2013 Fiscal Year Research-status Report
住民のエンパワーメントに基づく伝統文化と環境の保全ーCBDとTEKをてがかりにー
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24510045
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
丸山 博 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70281871)
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Keywords | 伝統的生態学的知識 / 生物多様性条約8条j項 / 先住民族文化 / 集団的権利 / アイヌ / サーミ / 国際情報交換(スウェーデン、フィンランド) |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの研究計画は、2年目(平成25年度)の課題を「北欧におけるCBD8(j)の国内法への適用とスコルト・サーミのTEKの再生過程」とし、具体的な成果には「欧州の代表的な学術誌Acta Borealiaに論文を投稿する」ことを挙げた。 研究代表者の丸山は、平成25年9月から26年2月までスウェーデンのウプサラ大学のHugo Valentin Centreに客員教授として滞在する機会を得て、北欧諸国におけるCBD8(j)と国内法との関連およびTEKやサーミ語の再生に関する調査を行った。研究協力者のElina Helander-Renvall博士と貝澤耕一氏とは平成26年3月3,4日の二日間、フィンランドのロバニエミにあるArctic Centreにおいて国際セミナー"Cultural Resilience and Human Rights"を開催した(http://www.arcticcentre.org/InEnglish/NEWS/march2014seminar)。同セミナーでは、私たち自身を含め20余りの研究発表が行われ、先住民族文化の再生にとって先住民族の集団的権利の保障が重要であることを再認識した。 研究成果としては、昨年度投稿した、CBD8(j)の国内法への適応に関する北欧と日本における比較研究に関する小論(3頁に記載)が欧州の学術誌The Yearbook of Polar Law (http://www.brill.com/products/reference-work/yearbook-polar-law-volume-5-2013)に掲載された。投稿雑誌を当初予定していたActa Borealiaではなく、The Yearbook of Polar Lawとしたのは上記の論文が法律的な議論が多く、後者の方が適当であると判断したからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主な理由は二つ。一つは、欧州の学術誌に掲載された小論"Revitalisation of Ainu Culture and Protection of their Right to Culture: Learning from Norwegian Sami Experiences"は25年度の主要な課題である「北欧におけるCBD8(j)の国内法への適応」のみならず、26年度の第一の課題である「CBD8(j)の日本の国内法への適用」についても言及したものであること。もう一つは、前述のセミナー"Cultural Resilience and Human Rights"を主催者の一人として組織することによって、先住民族文化の再生と集団的権利の保障との関係について国際的な文脈の中で知見を深めることができたことが挙げられる。 なお、25年度はスウェーデンに滞在する期間が長くなったため、予定していたフィンランドでのスコルト・サーミのTEKの再生に代わってサウス・サーミのTEKやサーミ語の再生に関する調査を行った。サウス・サーミもスコルト・サーミ同様、固有の文化崩壊の危機に瀕しながらも、その再生への取り組みが行われていることから、このような変更は本研究プロジェクトの趣旨に外れるものではないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では平成26年度の課題は「CBD8(j)の日本の国内法への適用と二風谷地域の内発的発展」とした。具体的には、「室蘭工業大学の公開講座を通して3年間の研究成果を地域社会に還元するとともに、一連の講義をもとにして学術書を出版する」こととした。 公開講座の計画はすでに大学に提出しており、平成26年10月~12月にかけて行う予定だが、学術書の出版にはもう少し時間がかかることから、今年度は、その準備を行いながら、「アイヌ民族のTEKや言語の再生と二風谷地域の内発的発展」に関しサウス・サーミとの比較において考察する論文を欧州の学術誌に投稿したいと考えている。そのため、4,5月は二風谷において現地調査を行い、6~8月はスウェーデンにおいてサウス・サーミのTEKやサーミ語の再生に関する調査を行う予定である。
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Research Products
(6 results)