2013 Fiscal Year Research-status Report
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24510362
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
安武 留美 甲南大学, 文学部, 教授 (10351751)
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Keywords | 母性主義 / アメリカ化 / 革新主義運動 / 児童教育 / 児童福祉 / 排日運動 / 反排日運動 / 日系人移民 |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初め、ハワイに誕生した汎太平洋婦人協会(PPWA)を中心とする環太平洋女性ネットワークが、アメリカのグローバル化、台頭する人種および地域ナショナリズムとどのように関わっていたのかを解明するものである。ハワイの白人女性が主導して発足したPPWAの、アジア系およびポリネシア系女性を積極的に受け入れようとする内包的姿勢に注目し、ハワイでの白人、先住民、アジア系女性の関係およびハワイとアメリカ本土・アジア諸国との関係を明らかにしながら、アメリカのグローバル化をジェンダーの視点から考察しようとする。 平成25年度は、20世紀はじめ、アメリカのプロテスタントキリスト教宣教活動の根拠地となったニューイングランド地域の出身者であることを共通点とする、ハワイの白人エリート女性、アメリカ本土の革新主義者、アジア地域で伝道活動に従事した宣教師たちの母性主義的女性活動が、彼女らと緊密に接触して西洋的・アメリカ的価値観や行動様式を身につけたアジア人(特に日本人および日系二世の)女性たちとどのように協力関係を築いていったか、また彼女らのトランスナショナルな女性運動が、ハワイで急増する日本人移民一世またアメリカ市民権を持つハワイ生まれの二世たちにどのように作用したのかを明らかにするための資料の収集と解読を行うことができ、その成果の執筆もかなり進行させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハワイでの白人、先住民、アジア系女性の関係およびハワイとアメリカ本土・アジア諸国との関係を明らかにしながら、アメリカのグローバル化をジェンダーの視点から考察することを目的としていたが、「アジア人女性」の範囲は、主に日本人および日系人と狭まりつつある。しかし、20世紀はじめのハワイにおいて最大のエスニックグループである日系人に注目することは、既におそらくは広範すぎる地域および事象を扱う本研究を少し扱いやすいものにしてくれるという利点もあり、大きな問題ではないと考える。平成26年度は汎太平洋婦人協会の開催した国際会議そのものが研究の中心となるので、可能な限り、日本人・日系人以外のアジア人女性にも言及したいと考える。 また、本年度は、あまり成果の発表や出版にはつながらなかったが、資料の収集、解読、執筆活動を地道に進めることにより、1930年にホノルルで発足する汎太平洋婦人協会の設立へとつながる19世紀末から1920年代初めあたりまでのハワイ・日本・アメリカ本土の歴史的背景と人脈形成の経過を把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度の研究成果の一部を、7月7日から11日まで米国のオハイオ州立大学で開催されるTransnational Feminisms Summer Institute で発表し、参加者のコメントをもらうとともに、参加者との交流を図る予定である。 また、汎太平洋婦人会議の発足に直接関わる1920年代の日本・ハワイ・アメリカ本土の歴史的背景を明らかにするとともに、相互理解を目的とした汎太平洋婦人会議での女性たちの交流の実態およびその意義を把握できるように、資料の収集、解読、執筆を進めていきたい。 また、これまでの成果を研究会や学会で発表できるように努めるとともに、出版契約先を探すなど成果の出版を目指してより具体的な行動をとりたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
書き溜めている英文原稿のチェックの依頼をまだ始めていないので、その分10万円が未使用となった。 また、国家および国際レベルで女性運動を推進した女性組織の資料収集に関して、当初、アメリカ西海岸または東海岸での調査活動を予定していたが、ネット上で閲覧・購入できる関連資料を収集することによりにある程度の研究成果があげることができた。そこで、現地に赴かなくては閲覧することのできない資料収集のために、再度ハワイで調査活動を行うよう予定を変更した。このハワイでの調査活動は、公文書館や図書館が閑散期となるクリスマス休暇中(12月25日と1月1日以外は平常どおり開館)に行った。航空運賃は高額となったが、繁忙期には予約の困難な大学施設に宿泊することができた上、大変効率的に閲覧・調査を行うことができたため、トータルでの研究調査費用を若干節約することができた。 平成25年度の未使用額は、執筆の終わった章にもう少し推敲を重ねて精度を上げた上で依頼を開始する予定の英文原稿チェックの費用に、また今春発売となったYWCA関連資料の一部の購入費用に充てたいと考えている。
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