2014 Fiscal Year Research-status Report
液状化と流体移動:その多様性を実験と無次元数を用いて理解する
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24510246
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
隅田 育郎 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (90334747)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 液状化 / 粉粒体 / 振動実験 / 重力不安定 / 火炎構造 / 潤滑 / 振動加速度 / 振動周波数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の1つ目の成果は昨年度までに得られた浅部に低浸透率層がある場合の水に浸された粉粒体の振動実験の結果を査読付雑誌に論文として出版し、その内容を国際学会(AOGS2014)で発表を行ったことである。またこれらの成果を含む総説を執筆し、出版した。 2つ目の成果は液体が水よりも高粘性の場合の実験とその解析を行ったこと、さらにその結果を理解するためのレオロジー測定を行い、それらの成果をまとめた論文を執筆したことである。間隙流体の粘性率が高くなると、(1)液状化が起きるための臨界加速度が小さくなること、(2)不安定の波長が短くなること、(3)ストークス速度を使ってスケールした不安定成長速度が速くなること、が発見された。また粉粒体が水に浸された場合と同様に、振動の周波数が100Hz程度で特に液状化が起きやすいことが確認された。粉粒体を液体に浸して周期的にせん断するレオロジー測定を行い、高粘性流体中の方が小さい応力で液状化することが分かった。以上より、(1)の原因は高粘性流体の方が潤滑が起き易いためと結論付けた。そして線形安定論の結果を応用することのより、(i)流動化している層は厚さ1mm程度の薄い境界層に限られること、(ii)上層の粘性率/下層の粘性率は、間隙流体の粘性率が高い程、小さくなること、と推定した。そして(ii)の結果は高粘性流体程、顕著なshear thinningが起きること、即ち同じく、潤滑効果のためと結論付けた。 3つ目の成果は間隙流体が空気の場合についても粉粒体の斜面を同様に振動させる実験を行ったことである。液体で浸された場合と同様に、100Hz程度で粉粒体が流動化しやすいことを確認した。一方で液体を含む場合とは異なる現象もいくつか見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果をまとめた論文を2つ出版したこと、成果を国際学会において発表したこと、また粘性率依存性の実験、解析が完了そ、その論文も投稿間近の状況に至ったのでおおむね順調に進んでいると評価する。また実験結果の地球科学的な示唆についての考察も進めることが出来、これを論文に加えることが出来た。さらに本研究を発展させて、間隙流体が空気の場合の例として、振動による斜面崩壊の実験を卒業研究として行い、新しい成果が得られた。投稿前の論文の内容、空気中における振動実験の結果については2015年地球惑星科学連合大会で発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の1つ目の課題は、現在執筆の最終段階に入っている、液状化の粘性率依存性に関する論文を早期に投稿し、出版することである。またその成果を地球惑星科学連合2015年大会で発表する。 2つ目の課題は、これまでの研究で未解決問題として残っている、液状化に伴う火炎構造の形成のダイナミクスの2層の厚さに対する依存性、噴砂の間隔の決まり方、液状化過程と間隙水圧変化の関係、の研究を行う。また、これまでの実験で用いて来た装置は奥行きが短い準2次元型であったが、より現実的な3次元の効果を調べるために奥行きに大きい装置を新規に作成する。またその際に間隙水圧センサーも設置出来るようにする。これらの実験を指導学生の卒業研究として行う。
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Causes of Carryover |
本年度は本課題の成果の一部をまとめた1つ目の論文の出版作業及び総説論文の執筆を行った後、粘性率依存性のデータ解析、追加実験の遂行、2本目の論文執筆を行った。2015年春に投稿することを目標にして論文作業を優先したため、振動方法の改良、間隙水圧センサーの設置、新しい実験セルの作成は次年度に行うことにした。以上より本年度は出費が減り、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2本目の論文の出版経費及び論文内容を地球惑星科学連合大会で発表するための旅費として用いる。また次年度に持ち越した振動方法の改良を行うための信号発生器、間隙水圧を測定するためのセンサー、直流電源の購入費として用いる。また実験を行っている大学院生のための謝金、学会(地球惑星科学連合大会、流体力学会)発表と関連する野外調査を行うための旅費として使用する。
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