2012 Fiscal Year Research-status Report
漢字文化圏におけるカント哲学の翻訳・受容の影響作用史の研究
Project/Area Number |
24520029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
牧野 英二 法政大学, 文学部, 教授 (70165679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カント哲学 / 東アジア / 翻訳史 / 受容史 / 影響作用史 |
Research Abstract |
初年度は、第一に中国での研究目的としては、中国語版カント著作全集の編集者・訳者である李秋零・中国人民大学教授への聞き取り調査を実施した。 第二に、李秋零・中国人民大学教授と中国語のカント主要文献及び主要関連文献について、カント哲学の文献の翻訳・受容の影響作用史の共同研究を実施した。 第三に、韓国においては、韓国カント学会会長の金珍・蔚山大学教授、柳志漢・東義大学教授への聞き取り調査を実施し、韓国語版のカント哲学の主要著作及び主要関連文献について討論の場を設定して、翻訳・受容の影響作用史の共同研究を実施した。 それによって、初年度の主要な研究課題であるカント批判期哲学における三批判書を中心にしたカント哲学の重要概念の訳語対照表の作成が開始可能になった。 さらに台湾における研究としては、当地での第一級のカント研究者である彭文本・台湾大学教授、李明輝・中央研究院中国文哲研究所教授への聞き取り調査を実施した。その結果、台湾での最新の研究状況や重要な研究資料も入手することができた。これは、今後の研究の進展にとって重要な成果である。さらにこれらの調査及び研究によって入手した中国語及び韓国語の文献の日本語訳にも着手しており、近くそれに基づく研究の成果の公表も可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本研究課題の主要目的である中国、韓国におけるカント哲学の翻訳及び受容の歴史について、カント哲学関係の基礎文献の収集に努め、同時に当該諸国のカント研究者の聞き取り調査及び共同研究を開始することであった。 幸いにも、本研究目的は、カント哲学関連の基礎文献や関連文献の収集についても、当該諸国のカント研究者の聞き取り調査や共同研究についても、予想以上の研究成果を挙げることができた。中国語版カント著作全集の編者・訳者の李秋零・中国人民大学教授や韓国では、韓国カント学会会長の金珍・蔚山大学教授、柳志漢・東義大学教授等による調査協力や共同研究が予想以上に有効に機能した。その結果、まだ公刊されていない新たな資料や従来知られていなかった事実関係の発見もあり、今後のカント哲学研究の課題がいっそう明確になった。 さらに当初の計画では予定していなかった台湾では、当地のカント研究者二名の聞き取り調査及び共同研究を開始することができた。その結果、台湾での最新のカント哲学研究の成果も入手することができただけでなく、それらの資料の翻訳作業や解読作業に着手することによって、中国語のカント文献の分析や理解が予想以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、第一に、本年度の主要な研究目的であるカント理論哲学、特に『純粋理性批判』を中心に受容史的観点から研究する。それによって、漢字文化圏における人間の知的営みの根本特徴を把握する手掛かりが得られるよう努める。 第二に、当初の研究目的を拡大して中国・台湾、韓国におけるカント哲学全体の翻訳及び受容の歴史を研究する。それによって、漢字文化圏におけるカント哲学の全体像の比較考察が可能にできるであろう。 第三に、日本におけるカント哲学の翻訳及び受容の歴史について、中国・台湾、韓国の各地において本研究代表者が研究成果を公表して、研究課題の共同研究を行う。それによって、漢字文化圏におけるカント哲学の翻訳史及び受容史の総体的な把握の視点が獲得できるであろう。 第四に、上記の研究・調査した成果を日本語に翻訳・紹介して、資料としてまとめる。それによって、漢字文化圏におけるカント哲学の翻訳・受容の影響作用史を明らにする文献学的資料が獲得されるであろう。 最終年度には、日本で、中国・台湾、韓国のカント研究者とともに本研究課題の研究成果を報告・検討する場を設定する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究課題の円滑な遂行のために、第一に、前年度以上に、当該研究領域のカント哲学に関する基礎文献及び研究文献の収集に努める。そのためには、資料収集のために必要な情報網や人脈の確保にも努める対応が必要になる。 第二に、本研究代表者の当該領域での研究交流と調査による成果を公表するために、中国・台湾、韓国に出張して当地におけるカント研究者の間での研究課題と研究成果を共有するよう努める。そのためには、さらに緻密な聞き取り調査や共同研究の場を設定することが求められる。 第三に、特にカントの理論哲学の中心概念である「統覚」「自我」「知覚」等の翻訳・受容の変遷と相互影響の歴史について、主としてそれらの概念の差異と共通点に着目して考察する。そのためには、これまで以上に正確な事前の聞き取り調査の準備や資料の確保が求められる。 第四に、それらの研究を通じて得られた成果を可能な範囲で日本語に翻訳・紹介し、それらを日本のカント研究者にも提供できるよう努める。 以上のような研究目的と研究計画に基づいて、次年度に必要な研究費を適切に配分して、最大限効率的に活用する。
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Research Products
(7 results)