2012 Fiscal Year Research-status Report
構造方程式モデリングによる多能性幹細胞での細胞分化制御因子の推定
Project/Area Number |
24510285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
油谷 幸代 独立行政法人産業技術総合研究所, 生命情報工学研究センター, 主任研究員 (10361627)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 構造方程式モデリング / ネットワーク推定 / 形態形成 / 初期胚形成 / 発現プロファイル |
Research Abstract |
本研究の全体的計画では、①構造方程式モデリングと因子分析やクラスタリングを組み合わせた新規ネットワーク推定手法の開発、②開発した手法を発現プロファイルへ適用し、細胞分化や器官形成のように時系列で形態変化する細胞内で起こっている遺伝子発現制御の候補因子の推定と制御ネットワークの推定、③構築したネットワークモデル上の各パラメーターの値から、細胞分化や器官形成に重要な部分を推定、という大きく3つの項目がある。平成24年度は、研究項目の①について主に行った。具体的な実績は以下の通りである。 1)既知の知見からの制御関係の抽出を行った。具体的には、ヒト・マウス双方のES細胞、およびiPS細胞について、実験的に確認された遺伝子間・タンパク質間の関連性の知見を収集し、仮説モデルの原型となるモデル構造を構築した。 2)ES/iPS細胞における発現プロファイルの収集・データ整備を行った。GEO(Gene Expression Omnibus)から、ES/iPS細胞の発現プロファイルデータを網羅的に収集をおこなった。収集したデータを実験条件や細胞分化の段階によって分類し、解析対象とする現象に適応した実験条件下で測定された発現プロファイル群を選択した。 3)構造方程式モデリングと因子分析を組み合わせたモデリングを適用する手法を開発した。ヒトES細胞にて測定された発現プロファイル群につて、まずは潜在変数を包含しないネットワークモデルの構築手法を確立した。本手法では、データにもっとも適合したモデル構造にするmodel optimizationの方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、第一に構造方程式モデリングに他の統計解析を組み合わせた新規ネットワーク推定手法を開発することである。さらに、開発した手法をES/iPS細胞の発現プロファイルに適用し、細胞分化の制御候補因子の推定・および細胞分化プロセスにおける重要なパスウェイの解明目標とする。具体的には、公開データからES/iPS細胞の細胞分化や様々な器官形成時のデータから個々にネットワーク推定を行い、器官形成を決定づける候補因子の推定を行う予定である。さらに、器官ごとに推定したネットワーク同士を比較し、ある器官を形成するうえで重要なプロセスを決定する。本研究によって、発生過程・形態形成のメカニズムの一端が明らかになると期待している。 平成24年度はES,iPS細胞データへ適用しうる手法を開発し、実際の適用は平成25年度からになると予定していた。従来、構造方程式モデリングは仮説モデルのネットワーク構造を判断するという確認的統計手法である。この構造方程式モデリングをネットワーク推定手法として適用するため、データにもっともフィットするモデルを計算していくモデル最適化手法を構築した。さらに、開発した手法を平成24年度中にヒトES細胞のデータに適用し、論文発表および国際学会にて発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、以下の研究項目を実施する。現段階での、各研究項目の具体的な進行計画は以下の通りである。1)開発した手法の、他の発現プロファイルへの適用、2)推定ネットワークの構築、3)推定したネットワークモデル上における潜在変数の評価 4)ネットワーク推定を複数の現象に対して個別に実施、5)推定した複数のネットワークモデル同士を比較 まずは、開発したネットワーク推定手法を発生初期や細胞分化時に測定されたES/iPS細胞の発現プロファイルに適用し、実際のネットワークモデルを構築する。この際、ターゲット遺伝子の選択手法など解決すべき点をクリアにする。次に、推定したネットワークモデル上における潜在変数の評価を行う。因子分析を組み合わせていることから、ネットワークモデル中の潜在変数は、各遺伝子発現の要因となっている因子を示している。この因子がタンパク質などの分子なのか、細胞内の濃度勾配などの化学的要因なのかを推定することで、推定したモデルが示しているものを明らかにする。 このようなネットワーク推定を、複数の現象に対して個別に実施し、最終的には推定した複数のネットワークモデル同士を比較することで、それぞれの器官形成時に重要なパスウェイを明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会参加費
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