2012 Fiscal Year Research-status Report
化学物質リスク評価における不確実性分析に基づく基準値信頼性の分類と指標の提案
Project/Area Number |
24510052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
大野 浩一 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (00322834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東海 明宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90207522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 不確実性 / リスク評価 / 環境政策 |
Research Abstract |
化学物質のリスク評価は大きく「毒性評価」と「暴露評価」に分けることができ、いずれにも不確実性が存在する。平成24年度においては、暴露評価を中心に不確実性に関連するパラメータに関する研究を行った。化学物質の暴露評価においては、毒性評価より得られる一日耐用摂取量(ヒト体重1kg当たり)をもとに基準値設定の際の参考となる評価値が算出される。ヒトの健康に係る飲料水に対する水質基準の場合、現状の日本の場合は、平均体重50kgと一日飲水量として2Lが代表値として与えられている。本研究では一日飲水量の不確実性について考慮するために、摂水量調査を行った。夏と冬の2回にわたり行われた摂水量調査の解析を行った結果、水道水(スープなど汁物からの飲用も含む)からの摂水量は、算術平均値として夏、1159mL, 冬、1124mL、95%値として、夏、2400mL, 冬2200mLが得られた。これに、ボトル水や市販飲料を加えた液体としての全摂水量は算術平均値として夏、1936mL, 冬、1638mL, 95%値として、夏、3570mL, 冬2900mLが得られた(速報値として)。水道水由来の摂水量は夏と冬には大きな違いが無かった。しかし、液体全体の摂水量としては夏と冬に大きな差があり、これはアルコール飲料を含めた市販飲料の摂水量に季節差が大きいことがわかった。これを水質基準設定にあてはめると、水道水由来の摂水量で考えるべき化学物質と飲水量全体で規制すべき化学物質があり、化学物質によっては1日2Lという飲水量の代表値では不十分になる可能性が示唆された。 また、放射性物質のリスク評価において、放射性セシウムの水からの摂取量に与える因子を調べた結果、最も影響が大きい物はセシウムの環境水中の形態であり、特に懸濁態と溶存体のいずれの形態で存在するかが摂取量に大きな影響を与えていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の所属先から現在の所属先に平成24年4月に異動した。そのため、研究の立ち上げなどからスタートしているため、研究の進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
化学物質のリスク評価における不確実性分析においては、平成24年度に行った摂水量分布をもとにモンテカルロシミュレーションを行い、摂水量分布に由来する不確実性の大きさについて定量化を行う。また、毒性評価においてはWHOの飲料水水質ガイドラインのバックグラウンドドキュメントより、どのような毒性評価が行われているのかを調べ、特に動物実験の50%値と95%値を使用することにより、毒性評価値にどの程度異なるのか、つまり不確実性がどの程度存在するのかについて定量化を行う。 放射性物質については、引き続き放射性セシウムに焦点をあて、水と懸濁物へのセシウムの分配係数がもたらす環境中での挙動について調べ、分配係数による不確実性の大きさについて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の推進に必要となる消耗品として、統計パッケージや化学物質の物性を求めるためのソフトウェア、データベース、書籍などを購入する予定である。また、既存の毒性評価に関する文献類も購入する予定である。放射性物質のリスク評価においては、既存のデータが少なく、またチェルノブイリの結果がそのまま東日本大震災による放射性物質のリスク評価に使用できないものが多いことから、水道水中の放射性セシウムを形態別に測定するための分析器具、消耗品類としての購入も計画している。 また、これまでに行ってきた研究成果の外部発表を積極的に行う予定であり、そのための旅費についても計画している。成果の外部発表のみならず、研究者などへのヒアリングや研究者間での情報交換のための旅費も計画している。
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