2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24520032
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
吉永 和加 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (20293996)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 他者 / 責任 / 否定神学 / デリダ / レヴィナス |
Outline of Annual Research Achievements |
三カ年計画の課題研究「責任論の起源と展開 ―他者論の宗教的基盤の探究―」について、まず2012年度に「他性と否定神学的叙述」として、他者の他者性を語るためにいかなる言述が正当なものとされうるのかを、レヴィナスとデリダの言語論を架橋しつつ、両者における否定神学的叙述の可能性を探った。2013年度は、研究を少し前倒しして、「『悲劇的世界観』と責任論」を先に取り上げて、レヴィナスやデリダの他者論が帰着する責任論が宗教的色彩を帯びることについて、彼らの議論をゴルドマンの言う「悲劇的世界観」という概念を用いてパスカルに結び付け、責任論の宗教的基盤を検討する素地を作った。 最終年度である2014年度には、研究の締めくくりとして「責任と原罪意識」というテーマについて、レヴィナスやデリダの、「歓待」を伴う法外な「責任」概念が、いかなる宗教的な地歩から導出されうるのかを考究した。まず、レヴィナスやデリダが、ゴルドマンが言う、逆説的な<comme si>の哲学という枠組みに適合することを示し、その概念を通して、彼らの哲学を、一見、無関係に見えるパスカル、カントと結びつけた。その上で、レヴィナスとデリダの法外な「責任」の裏面を支えるのが「罪悪感」であることから、パスカル、カントにおいて「原罪」の教義の解釈と、悪の問題と罪悪感とがどのように論じられているのかを検討した。そして、それぞれの哲学者の宗教的地歩の差異を吟味しつつ、「隠れたる神」と表わされる始原の欠如において、いかなる点で、人間が「自由であるかのように」振る舞う仮構が作られ、道徳的な「責任」を負う主体が可能になるのかを明らかにした。 以上のように、研究は概ね計画通り遂行され、所期の目標に照らして一定の成果を上げることができた。またその間、適宜、内外の研究者との意見交換を行うこともでき、有意義な三年間であった。
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Research Products
(1 results)