2013 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を用いた温度応答性ゲルレジストのナノデバイス応用
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24510174
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Research Institution | Toyama Industrial Technology Center, |
Principal Investigator |
横山 義之 富山県工業技術センター, その他部局等, 研究員 (60416154)
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Keywords | 温度応答性ゲル / レジスト / ナノインプリント / イオン液体 / 微細加工 |
Research Abstract |
これまでに、温度応答性高分子に光架橋性を付与することで、半導体フォトレジストのように光で微細パターニングでき、さらに、温度によって微細パターンが可逆的に変形する温度応答性ゲルレジストを開発してきた。しかし、このレジストは、水存在下でしか変形できず、加工サイズもμmオーダーと大きいため、細胞チップのようなバイオ分野での利用に限られていた。本研究では、熱ナノインプリント法を用いてnmオーダーの微細パターンを形成でき、水のかわりにイオン液体を用いることで、長期の乾燥・真空下でもパターン変形できる温度応答性ゲルレジストの開発を試みている。これにより、光学・電子分野での利用が期待される。 昨年度までに、イオン液体(1-Ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)中で、“低温で収縮し高温で膨潤する”熱ナノインプリント用の温度応答性ゲルレジストを合成し、性能を評価してきた。これは、Poly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAAm)をベースに熱架橋を付与したものである。本年度は、それとは逆の“低温で膨潤し高温で収縮する” 温度応答性ゲルレジストの開発を行った。 具体的には、Poly(benzylmethacrylate)(PBzMA)をベースに熱架橋性を付与することで、熱ナノインプリント法で直接微細パターニングでき、イオン液体中でこれまでとは逆の温度応答性を示すゲルレジストを合成した。このPBzMAベースのレジストに関して、熱ナノインプリント法によるパターン転写条件を探索し、50nm~30umの微細パターンを転写することが可能になった。また、周囲の温度を制御することによって、得られた微細パターンを、イオン液体中で“低温で膨潤⇔高温で収縮”させて、可逆的に変形させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度には、当初の計画どおり、温度応答性高分子Poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm) をベースとした温度応答性ゲルレジストを合成し、特性評価を行うことができた。その結果、このPNIPAAmベースのレジストを用いて、ナノインプリント法による微細パターンの転写、及び、イオン液体(1-Ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)中で温度制御による微細パターンの変形を行うことができた。 また、H25年度には、当初の計画どおり、Poly(benzylmethacrylate)(PBzMA) をベースとした温度応答性ゲルレジストを合成し、特性評価を行うことができた。その結果、このPBzMAベースのレジストを用いても、ナノインプリント法による微細パターンの転写、及び、イオン液体中で温度制御による微細パターンの変形を行うことができた。また、PBzMAベースのレジストは、PNIPAAmベースのレジストとは逆の温度応答性を示すことも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、H24~H25年度に得られた結果(PNIPAAmベースの温度応答性ゲルレジストの開発、PBzMAベースの温度応答性ゲルレジストの開発)を基にして、温度応答性ゲルレジストの電子・光学・機械分野でのナノデバイス応用を試みる。具体的には、PNIPAAmレジストやPBzMAレジストの可逆的なナノパターン変形を利用した(もしくは、組み合わせた)微小ゲルアクチュエーターを用いて、半導体プロセスへの応用(形成したレジストパターンのホール径の縮小)、ナノ流体チップへの応用(ナノポンプやナノバルブといったナノ流路を制御する機構の構築)、光学デバイスへの応用(量子ドットの捕捉やアレイ化、焦点可変なナノ・マイクロレンズアレイの試作)を行う。 また、得られた結果を取りまとめ、論文投稿や学会発表などの成果発表や、特許出願を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度に、温度応答性ゲルレジストの合成に必要な合成原料・溶媒・ガラス器具・フィルターなどの消耗品の使用、また、ナノインプリント実験に必要な金型の破損による追加購入などが、当初予定よりも少なく済んだことから、次年度使用額が発生した。 H26年度は、H25年度に生じた次年度使用額とH26年度に請求した助成金を合わせて、消耗品(温度応答性ゲルの合成原料および溶媒、有機合成に用いるガラス器具類、基板、ランプ・フィルター類)の購入、ナノインプリント実験に必要な金型の追加購入、また、研究成果発表のための旅費と学会参加費への支出を予定している。
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