2014 Fiscal Year Research-status Report
ブランシュヴィックのスピノザ解釈がシモーヌ・ヴェイユの思想成型に与えた影響
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24520026
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
冨原 眞弓 聖心女子大学, 文学部, 教授 (70227635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 紀子 聖心女子大学, 文学部, 非常勤講師 (20453657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 思想史 / スピノザ受容史 / フランス / 文献研究 / シモーヌ・ヴェイユ / レオン・ブランシュヴィック |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度までの研究を踏まえ、レオン・ブランシュヴィックの時代におけるフランスのスピノザ受容史の解明をすすめるとともに、シモーヌ・ヴェイユのスピノザ解釈を解明するための資料収集と文献研究に力を注いだ。これにより、ヴェイユが敬愛してやまない師アランに比して、ヴェイユの独創性や先駆性に当惑する愚鈍な指導教官として伝えられてきたブランシュヴィック像からの脱却を試みた。逸話ではなく、純粋に哲学的思考にのみ依拠した結果、スピノザを絆として、ラニョー、アラン、そして『形而上学・倫理学雑誌』の創刊者であるエリ・アレヴィ、グザヴィエ・レオン、ブランシュヴィックらが互いに関連していることが確認できた。この研究の成果として、前年度翻訳を完成させていた「19世紀転換期フランスにおけるスピノザの思想と民主的知識人の誕生」を『思想』(岩波書店、2015年3月5日)に掲載することができ、研究の基盤の一つとなった論文を広く紹介することができた。くわえて、26年度の成果として、平成27年4月の米シモーヌ・ヴェイユ学会(於ボストン)において、アランやブランシュヴィックたちが、ドレフュス事件を契機に、個人の思考の自由と学問の批判力維持のためにスピノザを絆とした思想的ネットワークを構成していたこと、彼らのスピノザ受容がヴェイユの思想に見られるあらゆる党派性の拒否に類似する点を発表した。 また、当該年度は代表者による大英図書館、バーミンガム大学図書館、オクスフォード大学図書館等に蒐集されているヴェイユおよびスピノザ関連の英文資料の収集と、英国のヴェイユ研究者との意見交換のための出張、分担者による米シモーヌ・ヴェイユ学会参加のための二つの海外出張をおこなった。これらの出張により海外における知見を吸収することができ、本年度の成果につながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当時の研究計画において、本研究の核になるブランシュヴィックの『スピノザと同時代人』の翻訳完成が遅れていることから、やや遅れていると自己評価した。この遅れは、課題解明のための新たな資料や文献が見つかったために作業が増加したことと、訳注作成のための資料収集に手間取ったことの二点から生じた。課題の解明のためには不可欠な作業であるが、それでもなるべく早い段階で翻訳を終え、なんらかの形で発表し、外部の意見を仰いだ上で、完成版の発表を果たすべきだと考える。以上のことから、26年度の進捗状況はやや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、最終年度の総括を見据えて、『スピノザと同時代人』の翻訳完成に力を注ぎ、本研究の課題達成につなげることを最優先に考える。翻訳完成を阻んでいる19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランスにおけるスピノザ関連の資料収集に力を入れるとともに、学会発表等により外部の意見を取り入れながら課題解明に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
これまでの海外出張時の宿泊費を節約してきたことに加え、26年度の研究成果発表のためにボストンに出張したが、ボストンでの研究発表自体が次年度の4月であったことから書類の提出期日がずれてしまい旅費の支払いを次年度に繰り越すことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表者および分担者による米シモーヌ・ヴェイユ学会等、海外での学会参加とともに、国内における学会発表のための旅費として使用する。また、ブランシュヴィックの『スピノザと同時代人』の翻訳完成のために、フランスでの文献調査費も含めて繰り越した金額を使用したい。
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Research Products
(2 results)