2013 Fiscal Year Research-status Report
生殖とセクシュアリティの近代-東アジアにおける「近代家族」とジェンダー
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24510390
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
宮坂 靖子 奈良大学, 社会学部, 教授 (30252828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光石 亜由美 奈良大学, 文学部, 准教授 (90387887)
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Keywords | 近代家族 / ジェンダー / セクシュアリティ / 東アジア / 日本統治期 / 比較研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、明治・大正・昭和前期を中心として、日本近代における家族とセクシュアリティの形成と変容を明らかにすることでである。その際、第一に、「家族」内部と「家族」外部の拮抗する言説構造とそのポリティクスを明らかにすること、および、第二に、日本のみならず、日本が植民地化した台湾・韓国・中国を比較対象として設定し、両者を比較することを通して、日本近代の家族とセクシュアリティの特質を把握することである。 日本、台湾、韓国、中国において実施した研究の進捗状況は以下の通りである。 1)日本:日本近代における家族とセクシュアリティについて、以下の3つの成果があがった。①大正期~昭和初期の女性雑誌を資料として夫婦和合論と性的和合論の言説分析を行った。②明治中期~後期の「厭妻」をテーマにした小説を題材として、近代家族規範から逸脱する男性像を考察した。③明治期の女性雑誌を資料として、「内地」(日本)における台湾植民地言説を分析し、日本特有の近代的女性像と家族について見解をまとめた。 2)植民地(台湾・韓国)、および中国(1920年代): 日本統治下の韓国・台湾、および、1920年代中国についての研究の進捗状況は以下の通りである。①植民地朝鮮-日本からの公娼制移入に関する韓国語文献の収集、翻訳を行った。また、キョンヒ大学孫知延氏を招聘し、日本近代文学会例会にて国際パネルを企画し研究発表を行った。②植民地台湾-平成24年度に実施、収集した台湾雑誌資料の分析を実施した。③中国-中国発行の女性雑誌『新女性』に掲載された産児調節記事の収集と翻訳を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本近代における近代家族とジェンダーの研究はおおむね順調に進んでいるが、日本統治期の植民地韓国、台湾、および中国(1920年代上海)についての研究は資料収集、翻訳の段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度においては、日本近代研究、および、東アジア比較研究について以下のように推進していく予定である。 第一に、日本近代については、着々と積み上げてきた研究の公表が主になる。 第二に「日本(内地)と植民地(外地)」についての東アジア比較については、①韓国においては、公娼制(娼妓・芸妓)や妾など「反家族」のセクシュアリティの分析・考察結果を進める、②台湾においては、台湾と日本で同時期に刊行された女性雑誌を資料として、近代家族とジェンダーに関する言説の比較分析を進める、③中国においては、1920年代の産児調節運動の受容に関する言説の日中比較分析を進める。さらに可能な限り、日本統治期の満州での現地調査を実施する。 そして、第三に、これらを総合的に検討することで、韓国、台湾の植民地化における家族とジェンダーに関する言説の移入の差異を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度実施した韓国調査の経費が予定よりも少額で済んだため、また、購入を予定していた雑誌資料がWebサイトにて無料閲覧ができたため、次年度への繰越金が生じた。 中国に関しては、1920年代を中心とした時代の女性雑誌を資料とした言説分析を行うにとどめる予定であったが、日本と植民地台湾、植民地韓国の研究を進めるなかで、日本統治期の中国・満州についても参照する必要が生じたため、中国・満州の現地調査を可能な限り実施する方向で進めることとなった。
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Research Products
(5 results)