2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 知之 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (80314293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福谷 哲 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00332734)
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Keywords | 農作物移行係数 / 放射性テルル / 福島第一原子力発電所事故 / 内部被ばく / 経口摂取 / 食品 |
Research Abstract |
東日本大震災に起因する東京電力福島第一原子力発電所の事故では、大量の放射性核種が環境中に放出された。このうち、大気中に放出された放射性核種の種類は極めて多種にわたるため、この事故に起因する住民の被ばく線量を評価するためには、これらの核種のうち、被ばく線量に寄与する核種の環境中における移行挙動を精度良く評価する必要がある。このような放射性核種のうち、被ばく線量評価において重要と考えられるストロンチウムやセシウムについては、多くのデータが蓄積されているが、これまで重要と考えられていなかった核種については、データ整備が進んでいない。 今回の事故においては放射性テルルが他の核種と同様に環境中に放出され、Te-132やTe-129mが大気や土壌、淡水産物等から検出されている。これらの核種は比較的短半減期であるが、原子力安全・保安院による大気への放出量の推定では、Te-127mがTe-129mの約三分の一程度放出されたと推定されている。Te-127mの半減期は約109日であり、短期間ではあるが、事故後数年間は経口摂取による内部被ばく線量に一定の寄与がある可能性がある。本研究では、食品規制値の考え方において可食部における放射性セシウムと他の核種の濃度比を用いていることに着目し、放射性セシウムと放射性テルルの濃度比を推定するために、テルルとセシウムを同時に添加した土壌において植物を栽培し、テルルとセシウムの移行係数比を求めることとした。本年度は、土壌を用いた移行係数測定の予備的実験として、安定テルルと安定セシウムを添加した生育水によって水耕栽培を行い、テルルとセシウムの植物(ラディッシュ)への移行に関する実験を進めている。その結果、テルルとセシウムの植物体内の挙動を比較すると、根から吸収されたテルルは根部に残りやすいのに対し、セシウムは茎葉部に移動しやすい傾向があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、土壌を用いた移行係数測定の予備的実験として、安定テルルと安定セシウムを添加した水耕液によって水耕栽培を行い、テルルとセシウムの植物への移行に関する実験を実施した上で、それらの結果に基づいて土壌を用いた生育実験を実施する予定であった。しかしながら、水耕栽培によってラディッシュを栽培するにあたり、植物に対するテルルの毒性が見られ、比較的高濃度のテルルを添加した栽培では生育阻害が発生した。このため、生育後の植物中濃度の測定精度の観点から、実験に適した水耕液中テルル濃度を決定するためにいくつかの予備実験が必要であった。また、テルルを添加した土壌での植物栽培実験も並行して実施しているが、同様に生育阻害が発生したため、実験に適した添加量の検討に時間を要した。 また、水耕栽培において、水耕液からのテルルの揮散と考えられる現象も見られた。このため、水耕液から植物への移行を評価する方法について再検討するとともに、予備実験を追加して実施した。 これらの種々の予備実験を追加し、実験条件の再検討を行った上で、実験系及び植物移行評価方法を確定し、ラディッシュの水耕栽培実験を実施した。今後は、複数種類の植物や、土壌を用いた実験を行い、その結果を用いることにより、所期の目的を達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の予備実験によって実験系及び植物移行評価方法はほぼ確定し、ラディッシュの水耕栽培実験を実施した。今後はこの実験の成果を活かし、複数種類の植物や、土壌を用いた実験を実施し、種々の条件によるテルルとセシウムの移行係数比を求める。また、放射性テルルを用いた実験も実施することとする。これらの実験結果と、福島第一原子力発電所事故における初期モニタリングによる放射性セシウムと放射性テルルの比を用いることによって、内部被ばくにおけるTe-127mの寄与について推定を行うことにより、所期の目的を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
水耕栽培における予備実験に時間を要したため、複数の植物栽培実験や土壌を用いた実験をまで進むことができず、それらの実験に要する実験用資材の購入や、成果発表のための旅費、論文発表に要する予算を執行することができなかった。 今年度の予備実験によって実験系及び植物移行評価方法はほぼ確定したため、複数種類の植物や、土壌を用いた実験を実施し、種々の条件によるテルルとセシウムの移行係数比を求める。これらのの実験に要する実験用資材を購入する。また、これまでの成果及び複数種類の植物や土壌を用いた実験の結果、所期の目的である内部被ばくにおけるTe-127mの寄与について推定を早急に実施して結果をとりまとめ、学会等における成果発表、論文発表を実施する。
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Research Products
(1 results)