2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本映画にみる銃後の女性像:メディアによる戦争責任過程1950年-2010年
Project/Area Number |
24510391
|
Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
吉田 香織 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (00550386)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長池 一美 大分大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90364992)
|
Keywords | 戦争の記憶 / メディアと戦争 / 戦争記憶とジェンダー / 戦争の物語 / 戦争映画と記憶 / マンガと戦争の記憶 |
Research Abstract |
本年度は、前年度中に先行研究批評・理論研究を完了させ研究発表した(英語)論文を再考・校正し、学術誌・図書に投稿することと、本研究のもう一つの柱である、博物館をとおした戦争記憶と女性の戦争責任についての研究のための現地調査・見学を行うことに特に焦点を当てた。 論文投稿を2本完了(1本は12月にRoutledgeから図書出版予定。もう1本は、『Positions』に投稿中)しており、現在は、さらに2本の論文の執筆が最終段階にある。そして、本研究のもう一つの柱-戦争関連博物館に関する分析-のため、まず日本の戦争関連博物館(「女性の戦争博物館」、「昭和館」、「那須戦争博物館」、「遊就館」)にて調査見学、資料収集、討論会参加、関係者インタビュー等を行った。また韓国の戦争関連博物館(「戦争と女性の人権博物館」と「韓国戦争記念館」)では調査見学、資料収集を行うことができた。さらに、日本の戦争映画・マンガと比較するため、韓国での漫画・映画作品収集と、韓国マンガ家にインタビューを行い、戦争マンガについて情報収集ができた。分析対象とする日本の戦争映画の受容について映画雑誌などにおけるレビュー収集についても継続して行っている。 研究発表については、オーストラリアで行われたPopular Cultureの国際学会にて論文成果の一部で2つの論文(主に戦争映画・戦争少女マンガのテクスト分析)を発表、Hong Kongでの女性とマンガをテーマとした研究会での発表や招待講演などを行い、それぞれ有意義なフィードバックを得ることができた。さらに、国内でも数回、学会・研究会(「日本マンガ学会」・「日本マンガ学会九州部会」)にて研究成果の発表を行い、ワークショップでの討論会にも参加した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は、以下の成果を出すことができたため、順調な進展と判断した。 [吉田] (1)英語論文がRoutledgeからの著書の1章として掲載 (12月出版 “(In)visible Women: Gendering of Popular War Memories through the Narrative of the Battleship Yamato for Six Decades in Postwar Japan”)(2)オーストラリア国際学会(Popular Culture Association of Australia & New Zealand)で研究発表 (3)日本戦争博物館(東京・女性の戦争博物館、昭和館)の調査見学、女性の戦争博物館にて討論会出席(4)「日本マンガ学会九州部会」ワークショップを開催、「歴史マンガの研究」についてコメンテーター担当(5)日本の戦争映画の受容について映画雑誌におけるレビュー収集 (6)「日本マンガ学会」(戦争漫画テーマ)参加 (漫画家・安彦良和や批評家・呉智英など講演)(7) 韓国「戦争と女性の人権博物館」「韓国戦争記念館」の調査見学 (8)那須戦争博物館に調査見学、館長インタビュー (9) 韓国の戦争博物館との比較分析のため遊就館再度見学 (10)日本マンガ学会九州部会にて「戦争マンガとグロテスク」について研究発表 [長池] (1)少女マンガにおける戦争の論文 “The Discourse of War in Japanese Girls’ Manga”を学術誌『Positions』に投稿 (2)オーストラリア国際学会「Popular Culture Association of Australia & New Zealand」、日本マンガ学会2013年度全国大会シンポジウム「アジアとマンガ」で研究成果発表 (3)日本戦争博物館(東京・女性の戦争博物館、昭和館)に調査見学、女性の戦争博物館にて討論会出席 (4)博物館学、ジェンダー研究の理論的な視点から国内の戦争関連博物館・資料館で収集した資料やデータ分析 (5)韓国「戦争と女性の人権博物館」「韓国戦争記念館」で資料収集 (6)那須戦争博物館に調査見学、館長インタビュー (7) 韓国戦争博物館との比較分析のため遊就館再度見学
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度に行った博物館調査見学についてまとめ、博物館学のフィールドについての理論や先行研究をもとに分析し、(英語)論文執筆を完了させる。幾つかの日本・韓国の博物館を調査見学・インタビューした結果、再度調査が必要と考えた博物館(戦争と女性の人権博物館、戦争記念館)を再度訪問し、展示の仕方などを細かく調査し関係者インタビューを行う予定である。また、前年度までテクスト分析し論文執筆を行っている作品の受容についての映画レビュー雑誌の関連資料収集を続行し、その結果を含めてあらたな論文を執筆・発表する計画をしている。その中でも、戦争映画のテクスト分析を行い研究発表した際(前年度)に、コンテクストや現時点での沖縄戦についての解釈を見る必要を指摘されたため、ひめゆりの塔平和祈念館に調査見学・資料収集を行う予定である。具体的には、以下を今後の研究項目として行う方針である。 (1) 日本の戦争映画の受容についての映画レビュー雑誌の関連資料 (『キネマ旬報』『キネマ倶楽部』)収集の続行、博物館学の理論や先行研究をもとに分析し、(英語)論文執筆を完了 (2) 韓国の「戦争と女性の人権博物館」と「韓国戦争記念館」を再度訪問し、関係者インタビュー (3) 国際学会にて戦争博物館に関する分析結果と、戦争マンガ・アニメ分析の成果発表 (4) 8月に戦争テーマのアニメ監督にインタビュー (5) 7月にひめゆりの塔の平和祈念館に調査見学 (6) 最終年度であるため、この研究結果を著書としての出版準備。これまで、学術誌に投稿した論文に加え、その他の残りの章(戦争博物館に関する(比較)分析、戦争文学、戦争マンガとアニメ(戦後マンガとグロテスク))の学術雑誌の執筆投稿完了(現在草稿作成中)
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の理由により、次年度使用額が生じた。 (1) 戦争映画の受容についてのレビュー誌など資料収集する予定であったが、完了することができなかった。(2) 韓国の博物館での関係者へのインタビューを予定していたが行うことができなかった。 以下を次年度の使用計画とする。 (1) 日本の戦争映画の受容についての映画レビュー誌、関連資料(『キネマ旬報』『キネマ倶楽部』)収集の続行を国家図書館にて行う (2) 韓国の「戦争と女性の人権博物館」への再度訪問、関係者インタビュー (3) 12月Oxfordで行われる「Body, Trauma, and Narrative」の学会にて戦争博物館(特に女性に関わる博物館)に関する分析結果、戦争マンガ(Cartooning Other) についての成果発表 (4) 8月に韓国の戦争テーマのアニメ監督にインタビュー (5) 出版予定の著書の残りの章にあたる論文(戦争博物館分析、戦争文学、戦争マンガとグロテスク)の投稿論文の校正 (6) 7月にひめゆりの塔の平和祈念館に調査見学。
|