2012 Fiscal Year Research-status Report
住民のエンパワーメントに基づく伝統文化と環境の保全ーCBDとTEKをてがかりにー
Project/Area Number |
24510045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
丸山 博 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70281871)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Ainu policy / ICCPR / UNDRIP |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの目的と実施計画では、Convention on Biological Diversity 8(j)とTraditional Ecological Knowledge(TEK)を手がかりにアイヌ系住民のエンパワーメントの可能性を探り、二風谷地域における内発的発展のあり方を考察するため、1年目の平成24年度はアイヌ系住民の実態を把握するため「日本のアイヌ政策の評価」について論文を書き、それを「欧州の代表的な学術誌Polar Recordに投稿する」ことと謳った。このような研究の目的と実施計画にしたがって1年間研究を進めた結果、2つの論文が平成24年度内に国際学術誌(International peer-reviewed journal)に掲載された。 いずれの論文も日本のアイヌ政策を歴史的にとらえるとともに、戦後の国際社会における国際人権法の進展を踏まえて、日本のアイヌ政策には権利保障という法的側面が欠けていることを浮き彫りにしたものである。また、後者のAlterNativeの論文では、先住民族の権利保障という観点から北欧諸国との比較を国連文書などに基づいて行い、日本のアイヌ政策が北欧諸国の後塵を拝していることを具体的に明らかにした。 先住民族の権利に関しては、2007年、「先住民族の権利に関する国連決議」が国連総会で圧倒的多数の賛成で採択され、国際社会は従来の個人に基づく人権概念を超えて民族集団の権利を人権として保障するまでに至った。本研究プロジェクトはこうした国際的な人権概念の進展を視野に日本のアイヌ政策の課題を権利保障の側面から論じたものとして日本では先駆的であり、英語の論文として国際学術誌に掲載されたことから、国際的にも重要であると確信する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は24年度中の課題として「日本のアイヌ政策の評価」を挙げ、その成果として欧州の代表的な学術誌Polar Recordに論文を投稿するとしていた。しかし、実際にはPolar Recordだけではなく、ニュージーランドの学術誌AlterNativeにも別の論文を投稿し、いずれも年度内に掲載することができたからである。なお、これら二つの論文は以下の通りである。 ・Maruyama, H. 2013. Japan's Post-War Ainu Policy: Why the Japanese Government has not recognised Ainu indigenous rights? Polar Record 49(2): 204-207. ・Maruyama, H. 2013. Disregard for the Conservation of Ainu Culture and the Environment: The Biratori Dam project and Japan’s current policy toward the Ainu. AlterNative: International Journal of Indigenous Peoples 9(1): 74-86.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの研究計画では、2年目の課題として「北欧におけるCBD8(j)の国内法への適応、及びスコルト・サーミのTEKの再生過程」を挙げ、その成果を「欧州の代表的な学術誌Acta Borealiaに投稿する」としている。その目的は、申請書の研究目的に書いたように、「国際的視点に基づきCBD8(j)の日本の国内法への適用に関する課題を把握すること」である。なお、スコルト・サーミはアイヌと同じように国家の徹底的な同化政策によって多くのTEKを失ってしまった北欧のサーミ民族の一つであることから、アイヌのTEKとそれを保障するCBD8(j)の国内法への適用を考察する際の参考になると考え、その再生過程を2年目の課題に挙げたものである。 このような本研究プロジェクトの目的と計画に沿って研究を進めるため、北海道の二風谷地域においてアイヌ民族のTEKの調査をすることに加えて、夏休みを利用して北欧を訪れ、資料収集及び関係者へのインタビュー等を通して北欧諸国におけるCBD8(j)の国内法への適応及びスコルトサーミのTEKの再生過程について調査する予定である。その後、これらの調査結果をまとめて論文に仕上げ、上記の学術誌Acta Borealiaに投稿したいと考えている。さらに余力があれば、TEKの基礎となる言語の再生についてもアイヌと北欧の先住民族サーミの比較研究を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は460円である。このような研究費が生じた理由は物品費及び人件費・謝金にわずかではあるが残額が生じ、それをその他の費目でうまく使用できなかったことにある。翌年度においてはたとえ当初の費目で残額が生じた場合でもその他の費目で調整したいと考えている。なお、460円は25年度の旅費に加えて使用したい。
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Research Products
(3 results)