2012 Fiscal Year Research-status Report
環上に四級不斉炭素が密集した天然物の全合成研究と機能解明
Project/Area Number |
24510290
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉村 文彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70374189)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 四級不斉炭素 / ブラシリカルジンA / ニトリル / 共役付加反応 / ニトロン / ヒドロキシルアミン / 立体選択的合成 |
Research Abstract |
炭素環上に四級不斉炭素が連続もしくは隣接した天然物には興味深い生理活性を示す化合物が多く知られており、分子レベルでの機能解明のため天然物とその類縁体の化学合成による供給が切望されている。しかし、これらの化合物には標準的合成法がないため、その化学合成は大きく立ち後れている。本研究では実用的な四級不斉炭素構築法を開発し、ブラシリカルジンAとアンドラスチンCの全合成を目指した。 まず、前述した天然物の化学合成の基盤技術となる新反応の開発を行い、求核部位としてニトリル側鎖を備えた鎖状,β-不飽和エステルの分子内共役付加反応による四級不斉炭素構築法を確立した。本手法は一般性の高い方法論が欠如している連続する四級-四級および四級-三級不斉炭素構築の立体選択的構築法として合成化学的に有用な方法論を提供するものと期待される。また、本反応開発の過程で、シリルトリフレートとトリエチルアミン存在下でニトロンとニトリル誘導体の付加反応が進行し、ヒドロキシルアミンのシリルエーテルが収率よく得られることを見出した。通常この種の反応では有機リチウムなどの塩基性の高いカルバニオン等価体が用いられるのに対して、今回見出した方法は中性に近い温和な条件であるため今後の展開が期待される。 ブラシリカルジンAの合成研究では、まずA環上2位酸素官能基を省略したモデル化合物を用いて検討を行った。先に確立した四級不斉炭素構築法を2回利用することで、A環およびB環上の四級不斉炭素を高立体選択的に構築できることが分かった。本知見をもとに、全合成に必要なアンチジオール部を有するA環の合成を行った。光学活性パントラクトンから鎖状不飽和エステル部位を有するニトリル誘導体を合成し、このものに同様の四級不斉炭素構築法を適用することで、連続する四級-三級不斉炭素とアンチジオール部を有するA環部を高立体選択的に得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
反応開発研究は当初の計画通り進展した。ブラシリカルジンAの合成研究において、全合成に必要なアンチジオール部を有するA環部の環化前駆体の合成に時間がかかった上、化合物の量的供給に苦しんだ。今後、シャープレス不斉ジヒドロキシル化反応を利用する別の合成経路を検討し、工程数の大幅短縮とスケールアップ化を計る。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラシリカルジンAとアンドラスチンCの全合成研究に注力する。また、本年度確立したニトリルの分子内共役付加反応を用いる環上四級不斉炭素構築法の有用性を示すため、他の天然物の全合成への展開を計る。これらに加えて、最近見出した温和なシリル条件下でのニトリル誘導体とニトロンの付加反応の最適化と反応機構解析を行い、本反応の実用性と有用性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節減の結果生じた使用残について、次年度の試薬・溶媒、およびガラス器具の購入に使用する。
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