射によって放射性テルルを作成し、RI添加実験を行うための準備を行った。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 今年度は、まず予備実験として、インキュベータを購入し、土壌に安定セシウム及び安定テルルを添加して、生育が比較的簡単と考えられる葉菜（コマツナ等）とする植物栽培試験を行う予定であった。しかしながら、本研究においては、テルルの定量を精度良く実施する必要があり、また土壌に添加したテルル濃度が土壌内で均一になっていることが必要である。このことから、まず、テルルの定量方法等について十分に検討することとした。そのため、実験に使用する土壌約3.5kgにTe標準液を加えて充分に攪拌して乾燥し、２箇所からサンプリングして、京都大学研究炉KURで放射化分析を行った。この結果、土壌に添加したテルルは放射化分析によって充分精度良く測定できること、及び、土壌にも比較的均質に混合されていることを確認した。また、安定テルルを用いた実験と並行して、放射性テルルを用いた実験も行うことを企図し、KURを用いて放射性テルルを作成した。このように、本研究で実施する実験の信頼性を担保するための予備実験を充分に行うことに時間を要したため、本年度予定していた植物栽培実験の実施までには到らなかった。
Strategy for Future Research Activity	今年度は平成２４年度の事前準備の結果を踏まえ、早急に植物栽培実験を開始する。生育実験によって得られた植物中濃度を土壌中濃度で除することにより、放射性セシウムと放射性テルルの元素の移行係数を導出する。植物栽培実験は、平成２４年度に予定していた葉菜類に加え、平成２５年度に予定していた果菜類の実験も実施する。また、放射性セシウムと放射性テルルの移行係数比を求め、環境モニタリングで得られている土壌中放射性セシウムと放射性テルルの比を用いて、東京電力福島第一原子力発電所における、農作物摂取に起因する内部被ばく線量の、放射性セシウムと放射性テルルの比の推定を行う。
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding	本年度は、実験に使用する試薬類、化学実験器具、測定用器具、液体窒素に50万円使用する。また、本年度は昨年度の事前準備によって得られた知見や、本年度の研究成果の論文発表のため、英文校閲、投稿料、論文別刷に50万円支出する。また、本研究に関する国内研究者と打合せ及び成果の発表のため、国内旅費20万円、外国旅費40万円を支出する。