2012 Fiscal Year Research-status Report
高品質中性フリーラジカルビームの生成法の改良と準安定凝縮相の作り分けへの応用
Project/Area Number |
24510127
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 啓治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (30281455)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レーザー |
Research Abstract |
研究代表者が提案した高品質中性フリーラジカルビーム生成法のうちPhoto-Dissociation of Energetic Compound Beam(PDECB)法では,真空条件下で,高純度化したUnimolecular Energetic Dye(UED)の分子ビームに可視~近紫外波長域のCWレーザー光を照射して波長選択的に光解離させ,所望の中性フリーラジカル種の定常フラックスビームを効率良く得る.PDECB法の特徴は,UED化合物のうちから原料を選ぶところにあり,UED分子の光解離にはフォトンのエネルギーではなくUED分子に内蔵されている化学エネルギーが用いられる.しかもUED分子は発色団を有し解離性光吸収端波長が可視~近紫外域まで伸びているので,光解離に利用できる高出力のCW光源の選択肢が広く,効率良く中性フリーラジカルビームを生成することが可能となる. UED分子に共通した特徴として,熱分解温度に比べて概ね80K以上低い温度領域では,分子ビームの加熱によって,熱解離生成種の収率の増加に比べ,光解離によるフリーラジカルの収率が 劇的に向上することを,研究代表者は実験で見出した.このことに関し,Multireference Møller-Plesset法によるab initio分子軌道計算から,原料分子が変角振動によって変形したときに光励起されると項間交差を起こし易い との予測を得た. 平成24年度は,この項間交差が促進される量子論的な機構について,解明を進めた.さらに,特定モードの分子振動の波長選択的電磁励起を併用することにより項間交差を促進し所望の中性フリーラジカル種を反応選択的に生成するintercrossing-enhanced PDECB法の確立を目指し,平成24年度は,実験装置での励起条件を最適化する指針の目鼻を付けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度交付申請書提出後に所属研究機関(大学)から指示があり,現有の研究設備(実験装置およびコンピュータ)を,平成24年度末に完成した新しい研究所の建屋へ移設する必要が生じた.貴助成金で新規研究設備を平成24年度に購入すると,移設の際に精密な再調整が必要となり,研究の円滑な推進の障害になる懸念があったため,貴助成金による新規研究設備の購入は平成25年度に行うことに計画を変更した. これに伴い,当該研究の研究計画調書および平成24年度交付申請書に記した研究計画の内容のうち,どれから手をつけるかについて変更をしたが,3年間に挙げるべき成果のうちのどれだけを平成24年度に達成できたかの割合からいえば,当初の計画通り研究を進められている.
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Strategy for Future Research Activity |
現有の高品質中性フリーラジカルビーム表面プロセス装置試作機(以下では,RBNR装置試作機と略称)について,平成24年度末に研究所の新しい建屋へ移設したのを機に,当該研究を遂行し易いように,プロセスチャンバーを改良する.これと並行して,改良したRBNR装置試作機のプロセスチャンバー内に装着し,UED原料分子ビームとレーザー光ビームが交差する位置でUED分子の分子振動を波長選択的に励起する,UED分子レベル選択電磁励起システムを設計・開発する. また,高品質中性フリーラジカルビームを誘電体のエピタキシャル成長表面に照射した際に,中性フリーラジカルが膜中に取り込まれ準安定凝縮相を形成して意図した電子物性を発現する過程について,これまで自作・改良を進めてきた 分子動力学(MD)法と第一原理MD法を併用したマルチスケールシミュレーターを完成させる.高品質中性フリーラジカルビーム生成法(PDECB法やPhoto-Deionization of Negative Ion Beam(PDINIB)法)の開発によって得ることを可能とした薄膜成長表面でのラジカル反応の精密な実験データを研究代表者は豊富に有しており,これらを再現するように近似法を吟味することで,結果の信頼性の高いシミュレーターを実現する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RBNR装置試作機のプロセスチャンバー内に装着し,UED原料分子ビームとレーザー光ビームが交差する位置でUED分子の分子振動を波長選択的に励起する,UED分子レベル選択電磁励起システムを,貴助成金により設計・開発する. また,高品質中性フリーラジカルビームを誘電体のエピタキシャル成長表面に照射した際に,中性フリーラジカルが膜中に取り込まれ準安定凝縮相を形成して意図した電子物性を発現する過程について,これまで自作・改良を進めてきたマルチスケールシミュレーターでは イオン結合性の強い結晶について 結果が実験と食い違う.当該研究では,誘電体結晶を構成する極性原子やイオンの間の静電相互作用の計算を,貴助成金により購入する多体計算用GPUカードを用いて加速し,大規模シミュレーションを可能とする.
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