2013 Fiscal Year Research-status Report
環上に四級不斉炭素が密集した天然物の全合成研究と機能解明
Project/Area Number |
24510290
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉村 文彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70374189)
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Keywords | 四級不斉炭素 / ブラシリカルジンA / アンドラスチンC / 共役付加反応 / 立体選択的合成 / ワインレブアミド / ニトリル / セミピナコール転位 |
Research Abstract |
炭素環上に四級不斉炭素が密集した天然物には興味深い生物活性を有するものが多く知られている。分子レベルでの機能解明のため、天然物とその類縁体の化学合成による供給が切望されている。しかし、これらの化合物の合成には標準的な合成方法論がないため、その化学合成は立ち後れている。本研究では実用的な四級不斉炭素構築法を開発し、ブラシリカルジンAとアンドラスチンCの全合成を目指した。 まず、昨年度見出した見出した温和なシリル条件下でのニトリル誘導体とニトロンの付加反応の最適化と反応機構解析を行った。その結果、本反応が幅広い基質に対して進行することが分かった。 ブラシリカルジンAの全合成研究では、A環のジオールを有する環化前駆体を不斉ジヒドロキシル化反応を経て合成後、ニトリルから調整されるアニオンを求核種として用いる分子内共役付加反応でAおよびB環を順次高立体選択的に構築した。これらの反応では、求電子部位としてα,β-不飽和ワインレブアミドが優れていた。次いでC環を構築し、ABC環部の合成法を確立した。 アンドラスチンCの全合成研究では、合成上最重要課題であるC環上の三連続四級不斉炭素構築法を開発するため、CD環モデル化合物の合成を検討した。アリルニトリル誘導体とエノンとの共役付加反応と分子内エン反応を組み合わせたアニュレーション型四級-四級連続不斉炭素構築法を開発し、C13,14位四級不斉炭素を一挙に構築した。次に、シアノ基を足がかりとしたD環上のC15位酸素官能基化を精査したが実現できなかった。そこで本法を断念し、新たに分子内共役付加反応とセミピナコール転位を鍵とする連続四級炭素構築法を検討した。エポキシシリルエーテルのセミピナコール転位が四級炭素構築(C14位)に有用であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ブラシリカルジンAについては、合成上の重要課題の解決法が見出すことができ、全合成の目処が立った。 アンドラスチンCについては、当初計画したルートでは四級不斉炭素の構築には問題がなかったが、その周辺部の官能基化が非常に困難であった。合成戦略の見直しが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、アミノ酸部の構築し、ブラシリカルジンAアグリコンを合成する。次いで糖鎖を導入後、ブラシリカルジンAの不斉全合成を達成する。また、分子内共役付加反応、セミピナコール転位、ニトリルオキシドの付加環化を組み合わせた新たなCD環合成法を検討し、アンドラスチンCの全合成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬と溶媒の一括購入を行い、大幅な経費節減ができたため。 経費の節減の結果生じた使用残については、次年度の試薬・溶媒およびガラス器具の購入に使用する。
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