2014 Fiscal Year Research-status Report
化学物質リスク評価における不確実性分析に基づく基準値信頼性の分類と指標の提案
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24510052
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
大野 浩一 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (00322834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東海 明宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90207522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不確実性 / リスク評価 / 情報の価値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学物質に関する基準値は科学的知見をもとに「評価値」を求め、この評価値をベースに基準値などを決定する。「評価値」の算出には「毒性評価」と「曝露評価」が行われ、このどちらにも化学物質の性質や曝露の性質によって不確実性が存在する。さらには、評価値から基準値の決定の際には、他の規制とのバランス、リスクと便益とのバランス、技術的な実現可能性、処理可能性、モニタリングの費用や効率・実現可能性、環境中のバックグラウンドレベル、などと言った要素について検討が行われる。これらも一種の不確実性と見なすことができる。そこで、本研究では「毒性評価」、「曝露評価」、「評価値から基準値決定まで」の間に組み込まれている不確実性について抽出し、それらを比較することで基準値の信頼性について議論することを目的としている。つまり、信頼性を不確実性の質と量とに分けて検討し、分類ごとの不確実性の特徴を明らかにすることを試みている。さらに、上記のさまざまな不確実性を未知による不確実性(Uncertainty)と、本質的に存在する不確実性つまり個人差などと言ったばらつき(Variability)に分類することも検討する。以上より今年度は、基準値の信頼性をデータの不確実性の視点から定量評価することを目的に、不確実性の類型化を行うとともに、情報の不足、変動性に関する指標の構築を行った。 また、放射性物質のリスク評価に関する不確実性について、今年度は放射性セシウムの存在形態の違いに関する検討を行った。放射性セシウムは、水環境中において懸濁態へ吸着している場合と溶存態で存在している両方の場合が存在する。浄水処理は固液分離を基盤としている場合が多いことから、いかにして溶存態のセシウムを懸濁態へと移行できるかがということが、飲料水を通じたヒトの健康リスク評価に影響を与えることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の所属先から現在の所属先に本研究開始年度に異動したことから、研究の立ち上げなどに時間がかかったことに加え、今年度は原因不明の病気に罹患してしまい、今年度だけで8回の入院を行ったこともあり、研究に十分な時間を割くことができなかった。幸い、病状の方は落ち着いてきているので、次年度に研究のまとめを行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基準値に関する不確実性分析は、水質基準を対象に行う。不確実性の項目の分類はできているので、基準作成時の根拠資料およびリスク評価資料などの公開資料や学術論文等を基に、各項目の定量的な解析を行う。さらには、情報の価値の視点を用いて指標的物質を取り上げ、試行的解析を実施する。 放射性物質の不確実性については、懸濁態と溶存態での存在比に関する解析を行い、それら環境中の動態の違いが与える健康リスク評価への不確実性について検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は原因不明の病気により、研究の進捗が遅れたため次年度への使用額が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
幸いにして、病気については比較的症状が安定してきているので、研究を進捗させ、まとめたいと考えております。最終年度として、論文の作成に必要な経費と論文発表に必要な旅費などを中心に、データベースや解析モデル関連のソフトウェアへの使用を計画しています。
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Research Products
(4 results)