2015 Fiscal Year Research-status Report
米国フレンズ奉仕団の研究ー対日活動と日系人支援活動を中心としてー
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24510352
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
戸田 徹子 城西国際大学, 国際人文学部, 准教授 (50183877)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 米国フレンズ奉仕団 / AFSC / クエーカー / NGO / 日米関係 / 日米交流 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 平成28年3月にフィラデルフィアに1週間ほど出張した。初年度に実施した米国フレンズ奉仕団(the American Friends Service Committee、以下AFSC)本部資料室の所蔵調査に基づき、平成27年度も日本関係の資料を探し出して複写する作業を継続し、1930年代の書簡やパンフレットなどの資料に目を通した。この時期には、日中関係の悪化に伴いAFSC本部から情報提供が求められる機会が多くなってきている。さらに本部と現地職員の新施設建設をめぐる対立や現地職員間の反目、そしてこれがヒュー・ボートンの進退問題に発展していった過程を追うことができた。 2. ヒュー・ボートンはAFSC職員として1920年代末から日本に駐在した。帰国後、日本史を本格的に学び、戦前においては極めて少数だった日本研究の専門家となり、対日占領政策立案に携わった。ボートンについては、すでに編著書 Phila-Nipponica: An Historic Guide to Philadelphia & Japan で紹介したが、本年度の調査によって、ギルバート・ボールズとの対立関係が検証され、日本で活躍したAFSC関係者の中で事業方針の違いが大きかったことが判明した。 3. 本研究で得られた成果の一部を「エスター・ローズにみる日米交流活動の歴史」として、千葉県香取市の公開講座において発表した。出席者の中には第二次世界大戦後のララ物資を覚えている者もいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
AFSC本部資料室の日本関係資料が未整備だった。そのためAFSCの委員会等の組織を通した分析は困難と判断し、研究の方向性を修正。AFSC関係者に焦点を絞り、彼らの活動を通して国際理解や国際交流、国際援助について考察することにした。この研究方針の変更に伴い、資料が別途必要となり資料収集作業が手間取った。さらに研究代表者に職場異動が生じ、研究時間を充分に確保できない状態が続いているため、遅れた進捗状況にある。
しかしながら、研究は以下の段階まで達成されている。(1)AFSC本部資料室にある日本関係資料について、本研究に関係する期間(戦間期ならびに戦中)のうち、1930年代までの記録に目を通した。(2)入手した資料のうち、AFSCのオーラル資料について、資料整理を完了し、まずは資料紹介をする目的で「米国フレンズ奉仕団オーラル資料400シリーズの分析」をまとめた。(3)すでに入手済みの資料の中から、ヒュー・ボートンとエスター・ローズについて、日英の両言語でエッセイを書いた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.研究期間を延長し、平成28年度が本研究の最終年度となった。基本的な作業としてAFSC本部資料室の日本関係資料の点検、収集を継続し、当初予定通り1945年ごろまで網羅したい。このため、あと2回、資料調査を行う。 2.AFSC関係者を時系列に紹介することを通して、AFSCが日米両国で展開した国際交流や国際奉仕の活動内容を明らかにする方向で、報告書を作成する予定である。報告書には、ヒュー・ボートンとエスター・ローズに加えて、海外伝道からAFSCのような国際NGO型の海外活動の双方を担った過渡期の人物としてギルバート・ボールズ、関東大震災発生時に日本にいて国際援助の途を開いたトム・ジョーンズ、そして日系人収容問題に係ったフロイド・シュモーなども含めたい。 3.AFSCオーラル資料(日系アメリカ人収容と学生転住)は存在自体がまだ知られていないことから、「米国フレンズ奉仕団オーラル資料400シリーズの分析」を発表する機会を求め、そこでの議論を踏まえたうえで報告書に加えたい。 4.最終年度にあたることから、できればアメリカからAFSCの研究をしている研究者、またはAFSC資料に詳しい関係者を日本に招き、国際研究集会を開催できればと考えている。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属異動により、研究時間が十分に確保できない状態が続いている。夏に予定していた海外調査も教務との関係で実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初から予定していた AFSC 本部の資料調査を完了させるため、海外出張を2回予定している。足りない文献や資料を補いながら、報告書を作成する。可能であればアメリカからAFSC 関係者または研究者を招き、国際研究集会を開催したい。
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Remarks |
本研究で得られた研究成果の一部を「エスター・ローズにみる日米交流活動の歴史」として、千葉県香取市の公開講座において発表した。(平成27年12月12日、於小見川市民センターいぶき館)
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