2013 Fiscal Year Research-status Report
漢字文化圏におけるカント哲学の翻訳・受容の影響作用史の研究
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24520029
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
牧野 英二 法政大学, 文学部, 教授 (70165679)
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Keywords | 東アジア / カント研究 / 翻訳史 / 受容史 / 影響作用史 |
Research Abstract |
研究2年目は、第一に中国における代表的なカント研究者・北京大学哲学系の韓水法教授との聞き取り調査を実施した。第二に、韓教授との共同討議を実施して、中国版のカント主要著作及び主要文献の現状と課題について、翻訳・受容の影響作用史の共同研究を実施した。第三に、韓国では韓国カント学会元会長の朴遠澤・東義大学教授との聞き取り調査を行い、韓国版のカントの主要著作及び主要文献の現状と課題について、翻訳・受容の影響作用史の共同研究が実現した。 それによって、研究課題実施2年目の主要研究課題であるカント批判期哲学における三批判書を中心にしたカント哲学の重要概念の解釈上の論争点の所在が確認できるようになった。第四に、台湾では、当地の第一級のカント研究者である李明輝・台湾中央研究院中国文哲研究所教授との共同研究が実現した。 その結果、中国・台湾、韓国、そして日本におけるカント研究者の最新の研究状況や重要な研究資料及び情報を入手することができた。特筆すべきことは、台湾中央研究院における昨年4月から5月における研究代表者の二つの講演及び本年3月における講演による共同研究の成果にある。これらの三つの研究代表者の講演は、参加した台湾大学のカント研究者を含めて大きな刺激を与えた。 そこで、目下、その共同研究の成果を論文集として刊行する計画が進んでいる。本年度は、そのための準備として優れた研究文献の翻訳も一定程度進めることができた。この点のさらなる具体化は、次年度の研究課題に属することになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、研究課題の主要目的である中国・台湾、韓国におけるカント哲学の翻訳及び受容の歴史について、基礎文献の収集と聞き取り調査の継続及び共同研究を開始することであった。 今年度、幸いにも、本研究目的は、基礎文献の収集や当該諸国のカント研究者の聞き取り調査の対象も拡大することができたので、当初の予想以上の多くの優れた研究者から有益な資料の提供や最新情報を入手できた。さらに共同研究や講演の機会も予想外に多く得ることができた。中国では、ドイツとの積極的な研究交流を行っている北京大学哲学系の教授との情報交換や共同研究の機会を得たことは大きな収穫であった。また、台湾中央研究院では、本年度、研究代表者はカント哲学にかんする三回の講演を実施することができた。さらに韓国でも、最新の研究資料や重要な情報を入手することができた。 加えて、優れた研究文献の翻訳・紹介も予想以上に進んだ。これらは、いずれも、当初計画以上の研究の進展であり、予想外の成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究の推進方策は、来年度が本研究計画の最終年度なので、以下の諸点にまとめるよう考慮した。 第一に、本研究課題の主要課題に属するカントの主著『実践理性批判』や『判断力批判』を中心にして、カントの批判期の実践哲学・美学・目的論・歴史哲学等の思想を受容史及び翻訳史的観点から研究する。 第二に、これまでの研究活動によって収集した重要な文献や有益な資料の分析・考察を、主として重要な概念・術語に即して進めることで、研究課題の集約に着手する。 第三に、中国・台湾、韓国におけるカント哲学の翻訳・受容史と影響作用史について、日本におけるカント研究の翻訳・受容史を中心に据え比較考量しながら、漢字文化圏における日本、中国・台湾、韓国すべての国家・地域の研究状況の進捗状況をまとめる。 第四に、上記諸国・地域の重要研究文献を継続して翻訳・紹介するだけでなく、本研究課題の達成成果として刊行する方針で、本研究課題の目的の達成に向けて推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、年度末の3月中旬まで海外出張があり、そこでの通訳料の清算に時間がかかり、残金の正確な金額の把握とその使途が本年度内に処理できず、会計上、次年度に繰り越す結果となった。 ただし、次年度使用額は589円という小額であり、基金という性格上、今後の研究計画の遂行に支障は生じないと判断した。 平成26年度は、本研究課題の終了年度であるので、589円という小額であるとはいえ、次年度の消耗品費に算入して、早期に適切に使用する計画である。
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[Book] Kant und die Philosophie in Weltbuergerlicher Absicht.Bd.12013
Author(s)
Eiji Makino,Thomas Pogge, John R. Searle,Wolfgang Carl, Jean Ferrari, Ricardo Terra,Norbert Hinske, Onora O'Neill,Henry E. Allison, Karl Ameriks, Manfred Baum, Robert Brandom, Reinhard Brandt, Massimo Barale,Bernd Doerflinger,Claudio La Rocca,Klaus Duesing, Mario Caimi, Heiner F. Klemme, Jens Timmermann
Total Pages
817(321-338)
Publisher
DE GRUYTER