2012 Fiscal Year Research-status Report
ブランシュヴィックのスピノザ解釈がシモーヌ・ヴェイユの思想成型に与えた影響
Project/Area Number |
24520026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
冨原 眞弓 聖心女子大学, 文学部, 教授 (70227635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 紀子 聖心女子大学, 聖心女子大学・文学部, 非常勤講師 (20453657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度は、文献収集・調査とブランシュヴィックの『スピノザと同時代人』の翻訳に集中した。 文献調査の結果、ブランシュヴィックが創刊者のひとりとして名を連ねる『形而上学・倫理学雑誌』(以下RMM)の理念や手法において、スピノザ回帰がみられることが明らかになった。RMMは社会学、心理学、政治学等、多様な学問が開花した時代に、他分野の学問領域と交流を図りつつ、哲学の刷新をめざした雑誌である。アラン、カヴァイエス、カンギレム、レイモン・アロン、ドゥルーズなど多彩な執筆者を擁し、いまなお哲学的議論の中心的役割を担う。本課題の解明のために、RMM創刊期のスピノザ回帰を探究することで、ブランシュヴィックのスピノザ解釈の糸口を得ることができた。また、RMM内で議論されるフランス国内の哲学・倫理学教育改革とスピノザ思想の関係性を明らかにすることで、ヴェイユの思想成型期におけるスピノザ研究の状況の一端を解明できた。くわえて、分担者がパリの複数の国立図書館で、RMMとブランシュヴィックに関する文献調査を網羅的におこない、上記の研究を補強した。これらの研究成果は、RMMの創刊者たちとスピノザ思想の関係性を論じた論文、「世紀転換期のフランスにおけるスピノザ思想と民主的知識人」(in “Archives Juives” : Revue d’histoire des Juifs de France, 2002, pp. 20-42)の翻訳と解題の形で平成25年度に雑誌に掲載する予定である。 また、本課題と並行して、シモーヌ・ヴェイユの中期論集をみすず書房から出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究が少ない哲学者ブランシュヴィックを扱うため、研究課題解明のための文献の収集・選定が最大の課題と考えていたが、『形而上学・倫理学雑誌』の創刊期に関する論文がフランスにおいて歴史学の分野で研究されはじめていたことと、そこから派生する文献や資料を集めることができたため、先行きのよいスタートが切れた。大量の参考文献とその難解さのために、文献の読解に時間を要したが、今後の研究の基盤づくりのためには不可欠な作業と思われる。次年度からは、学会発表等、研究成果の公表をすすめていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、ブランシュヴィックの『スピノザと同時代人』の翻訳をすすめるとともに『形而上学・倫理学雑誌』などの文献や資料を手がかりに、フランスのスピノザ受容史におけるブランシュヴィックの位置を明らかにしていく。これにより、ブランシュヴィックのスピノザ解釈を再構築するとともに、ブランシュヴィック周縁のスピノザ主義者たちを浮き彫りにし、本研究課題における思想史上の基盤とすることを目的とする。 文献調査をすすめるうちに、哲学よりも歴史学の領域において、ドレフュス事件や同化ユダヤ人の脱宗教性の問題からブランシュヴィックとスピノザの関連性を論じた論文があることがわかってきた。今後は、学問領域を超えた調査をおこなう必要があると思われる。フランス国立図書館の電子図書を利用するとともに、さらなるフランスでの資料収集をおこない、積極的に資料収集につとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、物品費、旅費を節約できたため、908,260円の残額が生じた。 次年度もひきつづき、検討を重ねたうえで経費を使用していく所存であるが、初年度の研究をとおして、本研究解明のためには、文献・資料の収集がきわめて重要であることがわかった。そのため、次年度に請求している文献・資料収集のための物品購入費、旅費にくわえ、残額分を必要に応じて、図書の購入費用、フランス国立図書館の電子資料の活用のための費用、フランス国内での文献収集のための旅費として使用したい。また、学会発表を予定しているため、その関連費用にもあてたい。
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Research Products
(4 results)